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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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富士山とマッターホルン












   富士山とマッターホルン

   2022.08.06











   

何度も書いておりますが、今ちょっと転職しようと色々している関係で、仕事が無茶苦茶なことになってます。イメージで言うと、富士山の上にマッターホルンを斜めに突き刺して、空から雪をトッピングしたような感じでしょうか?


全く意味がわからず、しかも全く面白くないな!ハハハハハハ!


引き継ぎどーすんだろー(他人事のように思ってる)


あのね、私がやめて新しい人が入るってのだけで、どーすんだろ(他人事のように思ってる、ほんというと、他人事のように思いたいが正しい)って思うんですけど、


それだけじゃないんですよ。私と一緒にやってた日本人の部下の子が辞めるんです。

それは決定で、9月上旬でいなくなります。

まだ新しい人が決まってないのよ。


その状態で実は私もやめようとしているわけで、だから冒頭に戻る。


引き継ぎどーすんだろー(他人事……以下割愛)


これはですね、富士山の上にマッターホルンを斜めに突き刺すでは足りないのよ。空から降る雪をトッピングして、更にここんとこ噴火したことのない富士山を噴火さす?


いや、全然、美しくないな!葛飾北斎に殴られるわ。


やれやれとそんなこんな思ってたら昨日。

部下の中国人の課長さんがヒソヒソと私を呼ぶ。


「○○さん、Lさんの給料が……」

「ん?」


7月は査定の時期。仕事の評価を上司と更に上職の人たちでして、昇給額が決まる時期です。

私も評価をしました。でも、私だけでは決まりませんね。最終は上が決めます。


その結果は人事からそのうち給与明細の形で渡されるはずでした。

だからまだみんな知らない。

でも、我々財務。給与振り込みのために一部の人間は給与表を見ます。

課長さんもその一人、それで、自分達の給与を前月と今月で確認してた。


こらこら、職権濫用だぞ。と思いつつ、話を聞く。


「Lさんの給料が上がってません」


自分のことではなくて、自分の下の課員の心配をしてました。


「あら」

「他の人は上がってるのに、Lさんだけ」


オロオロしております。Lさんが辞めることを心配してるんですね。

私もそう。この子が辞めると財務課が回りません。

私がつけた評価より更に下げられたな、これは。


それからの小一時間……。まずい、まずいぞ。


さっきまでうららかな夏の午後を散歩していた(脳内の景色です)私。

決算書終わったぞ、なにぬねの、みたいなさ(後ろのなにぬねのは意味はない)。


一気に阿鼻叫喚の地獄に落ちた。赤黒い岩肌の間で、腹ばかりでかくてガリガリに痩せた餓鬼がぎろりと私を睨む。


まずいまずいぞ。これはまずいぞ。

二人連続で辞める(日本人二人)だけならまだ、富士山にマッターホルンだが、

これに更にローカル一人はまずい。


これだと、ええっと、更に山が追加では足りない。

地面が割れる………


のぉおおお


しばらくして、人事から給与明細が3人分。それから部門長用の評価の査定がピラりと渡される。


ハシっと見た!


ん?


給与は上がってた。3人とも。

それも例年より昇給額が大きかった。

ぶっちゃけ私より??


定着率が上がらず経営が安定しないのを懸念した会社が、全員に対して一定額の昇給をしたんですね。

これは能力査定ではなく全員に公平に与えられる額。

だから、能力の部分が抑えられてたんです。


あ、なんだ……


もう一度、麗かな夏の午後に麦わら帽子をかぶって木陰でアイスクリーム食べる脳内少女が戻ってくる。

よーれよーれよれひやよれひやよれほー

(多分病気だと思うんですが、機嫌がいいとこういう妄想が横でひた走るんです。厄介な体質です)


からの、課員一人一人への給与明細てわたし。即実行。


一人目、1番下の子


「どうぞ」

「ほー」


意外と上がったらしい。

もともと3人全員に、自分がどういう理由でどういう評価をしたか。

だけどその後上が更に評価するから最終は違うと説明をしてあった。

からの会社の最終決定とその理由を状況から説明。


ほくほくと帰っていった。


二人目、課長さん。最も大事な人です。


その場でサクサク計算。A査定の場合の昇級額を出す。


「その額は職位によって違います」

「なるほど」


この子も新人なので、うちの会社の人事査定システムや色々知りません。

実を言うと、人事がちゃんと説明しないので私も詳しくありませんが、

知ってる限りで説明する。


「低いですね」

「すみません」

「あ、いえいえ、大丈夫です」


もともとうちよりおっきな会社で働いていた人なんです。

丁寧に謝りました。うちの会社、みんなに平等にばら撒いてしまうので、一部の能力の高い方は損してしまうんですよ。そこは(私の)スマイル0円で補填するしかないという……。


そしてラスト


「やめないでっ」


ガシッと手を掴む。女同士だからセクハラではありません。


「だから言ったじゃないですか」

「ごめんごめん」


この子は今期は頑張った。でも、体調を崩したせいでたっくさん休んだんです。

仕事は頑張ったけど、休みが多かったので、Aをつけられなかった。

すると、上が更にBからCに下げてきた。

私がBにしたと言ったら、その時に彼女に言われてた。あなたがBつけたら上はCにすると。


「ね、でも、ほら、金額は上がってるよ。私より多い」

「でも、これは、みんなが貰えるやつです。○○さんがくれたのは、ほら、この60だけ」

「いやっ、ごめん。やめないで。いなくなられたら困る」


部下は来年はSにしろ、そして、飯を奢れと言って部屋を出てった。


やれやれ。


よーれよーれよれひほよれほー


夏だから入道雲か?麦わら帽子をかぶった脳内少女が、虫取りのあみ片手にそんなものを見ているぞ。

そして、その彼方には富士山にマッターホルンが斜めに突き刺さって空から雪が降ってるわけだ。

葛飾北斎も真っ青だ。

とりあえず危機は脱した。

まだ向こうに未曾有の危機が待ってるが、それはその時考えよう。


……


飯は食わんといかんな。最高のおもてなしをしておかないと。

やめられたら、地面が割れる。


おもてなしの段取りを頭でしながらふと思う。

彼女が私より職位下で、評価Cでもらった額と私、本気で変わらんのですよ。

でも、会社の昇級額というのは職位が上に行けば行くほど上がり幅が大きいんです。

つまり私の職位で評価Cなら、彼女より多くないとおかしいでしょ?

C以下かよ……。


去年ね、部下が二人辞めました。二人とも10年以上のベテラン。

一人は税務の要の課長。

採用の際の面接と誰にするかの判断、全部私がやりました。

本社が二次面接しないかと言っても断られたので。

その後、新人になったばかりの状態で、二人目の補充を人事がさっさとしないので、

課員が一時的に4人の状態に。

その状態で、総務対財務みたいな形で喧嘩をふっかけられ、大揉めに揉め、Cを受けた部下が会社側には言っていませんが、うつ病になりました。辞めたくないって意思があったから、私ともう一人の日本人で支えたんです。なんとか普通に働けるようになった。


それでも、どうにかした人間に対してC以下かよ。

終わってるなー。


楽な年もある。でも大変な年もある。

楽した人もいる。大変な思いをした人もいる。


そういうのをきちんと見ずに、いつもせっせと同じように金額を上げる。


それでは人材は残せませんよ。

特にずば抜けてできる人材はね。


毎年同じようにあげてくれと言ってるわけじゃない。

楽な思いしてた時は少なめでもよかった。ちゃんと理由を言ってくれればね。

だけど、今年はないなぁ。


ま、だから辞めるわけです。


そして、帰り道、車の中で同僚の子と話す。


「○○さんさ、評価の結果、人事からもらった?」

「ん?もらったよ。今年はちゃんとしてたよ。個人用と部門長用とちゃんときたよ」

「僕、もらってないんだけどっ」

「え?」


どうやら人事の人が、彼に渡すべき評価をその下のローカル課長に渡してしまったらしい。


「みんな怒ってて、もう知らないわ」

「……」


陰謀の気配を感じてしまいました。困ったことが起きているのは、財務だけではない。会社全体です。

自分のことに精一杯で、彼の課のことにまで気が回っていませんでした。


彼は結構厳しい人なんですね。

部下の指導はアメかムチ

私は部門長はアメタイプかムチタイプかに分かれると思うんです。


私はアメに無茶苦茶特化した人間です。

もちろん、指導はアメだけで完結はできないので、副作用のような不具合は起きます。

その副作用をどう減らすかを個人の課題としている。


彼は真逆の人間でムチに特化した人間で、もちろんムチの効果が現れていて、部下は伸びてきていると思う。

ただ、副作用が出たなと。


厳しすぎたんですね。

ついてこられない部下がストライキになる直前だなと。

だから今回人事が内側に入って彼の厳しすぎる評価を上方修正しようとした。

それをつっぱねたんです。

結果、人事から報復を受けた……。


帰りの車の中で、私は甘い評価をつけたから楽なんだ。僕はそんなことしてないからと言われました。

確かに私は甘めの評価をしている。

だけど、全員機械的にAなんてつけてません。

上が下げることを前提に、誰をどうするかはよく考えているし、そうした理由については上に書類として渡しています。


どうして私が上より甘めにつけるか。

直属の上司が厳し目につけると、部下のコントロールが難しくなるからです。

上に悪者になってもらった方が楽だからです。


上がそれを拒絶すれば別の方法を考えますが、会社としてはですね、最終結果を覆さなければ結果は同じ。

最終的な厳し目な結果を持って、私は頑張ったんだけどさ、ごめんと言いながら、それでも、辞めてはいけない人が辞めずに、文句を言って仕事を投げ出す人を出さずに課を運営できたら、会社はそれでOKでしょ?


人事が介入するくらい、おそらく彼の評価は別の課との相対で見て厳しかった。


アメに副作用があると同じで、ムチにも副作用がある。

私と彼の違いは私は自分の方法に副作用があると自覚している。

彼が自覚していないことです。


でも、そこで人事が、問題が起こるような形で彼を追い込んではならないですね。

パーフェクトな人ではないですが、優秀な人です。

時間をかけて話し合うべきだった。


なぜそんなことをしたか?

人事の子がまた、キレやすい子だからな……。


自分がこれから人事をやっていきたいと思ってるからこんなことを言うんですが、


日本人の部門長や、中国人の部門長さんと下の子たちとの間に入って

最高の仲介役になりたいんです。


私の能力というか、才能というか、

自分はどんな人と対していても、冷静にその人を分析する人なので、

かなり公平な方だと思うんですね。

簡単に言えば、人の好き嫌いがかなり少ない。


なにせ、自分を罵った人に対しても、この人にもいいところはあるんじゃないかとか、

どうして人を罵るのか、対し方を変えればこの人も変わるのではないかと考える人間ですから。


ま、変態です。


彼のムチの方法から自分のアメの副作用についての対抗策みたいなのを最近もらってました。

反対にアメの覇者として、彼に何かしてあげられたらいいのですが。


今後、試練を受けると思います。

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