老油条(ラオヨウティヤオ)
老油条
2022.06.10
保税貿易による税務処理というのは結構複雑で、輸出入の通関の記録と財務帳簿上の数字を厳しく調べられるんです。
なぜならそれは保税貿易という、輸入時に税金を払わず物を入れて、加工を行い、作った製品は輸出して販売するという貿易方式をとって、増値税という税金を納めていないからですね。
保税で税金を払わず輸入したものを国内で販売したら儲けられます。但し、これは密輸になります。
そんなこんなで、財務処理は気を使う。ところが、この輸出入の関係で財務課によく相談せずにいわば勝手に退港という形式で一旦輸入した材料を返品する形の輸出をしていたことがわかった。
「退港したものは支払いはできません」
「なんで今までできたのに」
きちんと財務に報告連絡相談せずに勝手にやってたんだろと。そのことがわかって今、後処理しているんだいっ。
「これからはできません」
「めんどくさい」
ブーブーブーブー、文句をいう。
めんどくさいが最近の口癖のとある部門長を眺めながら思う。
あなたもう、ベテランだろと。私と同年代です。中国人スタッフですね。
ベテランの人は、自分の課のことだけ考えるのではなくもう少し広範囲に物を考えていただきたい。
会社全体とまではいかないまでも、自分の課と関連のある課の視野にも立って考えていただきたい。
昔っからそうだったわけじゃないけど、彼は途中から新しいことを覚えるのをやめてしまったようで、
海外取引を扱う部門の部門長なのに、クレジットノートとデビットノートの違いがわからず、使い方はよくわからず、しかし、デビットを発行する担当部署なんです。後々の会計処理を全く無視して自分の楽な方法で決済を進めようとするから時々ぶつかる。
なぜ、君は、知らないことを学ぼうとしないのか。
私は、通関のことはできる範囲で理解しようとしているし、必要な場合は営業だろうが、ISOだろうが、できるだけ理解しようとしてます。自分が直接しない部下の仕事も含めて。他課の仕事を積極的に取るようなことはしないけれど、日本語の部分で補助が必要な時は間に入るようにしてます。
でもね、私がするんじゃなくてそういうことをあなたがしようと思ってどうして努力しないのか。
やる気を失ってしまう場面があったのだと思うのだけれどね。だけどなぁ。
こんな人がいっぱい会社の中にいるんです。変化を嫌う老油条
油条とは元々は中国人が朝ごはんに食べる、パンを揚げたような食べ物。細長い棒状で、カリッと上がったある意味ちょっと油揚げにも似てるのだけど。それに老がつくと時間が経ってしなしなになって油を吸った油条のことを指す。
転じて、一つの会社に長くい続けてやる気を失い、変化を嫌い、だらだらと余生を過ごそうとするぶら下がり社員のことを言うんです。
会社のお荷物。
改革や変革をしたがる人の敵となって立ち塞がる、肉の壁だ。
「今、8%の税金を納めるのと、ほっておいて最後に25%の税金納めるのとどっちが得?」
財務課が楽をするために言ってるんじゃない。会社のために合理的な方法を説いてるだけです。
本当はね、そんなにめんどくさがるならお前が払えと言いたかったんだよ。
中国は象が全速力で走っていると言われているような国で、その中でも急速に発展を続ける深圳にいます。深圳といえばIT。
ものすごい速さで、政府管轄のIT化が進んでいて、企業の管理は急速に厳しくなってきている。
その中で、なぜ君は変わろうとしない。
い、ま、ま、で、は、で、き、た、の、に だぁ?
こんだけ変化する深圳の只中で、これからはできねんだよぉおおおおおお!
お前も変化するために努力しろやぁ!
アンチエイジングというと、化粧品やエステや運動や、そんなこんなで美容的にあるいは健康的にあろうとすること。
そんなイメージが強いと思うんです。
でも、私はそれも大切だけど、思考のアンチエイジングも重要だと思うんですね。
変わることをめんどくさいと思い、
改革をしようとする人の邪魔をするのは、立派な老化です。
必要な変化を追い続ける人間こそが、歳を取らないのだ。
そして、世の中を引っ張っていくのだと思う。
世の中というのが大きすぎるのならば、会社をね。
船客として船の中でくつろぐのをやめて、船が沈まないために君も機関室に入ってくれよ。
汪海妹