社会に活用されるべき能力は 意外と眠っているものだ
社会に活用されるべき能力は
意外と眠っているものだ
2022.05.16
息子の小学校を通じて中国で生活されている駐在員の方の奥様たちとお話しする機会がたまにあります。ご主人に着いて中国に来ていて、そして、子供の世話をしなければならないから基本的に仕事されてないんですね。ビザの問題もありますし。この前そのうちの1人の方と教育について話していました。いい先生とはなんだろうと。
もともと日本語教師をしていたこともあったのと、あまり意識していなかったけど私は子供が結構好きなんですね。それに心理的な部分に敏感なこともあって、あるいは私は教師に向いていたのかなと思う時もあるんです。
お母さんというのは自分の子供を持ってますから自然、教育には関心があるもので、それで、冒頭に戻る。いい先生とはなんだろうと。
クラス平均を持ち上げることができる人と私は認識しています。
もともとできる人をできるようにするのなんて誰でもできる。できない人とか、癖のある人も合わせて全体の平均を上げることができる人。
しかし、ここまででは十分ではない。
日本は出る杭を打つ文化ですよね?
だけど、それではクラスや学年に若干名いる飛び抜けて優秀な人というのを伸ばすことができないんですよね。
だから、全体の状態をきちんと把握しつつ同時に、そういういい意味でイレギュラーな生徒たちにどうやって対していくか。
ここまでできる先生なんて、ほとんどいないだろうという話をしていた。
その後に、先生って本当に大事な職業だよねということをつくづくと話していました。
人を育てるというのはとても大切な仕事です。
まずは学校で人を育てなければならなくて、そして、その後会社の中でも人を育てるということは続く。
それが、人材資源を活用してゆくのにつながるのだなと思います。
でもね、社会には結構眠ってるヒューマンリソースがあるんですよ。
例えばそれは、専業主婦です。
子供を育てる以外にも社会に対していい影響を与えることができる能力を持っているなと感じる方が結構います。
保護者会でお母さんたちが集まった時、おしゃべりの方向を誘導しました。私は結構影の司会者というか、ディスカッションの誘導をするのが上手いんですね。ちょこちょこっと合いの手を入れながら、いつの間にか額を寄せ合って政治の話で白熱していた。
「こんな話、久しぶりにした」
夢中になって話している途中で、はたと気づいて恥ずかしそうにします。
自分は今は働いていないからと、意見を言うことを控えて脇役になろうとする方が多いんですね。
でも、主婦だって意見はちゃんと持ってます。
お金を得るということにのみ執着して、人を測ってはならないと思うんですね。
社会を成り立たせるために、金額の多い少ないに関わらず役割を持ってほとんどの人が生きている。
専業主婦もまた、子供を育てるという役割を担っている人たちだし、きちんとした意見を持ってます。
子供の手が離れたらまた是非、なんらかの形で社会に出てほしい。それが、ボランティアだっていいと思います。
社会を良くするためにできることというのはそんなに難しいことではなくてあっちにもこっちにもあると、眠らせている能力をみんなが発揮させてゆく。意味のある大切なことだなと最近強く思うようになりました。
こちらには小学校の近くに補習校というのがあるんです。
日本人と中国人のハーフに生まれて、日本語が思うように使えない子に学校が終わった放課後に勉強を教えてあげる塾のようなもので、もともと日本語教師を長くしてたのもあって、手伝ってもらえないかと声をかけられた。
仕事の合間に育児と小説書いている身としてはこれ以上の時間は捻出できません。丁重にお断りしました。
だけど、久々にいい先生とは何かという話をして、教えるというのは非常に大切な仕事だなと改めて思った。
自分がより役に立てる分野で働きたいとつくづく思いました。
(アサヒビールに酔っていたせいもあるかもしれませんが)
生活を支えるという目的のために働いているわけですが、そういった制限がないのであれば、収入よりも生きがいのために働きたいと。
こんな悩みはきっとこの世で働いているたくさんの人が抱えているでしょう。
自分が会社で働いたってたいしたことはできません。全てが正しい方向へ進んでいるわけでもない。
そこで、自分だろうが自分でなかろうができる仕事をするよりは、もっと自分の能力が人の役にたつ仕事をしたいと。
お金が少なくたって、そういう方へ行きたいと。
きっと男の人だって女の人だってそういうふうに思う人は結構いると思う。
思うのだけれど、養わなければならない家族がいるわけです。
私の場合は主人がもっと劇的に成功してくれれば、働かなくても済むでしょう。
或いは生活のランクを下げれば、もっと収入の低い仕事をしてもいいでしょう。
「支えてくれる人がいて、自分の好きな仕事を選べるというのは幸せなことだ。感謝しないとね」
「そうだね」
お互いのご主人がそばにいる状態で、相手に聞こえないようにヒソヒソと話し合いながらビールを飲む。
もう少し子供たちが大きくなって余力ができたらぜひ、また、働いてくださいね。
口に出したらなんとなくうるさいかなと心の中で呟きました。尊敬する優秀な主婦の皆様のうちのお一人に向かって。
私が収入よりも生きがいに向かう未来はもう少し先送りして
やはり今日も生活のために働いています。
汪海妹