私のコーヒー事情、そのに
私のコーヒー事情、そのに
昨年の10月には、我が社の地下1階にあるラクダコーヒーを愛人と呼び、我が社の2階にあるスタバを本妻と呼んで、愛人であるラクダに毎日のように通っては、一杯20元のコーヒーを買っていた私。
愛人とのその後はどうなったのか、続きを綴ってみよう。
これが聞くも涙。語るも涙なのである。
私の愛人であるラクダコーヒーはいまやBYDとラッキンはイケイケドンドンだよねと言われるラッキンを斜向かいに、健気に頑張っていたのである。私もせっせと応援したさ。
しかしだな。潰れちまったんですよ。ええ、ええ、世知辛い世の中です。
がびーん。
毎朝会っていたプリッとしたお姉ちゃんと会えなくなって、20元のコーヒーも飲めなくなって、ぎろり、別にラッキンのせいじゃないのだけど、斜向かいのラッキンに睨みを効かせ、お前でだけはコーヒーは飲まねえぞと誓い、また黙々とドリップコーヒーの毎日に戻りました。
誰か、愛しのラクダの仇を取ってくれと思いながらです。
ピギー
(↑最近、動物っぽく泣いてしまうことがあるんです。年齢のせいでしょうか)
どうして、こんなにラッキンが嫌いになってしまったのかわからない。多分大した理由はない。だって、以前はさ、もっと深圳の田舎にいたわけ。それで、そんな田舎にもラッキンはすごぶるな繁殖力で支店を出していて、田舎で、工場で働いている自分たちには、その工場そばのラッキンだけが、なんか今風というか、イケてるというか、ケンタもあったけど、ケンタはもう目新しさもないわけで。
「おう、お疲れ。ちゃんと頑張ったな」
部下や隣の営業課のローカルスタッフに、ちょっとラッキン奢って、ドヤ顔してた時もあったよ。みんな喜んだよ。この、深圳の、郊外の、工場勤めの土煙感、感じます?テンセントだけが深圳じゃねんだよ。
そんな、田舎で工場勤めで、ラッキン様様だった私も、都会勤になって、たまにはヒールの靴なんぞ履いて会社に行くようになると、偉くなったものだな、自分。ラッキンをいつの間にか嫌いになっててな。
ラッキンとの間にそんな複雑な関係が実はあった私。
そう、ラッキンは、元カノだ。ラッキンは元カノで、本妻はスタバで、愛人がラクダだった。今、思い出したぞ。愛人のラクダはラッキンに淘汰された。そんなことをしたって、私の愛はラッキンの元には戻らないのにね。
どうよ、この、爆走型愛憎物語。
かつては愛した元カノを、誰か屠ってくれと思うのが人生なのである。
そして、そんな、コーヒー戦国時代に名乗りをあげた奴がいる。Cotti(库迪)である。私は彼女に惚れた。相変わらず、本妻のスタバの元には顔を見せずに、この新しい愛人に参ってしまった。
ちなみに、更に血みどろな話なのであるが、実はこのCotti、私の元カノのラッキンの妹なのである。お姉さんの良いところを引き継ぎ、尚且つ、姉にはない魅力も湛えている。(ふざけてるのではなく、本当にCottiの経営者は元ラッキンの社員なのです)だから、様々な経営手法をラッキンに真似ている。
例えば、価格。愛人ラクダは、一杯20元に対し、ラッキンとCottiの主力は9.9元、約半額。本妻は忘れたぜ。
そして、店舗。ラクダとラッキンとCottiは、デリバリーとTakeoutが主力で、席数は少ない超小型。スタバは大型。
戦略、ラッキンとCottiは、お前らはコンビニか?と思われるほどの普及力と出店速度。ちなみによく閉店もしてる。落ち着きがない。
そして、広告宣伝戦略、これまたラッキンとCottiで競い合ってるが、明星(ミンシン、スターのことね)の登用とキャラクターIPの利用。これがまた半端ない。昨日は、マルちゃん、明日はテンセントのゲームキャラ、コロコロ変わる。
この姉妹げんか。もちろん、利益を上げるために的を得ている部分もあると思うが、加熱しすぎている部分も無きにしも非ずと思って見てる。利益率はいくらなんだろーなー。
EV戦争を見ても、飲食店界隈の真っ赤な海を見ていても、中国人というのは短距離走者が多いというか、ウサギとかめのウサギというか、時流に乗るのが上手いが、その次はどうなるのだろうかと思って見てしまうことが多い。短くは突っ走れるけど、長くは走れるの?
「さあね?そんなの心配してどうする?日本人、考えすぎ!」
明るく笑って、亀である私はさっさと追い抜かされる。そして、ウサギは一部を残して、潰れるんだろう。
ただね、みんな、はじめっから、淘汰されることはわかっててやってるのだよな。中国人と日本人の山を登る方法は違う。でも、山を登る全員が頂上に辿り着けるわけではないというのは中国も日本も変わらない。
金を燃やす、烧钱、シャオチエンという言葉が中国語にある。湯水のように金を使うという意味の比喩だ。我が元カノのラッキンと、今カノのCottiはまさに今日も金を燃やしているなと思う。
私がこの目が白いうちに、間違った、黒いうちに経営に携わるなんてことはないと思うが、ただ、気楽な立場で偉そうに言わせてもらうと、ウサギでありながらその思考の一部にカメの慎重さをもって、経営の10年以降をしきれる経営者は、本当に強いだろうと思う。最初はウサギのスタートダッシュで良い、でも10年以降は歳を取れよという話である。
私の本妻のスタバは、もう若いイケイケ姉ちゃんではない。
企業の質が違う。
イチ消費者として、言わせてもらうと、ラッキンが出たばかりの頃、物珍しかった。どんな企業にも、若いイケイケの頃がある。この目新しさのうちに買ってもらえるチャンスがある。しかし、飽きられる時が来る、この時の消費者が離れるときに、打つ二番目の戦略や戦術はあるのか?
それがキャラクターIPなのか、おーい!
と、関係者には誰も聞こえないところで、突っ込んでみた。
中国人はもともとはお茶の国の人であるからして、少しずつコーヒーを飲むようになってきたけれど、私のように毎日コーヒーを欠かさず飲むヘビードリンカーはまだまだ少ない。
この時、カフェチェーン店が大事にすべきなのは、
1、ヘビードリンカー
2、ヘビードリンカー予備軍
3、たまにしか飲まない人
この順だと思うんですね?
とある時期、ラッキンが、茅台コーヒーを売り出した。私が、ラッキンと完全に別れることになったきっかけのコーヒーです。茅台っていうのは、高級白酒、中国の代表的な酒で、ウオッカを更に臭く癖をつけたような味だ!(白酒愛好家の皆様、すみませんね)
別にコーヒーに酒を入れるのはあることだし、私は飲んでいないが、そこそこいけたのかもしれない。ただね、自分にとってコーヒーは西洋のものなんですよ。その西洋のものに中国をぶっ込むという概念が、創作しすぎだろということで、引いた。
この、茅台コーヒーを、新しいね!と言って喜ぶのは、むしろ、コーヒーに対して固定観念のない、たまにしか飲まない、中国茶を普段は愛している人たちにウケたんじゃないかと思う。
コーヒーを飲まずに中国茶を愛する人たちに、中国の代表的なお酒を入れて作ったコーヒーを出してさ、それでなんかいいことあるか?だって、「いいね!」をいっぱいくれたとしても、その人たちはコーヒーを毎日は飲まないんだよ。だって、中国茶の方がいいんだもん!
一体全体、ラッキンの経営者は、自分が販売しているコーヒーを本当に愛しているのだろうかと疑問だ。最近では、ジャスミンティーとコーヒー混ぜてるしな。売れればなんでもいいんだよ。
まぁ、でも、私の今カノのCottiも色々なものとコーヒーを混ぜてますので、ラッキンばかりを忌々しくいうべきではないかもしれない。ただ、私と元カノのラッキンにトドメを刺したのは茅台コーヒーであることは間違いない。中国への愛国心ほとばしったかもしれない。ちなみに、かなり話題になり、かなり売れたのは確かだ。普段はコーヒーを飲まない人も、わざわざ買ってたかと思う。
くどいようだがもう一度言うが、ウサギ的発想なら、その一時的な利益がいいだろう。しかし、そのカンフル剤のようなキャンペーンが終わった後に、コーヒーを毎日飲む人が増えたのか?と聞きたい。これをやり続けると、企業は常にカンフル剤を打ち続けなければならない。
あなたが、まだ若いイケイケ娘なら、新鮮味があるしちょっと本妻の元へ行く前に寄ってくかと思えるけどさ、人間は飽きる生き物なのだよ。10年以上続いていくときに、飽きられても残るものを君は築き上げることは果たしてできたのか?(あちこちに女を作っている中年男性のふりをして偉そうに言ってみる)ここにカメの発想が同居してなければ生き残れないぞ!元カノよ。
カンフル剤を打ち続けることはできない。それは、勢いをつけるための手法ではあるが、打ち続ければ、消費者に飽きられる。安定して求められるものを作り上げ、企業として求められる価値を創造することこそ大事だ。ウサギの多いこの国で、一部の優秀な経営者はウサギでもありカメでもあるのだろう。その違いは、中国の有名な企業がこれからどうなっていくかで証明される。
そして、優柔不断な私である。茅台コーヒーをきっかけに、元カノのラッキンとはけちょんけちょんに別れておりながら、
「先、行ってて」
「うん」
週1で息子が空手を習っている。道場の近くにラッキンがある。息子を先に道場へ行かせて、私はそそくさとラッキンへゆく。なんということはない。ひどい別れを経験して、散々懲りたはずなのに、しばらく経って再会してみると、そういえばあの頃に自分にも至らない点はあったのかなと……、なんだか思えてくるものである。それで、おおらかな本妻スタバはともかく、今カノのCottiには内緒で、週1でラッキンにも通っている。
チーン……
「ジャスミンとコーヒーだけは、混ぜちゃいけねえなぁ」
「何飲んでんの?」
ちなみに、現在、ラッキンとCottiで人気があるのは、コーヒーかけ、ココナツミルクですね。私的にはちょっと甘すぎますがたまにはいいかも。
最後に蛇足。女性の皆さん、男ってね、優柔不断で未練を残す人が多いですから、なかなかもう片方の方と別れる別れると言いながら別れない人が多いですよ。男女はね、女から別れた方がいいよ!なーんてね!
蛇足でした。失礼。
汪海妹
2025.09.11
念のため書いておきますが、私はなりすましの女性ではなく、本当に女性です.本日はちょっと男性気分で書いてみました!




