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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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悼む













悼む













先日のことである。ニュースを見ると、コロナで急変し息子さんを失ったご夫婦の姿が映されていた。朝から涙ぐんだ。


息子さんを失った直後は、周囲の人たちに自分たちの本当の気持ちを話すことはできず、そして、気持ちを隠さずに話せる人を求めていたそうだ。とある日、新聞にやはり急変により弟を失った方の記事が出ていて、新聞社経由で手紙を渡してもらったと。


我々も大事な息子を失ったのであなたの気持ちがわかる


そういうことだった。それがきっかけで文通が始まり、最近ではオンラインの形でお話をされたのだったかな。


また一方、福知山線での事故から20年経ったというニュースがあって、あの事故の直後には、事故直後の現場で、トリアージタグがつけられて、黒のタグがつけられた方は病院に運ばれずに亡くなったのだそうだ。


遺族の方が、運ばれていたら助かってたのではないかという思いが何年経っても消えないと言ってたという。


こういう緊急事故が起きた際に現場へ駆けつけて医療行為を行う医療従事者に向けて、医療行為を行いつつやはり現場へ駆けつけた家族にどう対応するかという教育が行われていた。


どういう言葉をかけてはいけないか という言葉のリストがあったのです。


非常に考えさせられた。


同じ思いをした、あるいは、している人にしか 分かち合えないものはあり、そして、同じ思いをしていない 私達 には かけられる言葉はない。


私的にはこれが正解だと思ってる。私は 言葉は 万能だとは思わないのです。あの、医療従事者に向けて示された どういう言葉をかけてはいけないか という言葉のリストは それそのまま 凶器となりうる言葉リスト だった。


じゃあ、そんなすごい 死ねとかね、そういう言葉だったのかというと、そうではないんです。


私達は、 誰かが困っていたら、必ず 励ます言葉を 自分なりにかけようと思うのだが、


そんな自分は 本当に どんなひどいことにあっている人に対しても 気持ちをわかり 魔法のような 言葉をかけて 元気にできるような そんな人間なのかということです。


どんなひどい目にあっている人だって、 自分の言葉で元気にしてあげられる と思っている人がいるとしたら、その人はアホだと思う。


同じ思いをした人にしか 気持ちは 見せられない と思っている人に対しては 求められるままにただ 黙ってそばにいる。あっちにいってほしいと言われたら 離れればよい。


言葉は万能ではないし、もちろん自分だって万能ではない。


でも、若い頃はさ、困っている人がいるのに、何もできないとか何もしないとか、そういうのにオタオタしたし、ある意味、相手は困っていたり不幸なのに自分が幸せであるのに、なんというのかなぁ……、やっぱり罪悪感だと思うのですが、なんかこう割り切れないような重いものを感じてたのだ。


だから、暗いニュースというのが苦手だったんです。自分が関係ない暗いニュースというのはみたくないなと思ってた。


けど、ずっと嫌だなと思ってきた悲しい報道に対して、最近自分が少し変わってきた。


見知らぬ他人の死を悼むようになりました。亡くなってしまった方と自分に全く関係はなくとも、しかし、それでも立ち止まりご冥福を祈ることや、残された方の心が少しでも安らかになるように祈ることは 無 ではないと考えるようになったからだと思います。


以前はそういう行為が偽善行為のようで、そこに戸惑いがあったように思う。これは、人の目を気にしていたからで、私は、自分が他者の不幸に対してどう振舞うかを周りの人たちに評価されるのに怯えていた。間違いそうで怖かった。そういうことにばかり心がいっていたのだと思います。


結局は自分のことばかり考えていたってことですよね。


あれは誰のお葬式だったのかなぁ。おばあちゃんだったかなぁ。一生懸命お寺のお手伝いをしていたおばあちゃんのためにお坊さんが丁寧に読経をしてくださって、その後、皆さんも一緒にお経を読んでくださいと言った。ちょっとその時話された細かなことを忘れたのですが、生きてそばにいる私たちが声を合わせて故人の魂が安らかに逝けるよう願ってお経を読むということに意味があるのだと気付かされた瞬間だったのです。


多分それは、逝く人にとっても送る人にとっても必要なことなのだろうなと。


いつもいつも、物質的なものばかり追い求めて生きているから忘れているというか、気づいていないのだけど、もので解決できない問題もある。


この世に宗教があることの意味が前より少しわかるようになった気がする。


汪海妹

2025.04.29

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