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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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なんでぢゃ?














なんでぢゃ?














※ 冒頭に一言、注記を。もし、中国ゆかりの方が見ていらっしゃいましたら、中途までは日本に寄って書きましたが、最後に公平をきすために文書を置いておりますので、そこまでお読みいただけたら幸いでございます。※


のこの柄をつける話を読みました。へーと思った。思った後に、スコンと思い出したことがあり、それに続けて今日の記事を書いているわけである。酒田様、勝手に貼り付けちゃいましたが、問題あれば『やめてくれ』とコメントに書いていただければ外しまする。<(_ _)>あい、すみません。


事件です!おかあさーん!


ゆきひら鍋というものがありますね。幼い頃より我が実家で大中小と揃えられており、お馴染みだった。こちらの中国で似たものを見つけたので買いました。いそいそと使っていたら、とある日に


柄が取れました……


諸行無常の響きなり……


柄が取れた瞬間に、何故か平家物語の冒頭の一句が浮かんだ。平家物語の冒頭が浮かびすぎる今日この頃、お母様、いかがお過ごしでしょうか?何故か、母に心の中で話しかけた。


あまりにポカンとしたので、怒るのを忘れ、台所で、柄の取れたもはやこれは雪平鍋ではなく、とんでもないもどきだったのだろうが、取れた柄を持ったまま、


そもそも、鍋の柄って、どうやってくっついてるのだ?


と想い馳せた。何やら現場検証をしてみると、木の柄は焦げて、焦げたせいで形が変形し、というか縮み?抜けちゃったのよ。


どう考えても設計ミスですよね?


日本の行平鍋真似して、木の 柄、しれっとつけてんじゃねえよっ!燃えてんじゃねえか、燃え尽きとるぞ、うりゃあああああああ!(→遅れてきた怒り)


若者はクイックレスポンスが得意だが、中年は、夜熟睡できないせいか、時折反応が遅い。


ひとしきり怒った後に、頭の片隅にあった、柄が抜けちゃった事件。しかし、木の柄を適当につけたら直接火を当ててなくても高熱のために焦げるのだというのは、実体験したが、じゃあ、日本の行平鍋はどうして柄が燃えないのだろうというのは不思議だった。


だから、この のこの柄を自分でつけるという作業の記事を、そこらの一般ピープルよりも並々ならぬ好奇心を持って読んだわけです。そして、日本の職人はプライドで持っていわゆるネジなどを使わないという言葉に


ほーと思った。


しかし、我が家の行平鍋もどきはネジがあって、そして、焦げちゃったので ねじ止めもきかず、彼奴は大事な柄を失い、もはや鍋としては死んでいる。


お前はもう鍋として死んでいる


同世代にしか伝わらないであろうセリフを書いてみた。ところがである、ここでいつものように少し話が飛ぶが、中国ではレストランでは、皿はかけてからが折り返し地点、


「これからが後半生だよ」


とばかりに、まだ、つ、か、い、つ、づ、けるっ!自宅ではござんせん、レストランでで、ございまーす!っだからっ、中国人の皿洗いをする人は、皿をかけさせることにまあったく気を使わねんだよっ!何故なら、皿はかけても、使えるからだっ!皿、皿といったが、別に 皿だけじゃねえぞ。


「これ、交換してください」

「はい」


ビールで乾杯する前にグラスをちゃんと確認しましょうね。


欠けてます……


「かんぱーい、ぐびぐび、グハァッ」


ビール飲んで、流血なんて嫌っすよね。ふ、ふふふふふ……


「どうぞ」

「どうも」


遠い目になりながら、1ミリもお客様に悪かったな、などとは思ってない店員から新しいグラスを受け取る。


この時、私の脳内では必ず北の国からが流れます。


ラーラーラララララー、ラーララー、ラララララー


ちなみに、私にとって北の国からは故郷を思うミュージックだ。


日本、帰りてええええ!


ちなみに、ここまでけちょんけちょんに言っといて、しかし、お世話になっている鶏の国のために援護しますと、さすがに最近は綺麗なお店が増えて深圳のサービスも上がってきていますから、小綺麗なレストランではお皿がかけていることはありゃんせん。


長い前置きでしたが、何を言いたいかというと、中国では豊かになったとはいえ、欠けた皿を平気で客に出すような感覚で皆が生きておりますから、壊れる、とか、不良品、とかの感覚がちょっと日本とズレてるんだわ。


だから、我が家ではまだこの


お前はもう死んでいる の雪平なべを ……使っております。


……


ほんっとすみません。使っておりまする。おばあちゃんが捨てずにガンガン使っていて、なんか私も、ちゃっかり時々使っておりまする。


我が日本の実家で、綺麗に揃えられた、大、中、小の雪平なべでココア作ったり、素麺茹でたりしていたときは、まさか私にこんな未来が待ってるなんて思わなかったなぁ。


柄のない行平鍋もどき、お前はもう死んでいるバージョンで、ねじりパスタを茹でつつ、そういえば日本の台所で料理をしていたときは、鍋の柄が取れるかもなんてハラハラと心配したことなかったし、柄ってどうやってついてるのだろうなんて考えたこともなかったわぁ。


「ヘイ、シリ、10分タイマーで測って」

「はい、かしこまりました。10分ハカリマス」


料理している時は手放しで使えるSiriが便利だわな。


ちなみに お前はもう死んでいる鍋を使う時、調理が終わった後に鍋を持ち上げることはできない、もちろん熱いからだ。だから、しょうがないので茹で上がったものは全てあのお湯切りをする取っ手のついた網、というんですかね?あれを突っ込んでいちいち拾います。そして、冷めてから鍋を洗うわけ。


新しい鍋買えよって話なんですが、


えせ雪平も、高いスーパーで買った鍋で、そりゃ輸入物の高級鍋とかではなかったけど、別に安物じゃなかったのよ。でも壊れちゃったわけ。


柄の心配をせずに調理できる調理器具を買うためには、もはや値段じゃないわけ。


真贋を極める、心の目が必要なんだぢゃー!カーッ!(→気合い)

ま、しかし、あれだよ。ぶっちゃけ、アチキは日本人でありながら、鍋だけではなくありとあらゆるものがありえなく壊れることに慣れちまった。


「あ、くそ、Siri、お前、ならなかったな」


何故か10分を知らせなかったスマホに悪態つきながら火を消す。ちなみに我が家のガス台は、ガス台のみで火をつけることは叶わない。


……はてな、はてなですよね?


回して、チッチッチッチと言ってぼっていう あのチッチッチッチがイカれているのでござる。


それで、毎回チャッカマンで火をつけるのだ。中国人はものが壊れることになんか慣れきっている。ついでに言うと、私も慣れちまった。彼らはものが壊れても怒り狂わず、壊れたのが主要機能でないなら、壊れたまま使い続けるし、あるいは、直して使う。ものとは、壊れないものではないし、直して使うものなのだ。


我が家の壊れているシリーズ、もうちょっといってみっか。ノンフライヤーである。買って数ヶ月で、時間設定のつまみが取れた。ここでも我が家はマイナスドライバーを回して、調理時間を設定している。


ああ、壊れないものが欲しい。


最初は私もきちんとした日本人でしたので、物がありえなく壊れるたびに ガッデム と怒り狂い、罵り、髪を逆立てていたわけですが、長い時間をかけて変化した。


壊れねえってすげえな。


ほのぼのと祖国のものづくりへのこだわりに感じ入るものの、日本を出ればわりとものというのはそんな作り込まれてるわけでもねえのだなと思うようになった。


そんなある日。


「みて。この鍋。日本製」「は?」


なんと主人が、私のえせ雪平より一回りでかい雪平なべを買ってきた。なんのかの言っても、うちの主人は日本人の奥様もらっているからね。中国を愛しつつも、車はトヨタ。そして、納豆を好んで食べるし、サントリーヤマザキを接待用に買うし、日本の鍋を買うわけだ。


「これ、本物?」

「本物に決まってるじゃん」


これは本当に本物なのか?


商品名、神田雪平鍋。これで検索してヒットするのは全て中国語の説明でしたけど?


「使いやすいよー」

「……」


主人が見ていないところでそっと柄の下方を見る。円筒形の持ち手の金属との接合部分を下から 覗いてみた。焦げ、てるような……


これが、本物かどうかは数ヶ月できっとわかる。下手すると我が家に


お前はもう死んでいる鍋が 中と小で揃うことになる。


ふっ……そして、明日も、柄が取れようが、つまみが外れようが、ガス台がガス台としての役目を100%果たさなかろうが、我々は怒り狂うことなく、壊れてもそれが使えれば使い、使えなければ直して使うのだろうか。


こんな簡単に壊れないものだってこの世にあるんだぞー!ああ、日本に帰りたい。今日も思ってしまった。


2025.03.02

汪海妹


公平をきするために、ここに真面目な追記を入れることをお許しいただきたい。私は市場調査をするような人間ではないので、あくまで自分が買ったものが壊れた話をした。じゃあ、おしなべて中国の物が以前よく言われた「安かろう、悪かろう」かというと、それはどうだろう?先入観というのは危険である。中国人の主眼は、儲けることにある。日本人の主眼は、いいものを作ることにある。ここでわかって欲しいのは、品質をあげたら儲かることが確実な時、中国人は品質を上げることを手段として使ってくる。日本人は目的がいいものを作ることにあったりする。全く違うのである。日本のものづくりの精神は愛しているが、でも、良いものを作れば自然に売れてゆく。それは豊かな国であればそうだろうが、世界に目を向けて、これから豊かになろうとしている国の市場で、確かにそうなんだろうか。ターゲットとなる市場ごとに、もっと柔軟な市場分析をして、それを設計にバックして海外向けに戦術を練らなければ、戦えないだろう。


日本で吹いている風と海外で吹いている風は方向が違うのだ。いいものを作るというプライドに関しては、日本がNo.1だと私は思っているが、臨機応変さと強かな商魂の点では、中国人に叶うだろうか?

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