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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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結婚のいいと思うところ













  結婚のいいと思うところ












一言最初に断っておくが、私は数年前に結婚に悩んでいた人間で、だから順風満帆に来たわけではなく、結婚には負の面もあると思っている。今日は正の面しか書かないが、手放しで結婚とはいいものだと思っているわけでもない。なのになぜこんな文章について書いているのか、その理由についてまず書いておきたい。


悩んだ人間だからこそわかることがあると思うからである。


このタイトルだと、今、この、'結婚'を続けていいか悩んでいる人には読んでもらえないかもしれないが、自分としてはむしろこの文章を悩んでいる人に届けたい。


結婚のいいところ、それはひとえに、時間の共有、思い出の共有、経験の共有お互いに人生の傍観者となる


こういうことだと思う。だからある程度はそれは夫婦でなくても可能だ親友でも、兄弟姉妹でも、親子でも


ただ、この中で一番離れずに一緒にいられる確率が高く、また、共有できる時間が長いのは夫婦だろう。(単身赴任などで一緒に住めない場合は別)


結婚前の時間も含めると、主人と20年近く一緒にいる。株の話ばかりしている主人の話はいつも話半分しか聞かないのだけど、思い出話だけは別だ。


思い出というのはお酒みたいなものなのである。それが起こった当時にはたいしたことではなかった出来事が、時間を得て熟成し芳香を放つようになるものだ。


若者が知らない事実が一つある。人は誰もが死に向かって生きている。死にたがってるわけではないが、毎日は死へのカウントダウンだ。誰もが、である。だから、誰もがどんどん弱っていく。


若い頃に価値あったものが、いつまでも価値を持ち続けることはなく、それは流転する。そして、間違いなく年をとるに従い、思い出はそのランクをあげてくる。


お金持ちの老人がお金を払って若くて美しい人を傍に置き、延々と思い出話を語るなんてことはこの世で割とよく起こることかもしれない。


「ふうん、そうなのね」


お金をもらってるのだから、このくらいは言ってくれるだろう。でも、それは、


「ああ、そうだったわよね」


ではないのである。多分しわくちゃのご老人は、若くて美しい人のそっけない相槌よりも自分と同じようなしわくちゃのご婦人の ああ、そうだったわよね の方が何倍か良いと思うだろう。


同じ時間を過ごしてきた、このことの価値を見過ごしている人は多いと思う。死へと向かう中で、弱ってきた時に欲しいのは、それでもまだ若い頃と同じようなお金だと思いますか?


主人なんかよりもっと私に合った人がいるのじゃないかしら?


悩みに悩んでいたときは、カフェの片隅で一人コーヒーを片手に主人ではない人と歩く自分を想像したものだ。


私の答えは、合う人はいるかもしれない。でも、人生の一部を分かち合った絆は重い。それを断ち切るということは、自分の体の一部を無理にもぎ取ることと似ている。恋人同士が別れるのよりもっと激しい、痛みによって一つだったものを引きちぎるのである。


空想の中にしかいない幻の恋人を右に、主人と過ごしてきた時間を左に置く。そして、天秤にかけてみる。


どちらが重いだろうか?


もしも主人の方にどこかの女の人が近寄って万が一何かあったとしても、その女が私と主人が過ごしてきた時間の重さに勝つことはできないだろう。


見た目の美しさや、快活さのようなわかりやすい目に見える価値とは別に、人生には同じ時間を過ごしてきたという価値がひっそりと隠れている。


大事にしなければそのやっと芳香を放ち始めたお酒を、失うことになりますよ。男は女の誕生日には花を買い、女は年をとっても鏡の中の自分に誇りを持てるように努めるべきなのだろう。


夫婦とは人生を共に戦う戦友なのである。


2024.11.22

汪海妹




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