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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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青嶋さん、出ないんですか?













  青嶋さん、出ないんですか?













家族で温泉に来た。爺婆姉夫婦甥姪プラス我が家2名の大人数。夕食どきにお酒を覚えたての姪っ子が、日本酒通になって、日本酒通の教授の気を引きたいと(もちろんこれは色の意味ではない)言うので、


「何のむ、何のむ?」


アラセブンの父が食事用の個室で張り切りだす。


「この飲み比べでいいんじゃない?」


リーズナブルかつ今回の目的に直接コミットメントしそうな飲み比べセットA、B、Cを指差す。一つでお猪口三つ、三種の酒が来る。3セット頼めば、9杯だ。飲もうと言っているのは姪と父と私。BとCで六杯がちょうど良いと思ふ。


「BとCでいいんじゃない?」


お酒は飲んでも飲まれるな。美酒爛漫。飲めるから飲むではない。ちょうど良い量を飲むから酒は美味い。私も青い頃には無茶に飲んでたけど、今は風流に……


「これっぽっち?」


母が突然、邪魔に入る。


「これっぽっちしか飲めないの?」

「……」


だから、飲めるから飲むではないんだよっ!


「わたしも、飲むよー」(姉参戦)


な、な、な……


チーン


我が短編の酒盛りの雰囲気は、我が家の飲兵衛たちにより演出された作品であるのがこれで証明されたな。父、母、姉、私、残念ながら私が一番まともな酒飲みだ。それ以外は飲めるから飲む。そして、意味もないのに酒の強さを競い、そして、酒に飲まれる御仁たちだっ!


で、結局、9杯頼んだ。9種、9杯。酒の味を飲み比べるのは9種では支離滅裂、ハラホロヒレだ。六つくらいでいいんだよっ!この、ど素人ガァー!(しかし、母にいまだに逆らえない自分)


で、結局、姉は大して呑まずに気持ちよく酔っ払い、まだ飲めると豪語しては、夫と、娘たち2人に止められる。父は、2回も癌やってるので、こやつもあまり飲んではならないが飲みたがるアンド


「これもこれも嫌い。これ美味かった。これの320mlを追加注文しよう」


飲み比べの落とし穴。嫌いな銘柄は、あっても飲まず、気に入った銘柄のみ追加注文しようとする。飲み比べの日本酒をごそっと残したままで、だ。そして、この人は、癌を2回やっているだけに、酒を頼むだけ頼んどいて、突然、もういらない宣言をする輩である。我儘な高齢者なのだ。


「やめとけー」


母と甥が父を止める。阿鼻叫喚である。あちらでは、姉が止められ、こちらでは父が止められ、


ど、どうも、すみません。私の家族が……何かに向かって詫びを入れる。本当にすみません。酒癖の悪い家族で。エアー謝罪。で、結局どうなったかというと、姉も止められ、父も 好き嫌いを言って飲まないし、姪は 酒デビューしたばかりで 日本酒を何杯も飲めるわけもなく、結局、あたしなわけですよ。こうなるの、わかってたし……。だから、それも見越して6杯と言ってたわけ。それなら無理なく飲み干せる量ですよ。飲めるか飲めないかじゃないんです。せっかく飲み比べしてんだから、味を乗せすぎてバカになった舌で酒を飲んでも流石にしょうがないでしょう?美味しいなと思える限度も考えたら、6杯でちょうど良かったのに。


で、飲んだ。1人黙々とさまざまな酒造の杜氏が心を込めて作った酒を飲みました。やれやれ。


で、部屋に戻り、欲望のままに旅館の、軽いのに、そして抱きしめると不思議とつぶれ、めっちゃあったかいお布団をぎゅうっと抱きしめ、例によって例の如く浴衣の下半身がはだけて


「だらしないっ」


母にペしりと叩かれ、息子も便乗して叩いてきたが、とりあえず欲望のままに爆睡。


すると、とーい所からなんか音がする。ファンファンファン、サイレンの音やねん。なんちゃ?ものすごくゆっくりとどっかから意識が戻ってきたぞよ。


「あ」


それは踊る大捜査線の映画でした。レインボーブリッジを封鎖せよ。


なつかしー布団の上に寝っ転がって、有名俳優の若かりし日を眺める。どうして、今更、踊る大捜査線?と思っていると、CMはじまり、PV流れる。


へーあの約束から27年、室井慎次 敗れざる者 あんど 生き続ける者


すっげー 懐かしいけど もっかい 踊る大捜査線の映画やるんだぁとつくづくとみる。


あれ?織田裕二さんでてこんやんけ。


それで、ググりました。今回の映画は室井さん主人公で脚本もあがり、青島の出番もあって織田裕二さんのオファーをとりつけにいったそうだ。しかし、断られたんだと。ネットニュースでは原因はギャラが安かったからと、役柄が気に入らなかったからと書いてあった。


えー、青島さん、出ないんすか。


青島の出ない踊る大捜査線なんて、もはや別物ではないの?そこで、母に話しかける。


「織田裕二、踊る大捜査線の映画に出ないんだってよ」

「最初は室井さん(柳葉さん)も断ったんだってよ」

「え、そうなの?」


母、隠れ芸能通。あなどるなかれ。俄然、眉唾ものだなこの映画よ、と思ってしまう。PVはかっこよかったけど、気合をいれればPVはかっこよく作れるのである。


昔、大流行をしたドラマや映画を27年たって掘り起こすなんて、なんだかな。最近は映像を配給する業界も、劇的に変化していて、ネット配信のドラマや映画がどんどんでてきて、若者はテレビなんか見ないし、日本人が米を昔に比べて食べなくなったみたく、テレビを見ない人が増えてきてるやん。


テレビ局はそれでもコネも金ももってるから、ばばーんと 金かけてこういうことするのだろうけど、なんつうか、素人の私からみて、ですけどね、今、映画を見るという業界は多極化していると思っていて、みんなそれぞれ自分の好みがあって、自分の好みのものを喜んで見ているのだと思うんです。つまり、波は起こるけど、それはかつてのような一世を風靡するビッグウェーブになりにくいということなんですよ。


それでも、かつての栄光よ再びみたく ビッグウェーブにこだわる人たちというのはいて、それで、伝説的興行収入を打ち立てたかつてのシリーズをゾンビみたく復活させてきたか。


しばし、室井さん=柳葉さんの断りたかった心情と、しかし、それでも最後には受けてがんばっているのだろうな、ということと、織田裕二さんが断ったのにもそれなりの理由があったのだろうな、と思いはせる。


りーまんにはりーまんの大変さがあるけれど、俳優さんだってそれなりに大変なんだろうなと思う。それに映画を作っている人たちだって、上の人がやるっていったらやるんですよ。リーマンと一緒よ。いい物作りたいって気持ちは変わらないはずよ。しかし、重要な部分は上が決めるわけよ。下は自分のできる範囲で右往左往するしかないんだろうなぁ。


温泉のとある個室で、30年ほど前の邦画(踊る大捜査線)を見ながら、これでもかと思いはせた。願わくば、室井さんの映画がPVの雰囲気のままにいい出来であり、ヒットしますように。(ぎばちゃんに捧ぐ)あーめん。ちなみに私は見ません。中国行っちゃうと映画館ではみられないから。レンタル配信始まった時には、で、宜しくお願いします。あーめん。


やれやれ


そして、柳葉さんではなくて、織田裕二さんに思いはせながらレインボーブリッジを封鎖せよをぼんやりと眺めました。


織田裕二さんは、この若い頃にはまり役になった青島の役が実は苦手だったのだと、ネットニュースには書いてあった。私から見ても、この、型破りで明るくてちょっとコミカルな役は織田裕二さんにぴったりだし、青島の軽さと室井さんの硬さ、二つでこの 踊る は成り立ってたと思うんです。嫌いではない。魅力的なタッグだったよ。


ただね、織田裕二さんもやはり俳優さんですよね。若い頃だからはまり役だったとわかってたとおもうの。結局、青島の役柄を中年男性がやると、話は全く変わってくる。だから、織田裕二さんは 青島の役 が苦手だったと言っていると思う。はまり役になりすぎると俳優として別の役をやっても世間にうけなくなっちゃうとか、そういう事情なんだと思うんですよ。年齢を重ねるに合わせて、もっとシリアスな役をやりたいと、そういう方向で活動されているようだ。理解できるし、正しいと思う。


で、おそらく今回あがってきた脚本の青島が 年を取っていなかったのではないかな?私はそう思いました。だから、断ったんじゃないかなぁ。


一時、非常に人気のあった 青島 という役柄です。あの時代の日本では、ああいう組織に歯向かうような型破りで一生懸命なキャラというのは人気がありましたよ。それが、令和の現代では受け入れられない。それも現実。


ただね、あの頃、熱い若者だった人たちが現実で中年になって生きていることを忘れてはならない。


だから、踊る大捜査線のファンは、中年になった 青島が見たいんですよ。ああいう昔一生懸命で真っすぐだった人が、現代をどんなふうに生きているか見たいんですよ。


そこをうまくキャラ設定できず、脚本にかけなかったんだろうな!ハハハ!失礼、笑ってしまった。室井さんはまだ、年を取った室井さんを書けたのでしょうね。しかし、青島は書けなかった。おそらく、若者のままで、あのままの青島で書いちゃったのだと思う。


それ、ヒジョーに残念な大人ですよね?そんな青島にがっかりする観衆はいても、魅力を感じる観衆はいないだろう。昔人気があった作品のリバイバルはここが難しい。イメージが出来上がっているが上に、それをいい意味で壊して新たにほれさせるのは至難の業ですよ。


だからこそ、あえて27年を超えてリバイバルするなら、そこ気合を入れてやってくれと思うのだが、


青島さんでないんかーい!!!


片手落ちですねぇ。それでも柳葉さんもスタッフの皆さんも頑張って作っているでしょう。映画公開とともに見るのは中国帰っちゃうから無理だけど、見られるときに見られる形で見ようかな。


そして、最後に、青島さんを自分ならどんな中年にするか考えてみる。


自分はね、現在は基本的に NHKのニュースと朝ドラと大河と歴史系のドラマやドキュメンタリー以外は、ミステリーしか見ないんですよ。それも、海外ミステリーをどっさり見てます。


海外の刑事ものでは、定年まで現場を貫き通す出世しない頑固な刑事というのが主人公で出てくるドラマが結構あるよ。ああいうのを研究しながら、日本風にアレンジすれば、難しいにはしても中年の青島のキャラ設定もできそうだけどなぁ。つうか、ヨーロッパの文化ではむしろ、中年の大人をかっこよく描くんだけどなぁ。日本では難しいですかねぇ。


……しばし、温めてみるかねぇ。中年の青島、的な?中年万歳!


2024.10.06

汪海妹



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