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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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控えめな私でもできること、控えめな私だからできること












   控えめな私でもできること、控えめな私だからできること













とある日、A所長とB所長が、メールで喧嘩をした。小学生のようだった。けんかのメールが行ったり来たりするのをCCから私と中国人アシさんと覗く。


なんかいいなこういうのと、ほのぼのした。


お客様の前ではきちんと二人ともクレバーなのに、小学生みたいな一面を隠れ持っていて、しかもそれを下の人達の前で無邪気に見せてしまうのがよい。


ぐじぐじと腹の中で何考えてるかわかんないのが本来の大人の喧嘩なのだが、それは心身に悪い。むしろ、スカッと表に出してやり合ってもらえると見てるこちらも安心する。適度にけんかして二人とも長生きしてほしい。


昔の自分なら、絶対こんなふうには思わなかったよね。人間と犬の嗅覚は差がある。その程度と同じぐらいの差をもって、私は自分含め他人の心理の動きに敏感で、昔ならやり合ってる様子にオロオロしつつ、この人たち怒らせたら怖いとビクビクしていただろう。怒らせないようにしようと、そして心に誓っていただろうと思う。


こう言ったら相手の気分を害するのではなかろうか、怒らせるのではなかろうか、若い頃はめっちゃ悩んで、人と話すのが怖かった。よく禿げなかったものだとつくづく思う。


多分自分は、こんだけビビリだからこそ、対人をむしろ極めたと言ってもいいと思う。ただひたすらに観察を続け、他人の怒りやらなんやらの感情の原因を分析しまくったのである。長年の習慣、チリツモもここまで徹底すると、神技である。……ちょっと神は言い過ぎであるけれど。


そういうわけで、この歳になりまして、ヘラヘラと笑いながらさまざまな人々の怒りを避けられるようになりまして(踊りながら避ける)、だから、小学生みたく怒っている犬猿の仲の所長のやりとりを見ながら


「風物詩だなぁ……」


花火でも眺めているような心持ちである。人間だもの、喧嘩もするよね。どっちも負けるな。でも、ほどほどにね。


お客様とメールでやり取りしていると、もう、最近はメールのやり取りだけで相手がどんな人かめちゃめちゃわかる。例えば、物事がきちんと順番通りに進まなかったり、ミスをしてしまうとパニックになる人がいる。メールの文面を見ているとパニックになってるとわかる。


この時、手に取るようにわかるのは、自分がもともとパニックがちな人だからだ。それを地道なテクニックを何個も重ねて克服してきている。


だからこその受け手としてのテクニックが、私にはある。


「ありがとうございます」


基本はたったこれだけだ。とにかくパニクル人には、大丈夫 と ありがとう である。そして、それに加えて時間に余裕を持って確認を入れたり、忘れていそうなことを先回りして、さりげに確認するのである。


さりげに確認すると、もちろん忘れてて、そして案の定パニックになり、ついでにもう一つ、二つばかし一緒に忘れてしまうのがパニクル人の特徴である。だから、もちろん忘れてての直後にこっちからまるでボクシングでアッパーカットを入れるかのように「大丈夫ですよ、まだ時間ありますから」とコメントするのである。私の仕事のスケジュールはこのトラブルを見越して立ててます。


ミスをしてパニックになる人はその次の瞬間に ごめんなさい を言いまくる。ごめんなさい という言葉は もちろん 謝らなければならない時には使わなければいけないのだが、 時と場合によって多用すると危険な言葉なのである。


ミス

パニック

ごめんなさいの多用

周囲にこの人はダメだとより強く印象付けてしまう

その周囲の表情を見て、本人は自分はダメだとより強く思い込んでしまう


これを繰り返し人はどんどん地下に向かって降りてゆくのである。


では、こういう人は本当にダメなのか?ミスをしても ごめんなさい を言わない人だっています。こういう人は周りから嫌われますが本人はふてぶてしく元気です。ダメかいいかなんて本当は紙一重です。ただ、人間の思い込みの力って侮れないので、本当にダメかいいかとは別のところで、


自分はダメなんだ、ダメなんだ、ダメなんだぁ


呪いの言葉を自分にかけている人のなんと多いことか。(→チコちゃん風でお願いします)


そんな時にこの適宜なアッパーカット「まだ時間あるから大丈夫ですよ」を入れると、負のスパイラルが断ち切れるのである。やれやれ。


ミスするかもしれない、忘れるかもしれない、こんな不安は以前は常にありました。私は不安だから仕事についてはかなり細かくメモをする人間で、また、必ず毎回過去歴を確認する人間です。段取りをきちんと立てておかないと心配だからと、一度たてた段取りを何度も見返す人間です。結果的に、そこまでなんでもメモしてまた何度も読み返すし、段取りし直すので、私はスケジューリングが他の人より上手いです。


スケジューリングというのは、優秀だから上手なのだというより、不安症だから上手なんじゃないかしら?


それと、自分は失敗すると落ち込むので、もう二度と落ち込みたくないと思うから、失敗すらメモするのですよ。そして、例えば一年後にもう一度同じ仕事をするときに、過去歴を見直すのでそこで去年の失敗を思い出して、繰り返さないように今年の段取りをするのです。


全部、フツーの社会人がフツーにやってることです、と、言いたいところですが、上のようなことは知っていても、どれだけ徹底してやるかというのには個人差があると思う。普通の人よりも心配性、不安症な人の方が徹底してやるでしょう。だって、こと細かくデータを整理したり記録したりするのは、一つ一つは難しい作業でなくとも、めんどくさい作業なんです。


パニクル人というのはね、自分自身でもパニクルことに非常に疲れているからね、不安から逃れるためには一生懸命になれますよ。すると、ちゃんと仕事のできる人になれる可能性のある人たちです。不安 や 心配 なんて書くとこんなのは非常にネガティブなワードですが、なんのなんの、不安 や 心配 だからこそ死に物狂いで頑張れるという ポジティブな面もありますよ。


物事はどう捉えるか、そして、どう利用するか、自分の人生の手綱は自分が握っていますから、だから、行きたい方向へどうせならかけていきましょう。どんな事象にも必ず、ネガティブな面と同時にポジティブな面がある。相反する性質を持っているものです。その物事の二面性のポジティブな面を探すことから始めるべきなのだと思う。


私は、心配性で、不安症で、気をつけないとパニくっちゃう自分が好きです。


汪海妹

2024.08.30

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