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とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
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言い方は大事である













   言い方は大事である













朝である。金曜の朝である。ラストスパートだなっと。ボケっとだらっと地下鉄の固い冷たい椅子に座っているとスマホが揺れる。愛息から電話である。


何?何?


突然シャキッとなり電話に出る。何か異常事態だろうか?


「お母さん、今日、学校休みじゃん」

「嘘?」


話を聞くとこうである。一人っ子政策は緩和された今でもお子様は皇帝様な中国、暴風雨警報が出るとサクッと休校になるのである。


「雨なんて降ってないじゃん!」


正確にいえば降っていた。雀の涙程度の雨が。


「僕もこんな天気だからまさか暴風雨警報が出てるなんて思ってなかった。保安の人に言われたよ」


それから叱られた。


「ちゃんと通知見て。二回目だよ。前は学校あるのにないっていうし」

「でも、あるのがないというのに比べて、ないのがあるというのは実害ないじゃん」


前は学校があるのにお知らせをよく読んでなくて休ませてしまい、先生から電話が来た。今回は別に若者である愛息が学校までてくてく歩き、てくてく帰っただけだ。若者がカロリー消費したくらいでガタガタいうなや。


「そういう問題じゃないでしょ?ちゃんとして、ね?」

「はい」


電話は切れた。それからまた、会社の最寄駅までのわずかな間をだらっと席に座ってた。金曜、ダリー。


に、してもである。我が息子、怒りもせず冷静に客観的に淡々と、指導をしてきたな。なかなか立派ではないか、誰の子だろう?ちなみに学校からのお知らせは朝スマホに来ていました。朝からスマホ見るか?毎日お知らせくるなら見るけど、たまーにしか入らないお知らせを毎朝、見るか?(ちなみにほぼ毎朝、出勤までのほんのひと時にスマホで私はゲームをしている。なめこの世話をして、それからパズルゲームをしている。誰に頼まれたわけでもないが……)


それから出社した。ダリー、ダリー、サルバトール・ダリー、おっと、親父ギャグ言っちゃったな。それから会社の席でどてーと座っている自分。


チクタク


「おはようございまーす」


シャキ!


「おはようございまーす」


上司が来ました。うちは時差出勤システムなので自分で出勤時間を選べる。私と上司の出勤時間は約30分ずれております。節エネモードを切り替え、仕事をする。(しているふりをする)


チクタク


ふと見ると、学校からまたウェイシンに連絡が。


『午後からは学校があります』


はい、ただいま!謎のサービス業の挨拶を心の中で叫びつつ、いらっしゃいませー、お客様!誰も来ていないが、そんな気分でカスタマーの信頼回復のために電話をかけた。私だって24時間365日、ダメ人間というかオフ人間ではないのである。ちょっと電気量が足りないだけで、ちゃんといけてる社会人だぞっと。


「午後からは学校があります」

「もう知ってるよ」


なんで知ってるのだよ!息子よ!


「あら、そうですか。しかし、気をつけろと言われましたので、こうやってお知らせしました」

「よくできました。それだけ?」

「それだけです。それではお疲れ様です」


切りました。なんか?今のは信頼回復になったのだろうか?ならなかったのだろうか?ぶつぶつ……しばらくぶつぶつ思ったが、とりあえず、ま、いっかと思った。


ま、いっか という言葉はトイレのフラッシュの捻りのように、世の中のさまざまなことを押し流してくれる魔法の言葉である。


そして、それから、仕事をした。(仕事をしているふりをした)


ところで、上の話はどうでもいい話なのですが、人間、言い方は大切である。うちの愛息は、誰に似たのか非常に冷静に私のミスを指摘し、そして、未来の行動をそれなりに反省の上で改善させることができましたが、世の中のすべての指摘がこのように冷静かつ的確に行われるわけではない。


例えばである。わたしも自分の身が可愛いのでどこでとか誰がとかあまり具体的にはいえないのですが、この前とある人が言いました。


「こんなことができないなんてお前は小学生か」


わたしは傍でそれを聞いていた第三者だったのですが、その言い方あかんやろと思った。それはあかん。パワハラや。


時代は21世紀である。部下に指導をする皆様は日々、営業ノルマもあるやらなんちゃらで責任重大。疲れているのである。それはわかるが、言葉というのは使いようや。部下というのも使いようや。イライラしているからといって、間違えてはあかん。


ことは責めても人は責めてはあかん。一つにそれはパワハラだし、もう一つに、お前は小学生かと言われて奮起して成長する部下なんぞ、津々浦々、マンホールすらひっぺがして覗いてみたってまずおらんやろ。このミスはかくかくしかじかでいけないから、次からこうしろと具体的に論理的にことを責めて自覚させるべきだ。


管理職なんてつまんないから、金と職位はいるが、管理はいらねえと言っても、人を管理してなんぼの管理職だ。それならば、管理職が職場で口にする言葉は全てゴリゴリの意図的な言葉であるべきである。ガチンコ、計算して発言しよう。


つまりは、小学生かお前は、と言ってパワハラですって問題はとりあえず置いといて、それで、部下が成長して、会社の利益が上がるのかという話です、はい。仕事ができないやつに何言ったって同じなんじゃと言いたい気持ちもわかる。しかし、どこぞのサービス業のお嬢さんがお宅にピンポンと来て、顔が気に入らないからと「チェンジ」できても、部下はそんな簡単にチェンジできないのである。


仕事に必要なのは感情ではない。冷静さだ。どうどう、どうどう。自分を落ち着かせよう。暴れ牛のような自分を。


厳しくしてもいい、優しさで釣ってもいい、東から登っても西から登っても富士山は富士山だ。しかし、効果のある言葉のみを選ぶべきだ。それが管理職の職責なのである。部下は育ててなんぼだ。その心をめためたに折ったって何も出てこない。


お前、小学生か?それは指導の言葉ではないだろう。それこそ、小学生でもわかるのである。自分なりの魔法の呪文のような言葉を手に入れようではないか。


2024.07.26

汪海妹

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