表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
177/343

子供を叱る場面












  子供を叱る場面













中国ではジジババが働く父母の代わりに孫を見ていることが多い。そして、路上でジジババか或いは父母が孫を叱る場面に出くわすこともある。


つい数日前にも地下鉄構内を通って帰ろう(エアコンがあるので涼しいから)と思って階段を降りようとしたらそこで、ババとチビ(ダン)(小さい男の子という意味)がやり合っていた。特筆すべきはババの口調である。


相手が子供だからと見下さず、つまりは子供騙しな口調ではなく、ガチで、全力で、思いっきり怒っていた!ちなみに心配する人がいるとあれだから、加筆するが、手は出てなかった。


それを見た時、私は思った。お前、何をしたんだよ、チビ男。


中国語がそんなにうまいわけではないが、これは2人の間で公平な人間として、ババに非があるのか、チビ男に非があるのか、間に入ってやらねばならぬのでは?と思った。中国語があまりうまいわけではないが。


どうする自分?


もちろん、素通りして帰ってきた。どう考えても私の論理性とか、客観性とか、自分でもちょっといけてるんじゃね?と思うそのスキルは、中国語では発揮されない。なぜかというと、発音が悪いからだ!語彙力も足りない!


外国語を習い、日々使用されている皆様、コツコツ勉強しましょうね。


やれやれと思いながら階段を降り、まだ、ババとチビ男の丁々発止とした様子を胸に留めながら歩いた。


思うに、中国のババは子供騙しではない人が多いように見受けられる。もちろん、子供騙しもいる。いっぱいいる。しかし、どっちかというとガチ喧嘩してる姿を見かける。


耳を引っ張ったりとか、腕を強く掴んだりとか、暴力的になっていたり、あまりにでかい声で叱ってたりすると、他人事ながら胸が痛む。子供がかわいそうである。しかし、すべてのガチ喧嘩が嫌いではない。


むしろ先ほどのガチ喧嘩は好きだった。ばあちゃんが子供だからと手加減せず、それに対峙するチビ男も凛々しい顔で負けてなかった。いわば、宮本武蔵と佐々木小次郎がここは中国大陸ですが、刀を手にジリジリと相手の隙を狙って弧を描きながら、そんな風情を感じたのである。


だからこそ私も加勢してやりたかったわけで。語学力が足りないのでやめましたが。


つまり、何が言いたいかというと、私は子供騙しな話し方をする大人が好きではないのである。どうしてかというと、子供は結構頭がいいんです。だから、子供だからわからないだろうと適当なことで言いくるめようとする大人が嫌い。


じゃ、お前はいつも丁寧に対峙しているのかよというと、


いいえ


めんどくせと思って、適当なことを言って、子供につっこまれながら会話をしている。ただな、さまざまな会話で適当なことを言うが、叱るときだけはそれはやりません。相手も一個の人間、子供騙しな変な理屈で躾をするのは、人間形成に影響を与えますよ。


子供には子供のそうしたいという理屈があるんです。ちゃんと聞いてあげれば、ちゃんと答えますよ。これが人によるけど、なんのなんの、結構すごい立派なことを言う子もいるんです。


ほー


子供の頭の柔らかさに触れると、自分もいい効果を得ることもあるし、それに何より、子供だからと相手を0.5ぐらいで人権を無視するというか、大人と同等に扱わない。それは私的には微妙です。ダメはダメ。だけど、大人にダメだと説明するのも子供にダメだと説明するのも手は抜かない。理解できるように噛み砕きはするが、ちゃんと同じように説明する。そのために自分の論理力と思考力は常に磨いている。


つまりは、言葉と言葉ではあるが、子供だからといって手は抜かない。真剣勝負です。おめえが間違ってるんだよっ!


ここで、宮本武蔵と佐々木小次郎が現れるわけだ。ガルル。


こんな躾が何を連れてくるか?真剣にこちらを言いまかそうとする次世代型人間(つまり子供)を連れてくる。


私は常々思っているんですが、自分もそんな頭悪い方じゃないと思うけどね、でも、こう、機械として新品ではないわけ。スマホだってバンバン買い替える時代。俺(私)も、もう、中古市場の人間だよね。ところが、子供、こいつら、


……新品です


回転数がやや落ちてきた頭で、しかし、経験値は上だからと楽勝できると思っていても、新品のキレというものもある。


「でも、それ、こうでこうでこうじゃん」

「なぬ?」


その瞬間、なぜかナウシカの導入部で王蟲に追われたユパ・ミラルダがナウシカに助けられ風の谷に到着した時に口にしたセリフが蘇る。


負うた子に助けられましたわ


しばらくぼうっとした。

助けられましたわ……助けられましたわ……助けられましたわ……。

しかし、まだ、お前は、ナウシカではない。ナウシカではないぞ!


「しかし、これは、こうでこうでこうなんだよっ」

「ムキー」


そして、アチキはまた、息子の見ていないところで包丁を砥ぐ。常に、武器は磨いておかないとな。しゃーこしゃーこ


それにしても、あのあっぱれな婆ちゃんとチビ男の戦いはどうなったであろうか?あのチビ男はなかなか凛々しかったが、ちびっ子にガチでキレるあのばあちゃんあってこその血筋だろう。どっちも頑張れ。最後には仲良くな。


ちなみに余談ではあるが、緊急時ではない常日頃はめんどくせと思い、適当に会話し、叱らねばならないときだけ電流が流れ、宮本武蔵と佐々木小次郎ばりに息子とやり合ってきたが、基本、自分は劉邦みたいな人である。


劉邦、項羽と劉邦の劉邦ね。息子に関してはボケーとしてる間にばあちゃんや旦那もいて協力しつつ、ポロポロといろいろなものを落としては拾い、落としては拾うような感じでやってきた。いつの間にか背も越された。


最近もっともらしく他のお母様たちにぶってみせた。


「親がぼーっとしてると、子供がしっかりしてくるよー」


本当に100%ぼーっとしてるわけじゃない。ここぞという時には電流が流れ、自分は武蔵か小次郎になりますので。しかし、ここぞという時にしか電流は流れないのである。そして、親がいい感じにぼけっとしてると、子供がしっかりするのは、


ほんとだ。


2024.07.20

汪海妹

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ