表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とりとめのないこと 抜粋  作者: 汪海妹
153/345

人のせいにするな!














  人のせいにするな!













日曜日、


「すぐ帰ってくるから」


と言って、午前10時頃、主人がひょうひょうと消えた。金曜、土曜、日曜と忍者のように気づくと消えている。何のことはない。大学時代の友人が、西安から出張がてら来ていて、連日連夜つるんでいるのだ。


そして、すぐ帰ってくるからと、明らかな虚偽発言をした上で飄々と主人が消えた後に、我が家のマンションの部屋に業者さんが来た。部屋の消毒をしてくれるのである。おばあちゃんもいなかったし、バイリンガルな息子を通訳がわりに使おうと思ったら、


「やだ」


と言って自分の部屋にこもってしまった。


おい!


と思った。しかし、孤立無縁な状況で、見知らぬ中国人の業者さんが消毒したらこうしろああしろという注意を、よくわかんないんだけど聞いてました。


「ただいま」


おばあちゃんが帰ってきた。おばあちゃんは中国人である。やれやれと思い、おばあちゃんに任せて後ろに下がったが、


「@**^$$」

「&&$#*%」


横から見ていると微妙に中国人同士なのだが、火星人と水星人が話しているように見えたのは気のせいか?つまりはこうなんです。中国は広く、中国の方言というのは日本の方言なんかよりもっと激しく標準語から外れているのである。


つまり、うちのおばあちゃんはそれなりに訛っている。そして、あの時代はまともに学校に行って勉強するチャンスがなかったからか、あまり科学知識がないのである。


……しょうがないので、発音の悪い日本人がそばに立ち、相手は私が日本人だと気づいていないのだが、分かったようなわからないようなで聞いていた。


そして、消毒液を噴霧した後は2時間ほど外に出てなさいと言われたので、3人でてくてくと近所の日本料理屋に行き、仲良くご飯を食べた後に、ダラダラ時間を潰してから家に戻りました。エアコンが大好きな私、もういいかなと換気していた窓を閉じてエアコンをかけて、日曜日の午後をダラダラと過ごした。


すると次の日の朝、つまり今朝


「頭痛い」


息子が鼻水ダラダラで、頭が痛い、学校休むと言い出した。風邪か?なんだ?と原因を探る。ふと思った。


「もしかして、消毒したせいか?」


いつ始まったかを二人で確認。やっぱりそうかもとなる。するとそばでそれを聞いていた旦那。


「あなたが窓を閉めたからだ」


中国人は換気が大好き。そして、おばあちゃんはエアコンが嫌い。でも、私は家族の中で一番エアコンが好きで、自分が家にいる時は、いつもエアコンをかけてる。そういう背景があって、からの、私のせいだ、発言でした。


「あなたは家の外にいたから、一番、ピンピンしてるわよね」


金曜の夜から土曜、日曜、ずっと外で遊んでました。夜中に帰ってくる生活よ。


「この前消毒するときはあなた(私)がいなかったでしょ」


泥試合である。この時、しかし、久々に切れた。今週末だけじゃない。平日だろうが週末だろうが、うちの旦那は家にいないことが多いのである。だから、息子の世話はおばあちゃんと私で分担して、家事はおばあちゃんが中心になってやってる。とにかく、お前は、いつも、いないんだよ!!!


それでも別におばあちゃんも私も怒ってはいないのである。しょうがないなと思ってる。人付き合いが好きな人間だからしょうがない。そこじゃないんだよ。


いつも家にいない。家のことは我々に任せてる。それで、たまーに家にいて、何か家のことをやると、家のことをやってやったと主張してくる。それからさらに、自分がいなかったときに家のことで何か悪いこと、問題が起きると、突然「お前が悪い」と非難してくる。


そうじゃねえだろ、とこっちは言いたいわけだ。


私が言いたいのは、家族四人いて、うちの主人が頑張っているのは知ってる。ただ、頑張っているのは主人だけじゃないんですよ。主人の見ていないところで、私もおばあちゃんも、或いは息子もいろいろやっているんです。自分だけが頑張っていると思うな。


夫婦や家族だけじゃない。仕事でもこういう人はいる。普段は任せっぱなしにして、関心がなく、見ていない。だから、その現場の状況をよく知らない。それなのに、たまに突然ふらりときて、そして、たまたま何か問題が出ていたら、よく確認もせずに、「お前が悪い」と非難するのである。


こんなことされたら、あなたが留守の間に現場を守ってきた人たちは、本当にうんざりするよ。


お前だけが、一人で、頑張ってると思うなよと。頑張ってるのを知ってるから、いつもいないけどしょうがないなと文句を言わずに支えている人がいるのを忘れるなってやつですよ。


だから、もっと家にいるようにしろとかそういうことかというと、そこでもない。


いつもいないけど、いない間にいろいろやってくれてありがとうという、感謝の気持ちがあれば、家のことで何か問題が起こった時に、「お前のせいだ」なんて言葉は出てこないってことですよ。もしも、本当に私のせいだとしても、です。


家族でも職場でもそうだと思うのですが、普段ほったらかしにしておいて、それで問題が起こってからその場に行って解決をしなければならない時、普段ほったらかしにしていたなら、すぐに責めてはならないですよね。だって、その日は問題が起きたかもしれないけど、それ以外の日はきちんと回っていたかもしれない。問題の大きさや原因は普段ほったらかしにしているあなたは、ちゃんと把握できていないってことですよ。


それをきちんと確認せずに「何やってんだ」なんて言ったが最後、まず、信頼を失うでしょう。何が嫌って、もし自分が本当に悪いのなら、その評価は甘んじて受けますが、納得できないようなことで一方的に非難されることです。


普段ちゃんと見てくれて、できてる時には「いいね」と褒められているからこそ、ダメな時には「ダメだったね」と言われても素直に聞くし、次こそ気をつけようと思います。


ちなみに、ちょっと話がずれますが、息子が中学になるのに合わせて塾に行かせるようになりました。息子の性格を見ていると、強制的にやらされる環境に入った方がいいタイプだと思ったし、それに、やだなと思ってもやらなきゃいけないと思ったら要領よくやる人だとも思ったし。


学校の説明会に行っても学校の先生たちがいうに、小学校から中学校になると突然勉強が難しくなって、中1ショックっていうんですかね?落ちこぼれてしまう子が出るんですって。説明会の後に、息子とよく相談して、塾に行くことは納得して開始したことでした。


空手もあるし、塾もあるし、急に忙しくなったけど、文句言わずに頑張ってた。


そんなある日、主人がまた例によって例の如く


「ゲームばっかりして!」


いつも自分の気が向いた時には息子のそばにより可愛い可愛い、ですが、自分の興味が別にある時はほったらかし。そして、いつもいない。だけど3ヶ月に一回くらいのペースで、突然叱り出す。


「お父さんがお前くらいの頃は毎日本を読んでた!」


息子と一緒に聞いていた私、ほんとか?と思う。だって、タイムマシンで行って調べてでもしないと、親のこういう話ってほんとかどうかわからないよね。


確かにうちの子は本は読みません。ゲームばっかしてる。ただ、中学になってから突然塾に、空手にと生活が忙しくなったけど、文句言わずに前よりは勉強するようになってきていたところでした。


いつもはほったらかしにしてたまに思い出したように本を読めと言って、どうする?


「お母さんが本を読めって言わないから」


そして、また、人のせいにする……人のせいにするなーーーー!!!


子供はね、親が読めと言ったら本を読むような生き物ではないんですよ。中学生なんて親が思っているよりもっと大人です。


大事なのは自分が話しかけたい時だけ、話しかけることじゃないんです。子供が親と話したいと思っている時に、自分は自分のやっていることを中断して、子供の話を聞いてあげたか、そういうことだと思うんですよ。


一方的な関係性しか築いていないのなら、子供は親が本を読めと勧めたって本なんか読みません。


仕事で忙しいから、なかなか子供との時間が取れないのはみんな同じで、だけどだからこそ、久しぶりに一緒にいる時に子供が話したいことを聞く前に、藪から棒に「本を読め」なんて言ってはなりません。


主人に言い返せない息子の横で、「最近頑張ってるんだよ」と代わりに軽く反抗しておいて、後、息子と二人で空手に向かうタクシーの中で話しました。


「お父さんって悪い人じゃないんだけど」

「うん」

「普段何をしているのか全然知らないのに、突然、全然頑張ってないって決めつけられると嫌になるよね」

「うん」

「ま、でも、短所もあるけど長所もあるから許してあげてよ」

「うん」


しょうがないなぁ、タクシーの後部座席に並んで座りながら、母子でため息をつく。この世はしょうがないなで成り立っている。そりゃ、腹は立つし、文句も言いたくなるし、時々は言うけど、それでも最後には許すのが、家族というものである。


そして今朝である。たまには夫婦喧嘩でもするかと思い、主人にウェイシンを送った。


『何か悪いことがあると必ず人のせいにする』


かなりカッカとしてたので、次と次にも恐ろしい文が続いた。一回送って削除した。なぜか?あまり主人を怒らせると、車の運転が心配だからだ。自重した。


我々の夫婦喧嘩は大抵こんな感じである。まず、最初、しばらく旦那は怒っている。ゆっくり時間をかけて怒りが引いてきた時、反省する。そして、11時過ぎ、


ピコン


ごめんなさいという言葉が送られてきたか?いや、普通、旦那はごめんなんて簡単に謝らないものだ。よその旦那さんは知らないが、うちの主人は見た目より頑固である。自分が悪かったなんて言わない。送られてきたのはうちの息子の写真。本日、体調を少し戻して、ご飯を食べている様子。


私はそこで、2019年のうちの子の写真を返信で送る。まだ小学校低学年の可愛らしい写真だ。


昔なら和歌に心を込めて男女は情を交わしたのだろうが、我が夫婦は子供の写真を使って気持ちを伝え合う。


夫婦といえども性格はバラバラで、それぞれ長所も短所もある人間で、しかし、一番の共通項といえば、二人とも息子が大好きなのである。ここだけは似ている。


子はかすがい とはよく言ったものだ。


2024.06.03

お笑い芸人と優等生共著



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ