隣にいるけど遠い
隣にいるけど遠い
本日の写真は、ワタクシのデスクの上にいて、仕事に疲れて顔を上げると私を応援してくれる応援団の皆さんです。手前の象はタイで買ってきたもの。
中国で仕事の延長線上で日本人の方と知り合い自己紹介をする時、中国人と結婚しましたというと、稀にかるーく傷つく日本人男性がいる。
「どうして日本人にしなかったの?」「えっと」「日本人のどこがダメなの?」「……」「中国人のどこがそんなにいいの?」
チーン答え合わせをしよう。日本人男性がダメだから中国人男性と結婚したわけではない。たまたまです。たまたま。ただ若い頃は異文化に興味を持っていて、自分から外国人と交わろうと寄っていく人間だったので、出会う機会は多かったかもしれない。ちなみに、日本人だろうが中国人だろうが、その個人がどんな人間かというところがポイントとしては上なので誤解なきよう。で、中国人男性と結婚するとこんな時めんどくさいということをせっかくだからお教えしよう。例えば
「子供はディズニーランドに連れて行かないと」「そうか、じゃあいくか」
昭和的感覚でいくと東京ディズニーランドに行ったことのない子供はちょっとアレなのである。日本人男性なら、子供はディズニーランドに連れて行かないとなとわりとすぐわかってもらえると思う。ところが中国人男性だと
「子供はディズニーランドに連れて行かないと」「深圳の歓楽谷と別に同じでしょ?」
チーン
ここで、ディズニーがどんな人で、昔貧乏でアパートにネズミがいて、そのネズミと友達だったからミッキーマウスが生まれたのだという話を熱く語らなければならない。しかし、ここで絡まってくるのが、最近の米中対立である。
「ふん」「……」
中華民族はここがめんどくさい。何せ、中華って華は文化です。文化の中心って意味の名前の国の人は、アメリカ文化より自国の文化の方が上だと決めているのでディズニーランドなんてたいしたことないのです。
それでも行った。香港ディズニーランドに東京ディズニーランド。香港はサービスが残念だった。しかし、東京は園は綺麗だったし、サービスも良かった。
「やっぱり歓楽谷とそんな変わらない」
しかし、主人は頑固にディズニーを認めようとしなかった!ここで自分はどうしたか?
ほっといた。
一つアドバイスしよう。中国人はこういう人が多い。 →前言を撤回しない。
中国人は交渉の民族なので、前言撤回などという自分が不利になることは普通はしません。だから、是が非でも非を認めさせようとすると、徒労に終わる。ではどうすればいいのか?ある程度の迫力で『お前が間違ってたんだ!』と迫るのだが、本人が認めなくてもほっておけばいい。それでもある程度はですね、響いています。
そうか、ディズニーは世界のディズニーなのか
口では認めないけど、心ではこっそりちゃっかりそんなふうに思ってる。そして、次、ディズニーランドに行こうと言うと前ほど反対はしない。
ちょっと話題を変えよう。中国に長く住んでいて、中国人と結婚していると、たまに中国人にこんなことを聞かれる。
「一番好きな国はどこ?」「日本です」「中国じゃないの?」
内心、お前は馬鹿か?と思っちゃうんだけど、顔には出さない。丁寧にもう一度日本が好きですねと答えて終わらす。ちなみにみんながみんなこんな愚かな質問をするわけではないので、誤解しないでほしい。
よっぽど母国で酷い目にあった人でなければ、外国に長く住んでいるからといって母国より他の国を愛することなどない。どんなに長く住んでも、である。
長く中国に住んでいて、また、自分と同じくらい住んでいる日本人と話してみて感じることだが、そこに熱狂的に中国を好きな人はいない。かといってもちろん嫌いな人もいない。かなり冷静に中国と付き合っているように思う。
思うに国というのも一人の人のようなもので、日本にだって中国にだって長所もあれば短所もある。完璧な国などない。私は一部には短所もあると思うが、日本が好きで愛している。そして中国に関してはもっと冷静で、こういうところは好きだがこういうところは嫌いだなと思う。日本に対してはメガネが曇る。愛しちゃってるからである。中国に対してそれはない。
ないのだけれど、大事な隣の国である。日本の利益から言ってもできるだけうまく付き合っていった方がいい。中国とうまく付き合っていきたい国は、多いと思う。大国が別の大国と激しく対立し、そしてどちらかが世界で孤立へ追い込まれれば、より極端な選択肢を選ぼうとするかもしれず
それは勘弁してくれよ!っと思う。
さて話がおっきくなっちゃったので、ちっちゃく戻そう。私と主人である。最近中国のE VがBYDを筆頭に勢いがあるねっと、中国に長く住んでも日本を愛しちゃってる自分は、3歩歩いて
トヨタ……
と思い、もう3歩歩いて
ニッサン……
(以下略)ところがタイへ行ったら日本車だらけだったので、じんとした。それから、中国EVの発祥の地深圳へ戻ってきた。最近めっきりと中国車の増えた深圳の街を眺めながら、トヨタだってニッサンだって私が心配しすぎなだけで大丈夫だよなんて思ってる。
一方主人は
「タイは日本車ばっかだったね」「うん」「でも、BYDの看板あったね」「うん」
私のすぐ隣で、絶対こう考えてる。どうすればBYDがタイで台数を伸ばせるか。中国が好きか嫌いかと聞かれれば本音はどっちでもないなのだが、深圳には実は愛を感じちゃってる。BYDも嫌いではない。しかし、トヨタとBYDのどっちが好きかと言われたら、やっぱりトヨタだ。もっとも私はトヨタに勝手に愛を感じちゃってるが、トヨタは私を愛していないだろう。しかし、旦那は中国を愛しちゃってるし、トヨタよりBYDを愛してる。それで、悶々とBYDがどうすれば着実に海外市場を乗っ取れるかを考えているわけだ。
私のすぐ隣で
つくづく思った。国際結婚をして一つのベッドの上で右と左で寝ていても、こんなに近くにいるのに、こんなに違う!
結婚したばかりの頃はお互いにお互いの愛を自分が愛しちゃってる国に向けさせようとして無駄な努力をしていた。つまりは私は日本アピールをして旦那に日本を愛しちゃうように仕向けようとして、旦那は中国アピールをして私を中国に同化させようとする。
そんなものは最初だけで、そのうち何も感じなくなる。
そしてベッドの端と端で、真逆の経営戦術を繰り広げてはああでもないこうでもないと唸っている。
今日言いたいことの結論はこうだ。こんなん↑でも別に夫婦はやっていける。最初は旦那を日本化しようとし、私は中国か誘うになった。それが、お互いにどうでも良くなり、旦那が私の横で真逆のことを考えていても構わない。
「どうしてそう思うの?」「ううんとね」
旦那は貴重な捕虜のようなものである。自分のテリトリーで捕まえた動物だ。大切に扱い、中国人とは!の取材対象になってもらわないと。そう思って泳がせている。
そして今日も我々のベッドの左半分はBYDをどうやって儲からせるかのプランに頭をひねらすヒトと、やっぱりトヨタが好きな人が右半分に寝ている。
追記 トヨタが過去最高益到達してましたね。EVについて心配しすぎなんだろうなとニュース見ながら思う。私って、無駄に悲観的で心配しすぎなんですよね。
汪海妹2024.05.08