4話「先輩。」
仮入部が始まってから2週間。1年生も入部届けを提出し終え、仮入部も終了。
いよいよ明日の休日連は楽器決めのオーディションだ。
「みんな、今日もお疲れ様!そして、入部ありがとう。入部届けを出してくれた皆は正式に吹奏楽部のメンバーだ。これからよろしくおねがいします。それじゃ希望楽器をアンケート用紙に書いてください。この前も説明したけど、パートはオーディションで決めます。第3希望まで書いてもらって、できるだけそれ通りにしていきます。第一希望に絶対なれるってわけじゃないけど、それでも続けられるね?」
「はい!」
「うん、良い返事!それ、忘れないでね。じゃあ今日は解散。明日は土曜日だけど10:00に集合ね。あ、2年生は9:00、3年は今日の夜、塾がない人は来れたら来てください。鍵は僕が借りとくからよろしくね!じゃあ、気を付け、礼。」
「ありがとうございました!!」
「早く帰れよー、明日があるんだから。」
皆を早く帰らせて、勉強時間を確保しなければ。
「先輩。」
細い、すこし震えた声だ。小さい手で袖を掴まれてる。昨日の彼女だ。
「先輩、あの…その…。」
「なぁに?」
振りかえって、すこし身を屈め、優しい声で声で聞き返す。
「えっと…昨日はありがとうございました…。」
「あぁ、どういたしまして。」
やばい、やばい!耳元で「ありがとう」って!え、そのために呼び止めたの!?良い子すぎるでしょ!?軽くパニック。
「るりちゃーん!帰ろー」
「うん!すぐいく!あ、呼び止めてすいません。お疲れ様でした。」
「広瀬くーん!戸締まり!はやくしてー」
先生だ、数学の先生。最近子供が産まれたらしい。早く帰りたいのだろう。
「はい!いまいきまーす」