1話「良い子の楓くん」
僕の名前は「広瀬 楓」。
名前だけみて、よく女の子と間違えられるが、男だ。みんな「あっ」っていう。「思ってたのと違う」とでも思うのだろう。まぁ、当然だ。女の子だとおもったら男で、しかも背が高いとか。中3の春現在、170はある。細身。スタイルは良い方。まぁ、顔はそこそこに整ってるほうだろう。さすがに僕をみまでて女の子と思う人はいない。このちょうど良いイケメンをね。
これまでの15年間。良い子をしてきた。
ホントに、褒めて欲しいぐらい。
この調子だと高校もそこそこに良い学校を選ぶことになるだろう。
良い子をしてきて良いこともある。皆に好かれる「良い子の楓くん」をやってきてたので、大抵のことは中の上~上の下位はできる。委員会や部活にも精力的だ。テストは全てでトップクラスはキープ、得意科目では学年トップを争い、部活では吹奏楽部という人数が一番多い部活で部長を勤める。これは受験に大いに有利だ。
努力の賜物ってやつだな。
そんな僕でも、穴はある。
授業中は寝る。これまたうまいこと転がって、「授業をきいてないのにテストで点が取れる天才くん」みたいになっている。それに加え、完璧すぎることを防いでかわいい面を見せてる(ことになってる)のだ。
まぁ、本当は、家で勉強をし、楽譜を読み、筋トレをし、と、努力をしている分寝てしまうのだがね。
他にも弱点はある。筋トレはするものの、体育はできない。体が異常に硬い。ほんの数ヶ月前までやってた習い事もうまくいく一歩手前でやめてしまった。あと、絵心がない。美術でだけ2をとる。ヤバイ。
そんな、僕の黒いところを教えよう。え?もう充分にじみ出てるって?
そんなんじゃない、もっと黒いところだ。
俺は親がきらいだ。
他所からみれば普通に幸せな家族だろう。なんでもこなす兄、大企業で販売をする父、人当たりの良い母、あと、家からあんまりでない弟。一軒家に住んでる、そこそこに恵まれた家だ。
うちの母親は、外面は良い。だが、家では情緒不安定。出来ないことがあると怒る。「なんでそんなのもできないのだ?」と。「お前はできるのかよ?」とか言い返したいがそんなことできない。機嫌が悪いと「死ね」を連呼する。勝手に産んでおいて。衝突を避けるために良い子をやってるといってもいい。彼女はこの事を知るよしもないだろう。平均以下の反抗期をしてるから、普通の親子と思ってるはずだ。そのせいか機嫌がいいときは「かーくん」とか言って、小学生の息子のようにじゃれようとする。うざい。逆らうと、死ね、と叩かれる。だが一人暮らしには反対、部屋をつくることも許さない。管理下に置きたいのだ。欲しいのは「優秀で従順な子だもを育てる私」なのだろう。
次に父だ。あいつの給料は上がらないのか?毎月入ってくるお金は定額。子供が増えようが育とうが。ボーナスはどこにいったのか?そのくせして親のすねをかじり続けて40年近くなるのだ。家は祖父母に9.9:0.1の割合で出してもらって建てた。そのくせしてブランドもののスーツと靴はたくさん持ってる、車は二台持ち、毎晩飲んで帰ってくる。養育費の貯金なんてどうせない。
こんな親が嫌だから、俺は良い子でいるのかもしれない。
衝突を避け、叱られぬように。
あいつらのようにならぬように。
悩みももちろんある。ざっくりいうと「中身がない」ことかな。