冒険の始まり~まずは島から出なきゃね
【冒険者】この職業に憧れる若者はとても多い。自分の親が冒険者でなくても、自分に剣や魔法を操る力がなくても夢見てしまう。仲間と共に様々な場所、ダンジョンにモンスターにお宝、地位や名声、普通に暮らしているだけでは味わえない物の数々を想像してしまう。
漁業で生計を立てているどこの国にも属さない小さな島国『イムカ島』。
島全体の総人口が100人に満たないほどのこの島から今、冒険者として旅立とうとする4人の若者達がいた。
イムカ島は人々が暮らす『イムカ村』、あとは船着き場しかない。イムカ村から船着き場までは1本道だ。
4人の若者が村の方から船着き場へ向かって意気揚々と歩いていく。
先頭を歩いている少年の名前は『リク』大きなカバンを背負い、この4人の若者の中で一番大きな声で話をしている。彼は自分のすぐ後ろを歩いている『ツルギ』にこれからの冒険の話をするのに夢中で歩いてはいるが前は向いていない。
「ついに俺たちの冒険が始まるんだな!まだ冒険者にはなってないけどワクワクするよな!」鼻息荒く興奮している。
「そうだな、この島の外でどんなことが待ってるんだろうな」ツルギは興奮気味なリクの言葉に冷静に返す。ツルギはいつも冷静な少年だ、あまり自分の感情を表現するのは得意ではないようだ。彼の腰には父が行商人から購入した使い古された剣が装備されている。もちろん父には内緒で拝借したのだ。
ツルギの後ろを歩く女性『アルマ』はこのパーティのなかでは皆より2つ年上のお姉さんだ。自慢の蒼い髪をなびかせながらゆっくりとした口調で最後尾の『セン』に話しかける。
「ウフフ、いったいどんなステキな出会いが待っているのかしらね?楽しみだわ~」彼女もまた前など向いていない。
センはため息をつきながらこっちを向いて歩いている年長者のことを気に掛ける「前向いてないと転ぶぞアルマ」
センはパーティ及び周りに気をかけていた。勿論だ村の人間、あまつさえ両親にも自分たちが冒険に出るために島から離れるなんてことは伝えていない。もしこんなところを誰かに見つかってしまえば村に連れ戻されるだろう、そんなことセンも他の3人も望んではいないだろう。
この島には1日に1便だけ大陸本土から船が来る、4人はその船に忍び込み本土へ渡るつもりなのだ。
「リク、呑気におしゃべりしているが船には間に合うのか?」センは心配そうだ。船に乗れなくて冒険が終わるなんて御免だからだ。
「大丈夫さ!船着き場まではあと20分くらいだ!太陽が丁度真上(12時)になるまでには必ず着けるさ!心配するなよ!」と言いつつ歩くペースが少し早くなったリク。
「さあ!冒険の始まりだ!!」
「まだ村を出たばかりでしょ?」
アルマのツッコミなど聞かずどんどん船着き場まで歩いていく4人。
これから彼らの冒険はどのように繰り広げられるのか。
立派な王宮の1室。魔力により正確な時間を告げる時計のベルが鳴り続けている。ベッドの上の住人はまだ起きる様子はない。鳴り続けるベルの音を嫌ってか起きない主の代わりに頭の上の立派に伸びている獣型の耳が音を塞ぐように丸まっている。これで彼の安眠は約束されるだろう。
だがそれは長続きはしないようだ。
だれかが廊下を歩いてくる。ガチャガチャと金属の擦れる音が彼の部屋まで近づいてきている。
金属音が彼の部屋の前でピタリと止まった。
ドガーン!彼の部屋のドアが吹き飛ばされた。凄まじい音に部屋の主も飛び起き音の発生源に目をこすりながらむける。
「いつまで寝ているのだ!もう早朝訓練の時間は過ぎているのだぞ!!」
いつもの目覚ましベルの登場だ。