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異世界金融外伝 〜若き日の校長と謎の令嬢 朱夏の香りは青春の残り火〜  作者: 暮伊豆


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11/16

山岳地帯へ!

「まずは道中の浜辺で見つけた貝を使ったスープだ。味わって飲むがいい。」


「うめー! やっぱオメー凄ぇな! 俺の嫁になれよ!」


ドノバン……


「貴様ごとき田舎者にイザベル様が嫁がれるはずがないだろう。身の程を知れ。」


「あぁ? んーじゃあ何か? 王太子の閨なら喜んで馳せ参じるってかぁ?」


「ドノバンっ! 表へ出ろぉ!」


本当に仲の良いお二人ですね。


「マーシナルさん。落ち着いてください。イザベルさんはドノバンの元へなど行きませんよ。」


当たり前でしょう。身の程を知るべきです。


「ドノバン、あなたは数多くの女性と関係を持っています。それは悪いことではありません。ただ、イザベルさんに相応しくないというだけの話。失格です。」


「ジャックよぉ〜そりゃねぇーぜ。」


「そしてマーシナルさん。あなたとイザベルさんの連携攻撃は素晴らしいものです。あれこそ古い言葉で『阿吽の呼吸』と呼ばれるものでしょう。しかし、いかんせん魔力不足、実力不足、失格です。」


「何だと!?」


「ご自身でも分かっておられますね? あの時、シーサーペントの下に構築した氷壁のサイズが足りなかったことを。あれの面積が二倍もあれば、シーサーペントの頭部は一撃で消滅、今も私達は船旅をしていたことでしょう。もっともそのような魔法が使えない私が言えることではないのですがね。」


「ジャック、お前らしくないぞ? 何が言いたいんだ?」


ようやくイザベルさんが口を挟んでくれました。


「大したことではありません。イザベルさん、あなたに相応しい男は私だと言いたいだけです。私は三十年近く生きてきて、初めて女性に心を奪われました。あなたのように強く気高く、そして美しい方を他に知りません。ぜひとも伴侶になっていただきたい。」


「ジャック! 貴様もか!」


「マーシナルさんは黙っていてください。私はイザベルさんに話しているのです。」


恥ずかしくはありませんが、私は童貞です。いつか出会うであろう伴侶以外と関係を持つ気はありません。ドノバンとは違います。


「アッハッハ……私が強く気高く美しいだと!? えらく買いかぶってくれたものだな。ならばジャックよ! 私より強く、私より気高く、私より美しい女がいたら! そいつに乗り換えるのか!? おまけに私より十二歳ばかり若いぞ?」


「は? あなたは何をおっしゃってるのですか? 私はあなたと心が通じたことを、あの瞬間確信しました。私もクタナツの男、惚れた女性がいるならば、どのような手を使ってでも手にして見せます。あなたは私が嫌いですか?」


男女関係でパーティーが崩壊したという話はよく聞きます。しかし、そのようなことは些事です。


「ジャック、私はお前が好きだ。」


「イザベルさん……」


「ドノバン、お前も好きだ。お前は私の事情など一切考慮せず、気ままに話しかけてくれる。それがどんなに嬉しいか……」


「イザベルよぉ……」


「マーシナル、お前も好きだ。恥以外の何物でもない私の事情を知りながら、こんな所まで付いて来てくれた。ありがとう。」


「イザベル様……」


「そしてジャック。お前の戦闘力、判断力、そして王都の貴族どころではない理知的な振る舞いと知性。お前ほどの男に私では釣り合わない。私に恥をかかせるな。」


「イザベルさん……」


一体どのような事情があると言うのでしょうか。恥……とは……?


「イザベルよぉ、ヤベー事情があるってんなら言っちまえ。ジャックならどうにでもできんだぞ?」


「ふっ、ドノバンは単純でいいな。そうだな……帰りだ。帰りの船で話してやる。そこでなら話せそうな気がするのだ。」


こんな時、ドノバンの単純さが羨ましいですね。


「いい加減口を慎め田舎者! イ、イザベル様にも事情があるんだ!」


「あぁ!? 俺達ぁパーティーだろうが!? 仲間じゃねーんかよ!? 言えや! ジャックが解決してくれっからよぉ!」


ドノバン……あまり無茶振りをしないでください……


「まあまあ落ち着いてください。帰りのお楽しみにしようではないですか。ね? イザベルさん?」


「ふふ、そうだな。どうせ帰りはドノバンもマーシナルも船酔いで寝込むんだろ? ジャックとよろしくやってるさ。」


「けっ! 意地でも覗いてやるぜ!」


「貴様などにイザベル様は渡さん!」


本当に仲のいい二人です。

まあ、何にしても生きて帰らなければなりませんね。


山から吹き下ろす風が不吉な匂いを運んで来るような気がします……

大物の薫り、圧倒的強者の薫りを……

おかしいですね。夏だというのに鳥肌が止まりません……

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