~お仕事です、極悪卑劣な魔王様!~
人生、真面目に生きてきた。
誰にも迷惑をかけることなく。
幼少期は、
神童と呼ばれることもなかったが、
悪ガキと罵られることもなかった。
共働きの両親を困らせることなく、
きちんとこども園に通い、夜は早く寝た。
小、中、高校と平凡な公立に進み、
平凡な大学を出た。
就職だけは運が良く、
平凡な大学にしてはなかなかの企業に就職。
ホワイトな環境で、
良好な人間関係を築くことが出来た。
彼女がいた時期は、
高校二年のときと、
大学に入ってすぐの二回。
二回とも、よくわからないうちに自然消滅していた。
すごく愛されもしないが、
すごく嫌われもしない人間。
それが、自分だ。
今のところ、不満はない。
平和だ。
そして、平和であることこそ、
俺が真に望むすべてだった。
真面目にコツコツと築いてきた人生。
その成果としてやっと手にいれた、
ささやかだが真っ当な幸せ。
これでいい。
これこそが我が人生。
そう思っていた。矢先。
「!!!!!」
甲高いブレーキ音。
責め立てるような激しいクラクション。
いかにもヤンチャな奴が運転してそうな白いワゴン車が、
真面目に横断歩道を渡り終えようとしていた、
俺をめがけて突っ込きた。
(あ、これは勝てないよな…)
それが、
人生最後に思い浮かんだ言葉だった。
そして。
・・・
・・・・・
・・・・・・・。
「起きて下さい、魔王様!」
「今日も世界征服を目指して悪いこと沢山するんでしょ?」