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遥か遠い世界で  作者: 菊璃(きくり)
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青色の空



次の日、飯田千遥の熱は下がらず1人での登校となった。


「忘れ物ない?」

上半身を起こし僕に問いかける


「大丈夫だよ。ちゃんと寝とけよ?」

タオルを絞り飯田千遥の額に置く。

本当は、学校なんて行きたくない。

飯田千遥のいない学校に僕の居場所はないんだ。

だから、消えたくて消えたくて消えたくて…仕方がない。


「太陽!!」


はっと、我に返り飯田千遥の目を見る。

じっと僕を見つめる。


「太陽は1人じゃないんだからね!」



僕は…1人じゃ…ない。


「大丈夫だよ。遅刻するからそろそろ行くね」


何が大丈夫なんだろうか。

自分に嘘ばっかりついている気がする。


「それと、もう1つ!」


なに?飯田千遥を見ると彼女は僕の方をしっかりとみている。


「太陽は、大丈夫以外の言葉を知らないの!?」


飯田千遥の口調が強くなる。

きっと彼女は僕に怒っているんだ。

彼女には全てお見通しなのだろうか。

だけど、飯田千遥には関係の無い事だ。


「遅刻しちゃうから行くね。いってきます!」


飯田千遥に今の自分を知られるのが怖い。

そそくさに家を出た。


学校に行くべきなんだろうか。

もしかすると、今日は森山志穂さんが来てて、そっちに集中するかもしれない。


こんな事を考える、僕はなんて卑怯なんだ。


飯田千遥と一緒に登校しない学校はいつもより恐ろしく感じる。

ドクンドクンといつもより速度を上げて動いている僕の心臓はまるで、行くなと言っているようだ。


ゆっくり教室に近づき扉をあける。

すると、一斉に僕に視線が注がれる。


「今日もはじめっち1人なんだ!ねー、しほっちこいつの机に帰れって書いてくれない?」


えっ!?森山志穂さん来てるの!?


集団の中から現れた森山志穂さんは震えているように見えた。

ペンを中島里奈から渡されちらっとこっちを見る。

まるで助けを求めているようだが知らない。

僕は何も知らない。関係ない。

消えたい、消えたい、消えたい。

この場所から消えていなくなりたい。

どうして僕がこんなめに合わなくちゃいけないんだ。なんで、僕なんだ。

なんで、僕なんだ。

僕の居場所は…ここにはない。


慌てて教室を出ると中島里奈の笑い声が聞こえたが無視をした。

行くあてもなく走る。


ガタンガタンと電車が通る音が聞こえる。

きっと電車に引かれれば痛みもなくあっという間にこの世界から消えることが出来る。

そうしよう。それが1番簡単にこの世から消えることができる方法だ。


最寄りの駅のホームに行くと、人が多く、駅員さんがソワソワとしている。


何かあったのだろうか?


「死ぬなら人に迷惑をかけない死に方をして欲しいよねー。」

「ほんとね、人身事故ってほんと困る」

大人の女性が喋っている会話が聞こえた。


誰かがホームから飛び降りたらしい。

僕のようにこの世界から消えたいと思っている人はいるんだ。

だけど、関係の無い人に迷惑がかかってしまう。

なら、関係のある人に迷惑を掛けてこの世から消えよう。

そう、それは学校だ。


授業が始まっている学校にこっそりと侵入をし、屋上に向かう。

幸い誰もいないようだ。


すっとそよ風が通り過ぎる。


柵があるが登る事は可能だ。

カバンを置き、柵によじ登る。

反対側に降りると校庭の様子が良く見える。

手を広げ深呼吸をする。


僕が消えても悲しむ人なんていない。

僕の居場所なんてどこにもない。

僕がいなくても…悲しむ人…なんて…い…な…。

【太陽一!いい名前でしょ?】

【太陽のしたいようにすればいい】

【太陽は1人じゃないんだからね?】

【太陽!!】

【太陽は、大丈夫以外の言葉知らないの?】

どうして…あいつの顔が出てくるんだよ。

あいつは…僕の記憶を消した張本人で…。

僕の…僕の…。

あれ……あいつは僕にとって……。

すっと流れる涙に我に返り柵を登ってカバンを拾い急いで家に帰宅する。



ガチャ。

「おぉ!?早かったね?どうしたの?」

息を整える前に洗濯物を畳んでいる飯田千遥にいう。


「千遥!助けて!」


彼女は一緒驚いた顔をしたがニコッと微笑み、僕の頭にポンと手を置いた。


「大丈夫以外の言葉言えたね。ちゃんと逃げずに向き合えたね」


えっ…。


「さぁーて、風邪も治ったし、学校行きますか」


学校…。


「僕は…行きたくない。」


「何言ってるの。この世界はプログラムで出来てるって言ったでしょ?」

自信満々にウインクをし人差し指を立てる。

千遥がいればなぜか安心する。

何も怖くない。


けど、どうするのだろう?


急いで千遥は準備をすませ、いくよ!

と、僕の手を掴んだ。


優しい手、あたたかい温もりだ。


太陽はすっかり登っており学校に着いたのはお昼休みの時間だ。


下駄箱で靴を履き替えているとやっぱり怖くなりその場に立ちすくんでしまう。


「大丈夫、私がいるから!」


そう言ってくれるとなぜか頑張れる。


うんと、頷き一緒に教室に向かう。


千遥がいきなりガラガラと扉をあけ、僕の手を掴み先に中に入るように促す。


中に入ると一斉に僕に視線が集まる。

もちろんそこには中島里奈の姿もある。

息の詰まりそうな空間。


「おはっよー!」


明るく、僕の背後から現れたのが千遥。

僕の肩をポンと叩き、まるでよく頑張った。後は任せとけと、言っているかのようだ。


「ち、ちはるっち!元気になったの?」


白々しい。

さっきまで僕を睨みつけていたくせに、笑顔を作っている。


「もうこのプログラムは終了だ!ミッションクリアおめでとう!太陽一。」


えっ??

千遥は僕を見て微笑みながらまたちょっと寂しそうな顔でそう、言った。


僕の目の前に来たと思うと僕の手を掴む。

「一旦戻ろうっか」


そう言うと、地面に黒い穴があき、吸い込まれるように落ちていく。

これは、前も体験したことのある穴だ。


目をつぶっていたらしくゆっくり目を開けると緑色の草原が辺り一面に広がりすっと僕の頬を風が通り過ぎていく。


懐かしい場所だ。

その隣で黄色い髪をなびかせている千遥がいる。













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