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遥か遠い世界で  作者: 菊璃(きくり)
3/5

赤色の空



森山志穂に声をかけてからというもの、特に状況が大きく変わったという訳では無い。

ただ、廊下ですれ違ったりする時にニコッと微笑んでくれる。


「へー、森山さんと友達になったの?」

いきなり後ろから話しかけられビクッと少し驚いた。

飯田千遥は意地悪そうに笑っている。

「そ、そうだよ。」

悪いことをした訳では無いと思うが照れてしまい早歩きで移動教室に向かう。



次の日の朝、飯田千遥は風邪を引いてしまい1人で登校することになってしまった。

「1人で登校できる?」

ベッドに横になっている飯田千遥のおでこに冷たいタオルを置く。

「大丈夫だよ。そのくらい1人でできるよ」

森山志穂と友達になってから自分に自信がついたのか前ほど学校に行くのが苦ではなくなった。


「それじゃーいってきます!」

そう言い残し家を出た。


教室に入るとクラスの目が僕に視線を移す。

「お、おはよー。」

いつもとは違う空気にビビる。

森山志穂は来ていないようだ。

しかし、森山志穂の机を囲いまたあの言葉を書いているのだろう。

特に気にかけず自分の席を見た時さっきまで持っていた自信はどこに消えたのだろうか。

まさか、自分の机にも誹謗中傷の言葉が書かれているなんて誰が予想できただろうか?


「はじめっちぃー。あの志穂とお友達になったんだって?あははは」

里奈が笑うとみんなも笑いだす。

僕には関係の無いことだ。

【死ね】や【消えろ】と大きく机に書かれていて僕の心は落ち着かない。

なぜ、僕がこんな目にあわなきゃいけないんだ。

「ねぇーなんか言ってよはじめっち?」

里奈を見ると明るいツインテールの少女は悪魔化しみんなを率いているようだ。

「今日私たちの絡む相手がいないんだー。はじめっちにたくさん絡んであげるね?」

ニコッと微笑むとゾッと鳥肌が立つ。

ここにいちゃダメだ。


僕は教室をでてとりあえず図書室に向かった。

あの机には森山志穂の、姿はない。

きっと彼女はこんな思いをずっと抱えたまま頑張って学校に来ていたのだろう。

どうしよう。どうすればいいんだろう。

焦りから考えたくても頭が回らず真っ白だ。

逃げたい、逃げたい。

逃げたい、逃げたい。

逃げたい、逃げたい。

こんな世界から消えたい。


そんな言葉が脳内に何回も再生される。


学校を抜け出しブラブラと行くあてもなく歩く。

何となく河原に行き、ゆっくりと流れる川を眺める。

そよ風が頬をかすめる。

あの緑色の草原もこんな感じだったな。

のんびりと時間が過ぎ幸せだった。

人と関わるとろくな事など起きない。


近くの図書館で時間を潰し下校時間になる頃僕も帰宅した。


「ただいまー。」

ガチャと扉を閉め中に入ると飯田千遥はぐっすりと寝ている。

飯田千遥を見ると何故か嫌なことも忘れ心が軽くなる。

額のタオルをそっと取りかえる。


「んっ…」

タオルを絞っている音で目が覚めてしまったのか、飯田千遥が起き上がる。


「起こしちゃったね。体調どう?」


「まだ、熱があるのかボーとする」

そういい、また横になる。


冷たいタオルを飯田千遥の額に乗せる。

「あー気持ちいい。1人学校はどうだった?」

えっ…思い出したくない記憶。

あんなイジメを森山志穂は耐えてたんだ。


「大丈夫に決まってるじゃん!」

飯田千遥に知られたくないのか嘘をついた。


飯田千遥はため息をつき、体を起こす。

「太陽、ちょっとここに来て座りなさい」


なんだよ、と思いつつ自分の部屋に行く足を止めた飯田千遥の布団の横に座る。


「太陽は、大丈夫以外の言葉を知らないの?」


えっ…。

飯田千遥には、まるで全て分かっているかのようだ。


「時には甘えて欲しいなーなんて。大丈夫なら私も安心したよ!」


そう言うと、また横になる。


甘える?どうやってだよ。

僕は甘え方など知らない。


すっと立ち上がり自分の部屋に向かった。




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