表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か遠い世界で  作者: 菊璃(きくり)
2/5

黒い空




僕は飯田千遥と出会い草原の世界から違う世界につれてこられた。

ここは、昔僕がいた世界と似ていて違う世界。

いろんな設定をプログラムされているらしい。

なぜか学校に通い学校が終われば飯田千遥と共に近くのアパートに帰宅する。


「お腹すいたね。すぐご飯作るからね!」

動くたびに黄色い髪が揺れそれを見るとなぜか癒されてしまう。

エプロンを制服の上から付け家事を始める。

きっとプログラムで同い歳になっているだけで本当はかなり歳上の気がする。

この世界に来てはや1ヶ月が経っている。


「太陽はもう学校慣れた?」

初めてあの学校に行った時とても胸が苦しかった。それは今も変わらない。朝起きて学校に向かい教室に入るとやはり痛む。

みんなの視線が時々怖い。

目を合わせないように教室に入り授業中以外はうつ伏せ状態だ。



「なんとか大丈夫だよ」

そう返事をし、横になる。

白い天井を見上げすっと目を閉じる。

トントントンと食材を切る音、ジュージューと炒める音、ホンワカいい匂いが漂ってくる

この時間があの草原にいた時みたいに幸せだ。


「大丈夫なら良かった。」

料理をしながら飯田千遥が答える。


当たり前になっていた日常。

その日常が突然当たり前では無くなるのはそう難しくはないということを僕は知ることになる。


何気なくいつものように飯田千遥と登校し教室に入るといつもとは違う思い空気が漂っている。

「おはよー!はるっち!はじめっち!」

そんな空気はしてしていないと思わせるかのように、元気よく挨拶をしてくる佐々木里奈。

相変わらず元気だ。


「おはよー」

とりあえず挨拶は返し自分の席に座る。


「なにかあったの?」

飯田千遥は里奈に訪ねた。


「久しぶりに志穂が登校してきたからみんなで絡んであげてたんだ!」


「そうなんだ。」

飯田千遥は僕の方をちらっとみた。

まるで、一緒に絡みに行かない?と言っているかのようだ。

僕はその問いかけに目をそらし机にうつ伏せになった。

わざわざ絡みに行くなんてごめんだ。


キーンコーンカーンコーン

HRが始まるチャイムが鳴り響く。

その音にビクッと反応しゆっくりと上半身を起こす。


「体調が悪いなら保健室いきなよ?」

後ろに座る飯田千遥が心配そうに問いかける

ただ単にこの空間が嫌なだけだ。


「大丈夫だよ。」

そう、返し今日も、授業を受ける。


休み時間になると教室はいつも騒がしくなる。

ふと、後ろを振り向くと窓際に森山志穂さんが読書をしている姿が目に入った。

丸ぶちのメガネをかけている。


「彼女、学校ではずっと読書をしているの。」

飯田千遥は僕にそう伝え御手洗なのか教室から出ていった。


別に読書をしていようが、何をしていようが僕には一切関係の無いことだ。


「おいっ!次移動教室だぜ!」

教室の男子がみんなに聞こえるように言うと

ザワザワと移動を開始する。

「私達も行こうか」

飯田千遥に誘われ準備をし立ち上がる。

カツカツと廊下を歩く音、ギャーギャーと騒ぐ声が時に自分をイラつかせる。

「どうしたの?なんか、元気ないね?」


元気?そんなの初めから僕は持っていない。

「あっ、ごめん。筆箱忘れちゃった。先にいってて!」

静かな所に行きたかった。

飯田千遥の返事を聞く前に僕は駆け出していた。

行く宛もなく教室に戻る途中で開始のチャイムが鳴り響く。

そんな事は無視をして教室の扉を開けるとそこには森山志穂が窓をあけ外を見ている姿があった。

すっと風が僕を通り過ぎていく。

森山志穂は僕に気づきゆっくりと振り返る。

彼女の目は赤く腫れている。


声をかけるべきかかけないべきか…それが問題だ。

「ど、どうしたの?」

泣いている女の子を放ったらかしにするのは良くないと思い声をかけてみる。

ん?彼女の机を見るとそこには【死ね】【学校にくるな】【読書は家でしろ!】【気持ち悪い】など、誹謗中傷の言葉がぎっしり書かれている。


これは?まさか?ーーーーーいじめ?



彼女を見ると涙が溢れており教室から勢いよく出ていってしまった。


僕はどうすればいいのだろう?

見なかったことにしよう。

それが、1番だ。


本当は教室で1人黄昏たかったが気が変わった。

持っている教科書と、筆箱を握りしめ既に授業が始まっている教室に戻る。


その日の夜、僕はあの光景がずっと頭の中に残っていた。

「どうしたの?なにかあったの?」

飯田千遥が作ってくれたご飯を食べていたはずなのにいつの間にか動作が止まっていた。

「別に…何も無いよ。今日も美味しいよ!」

いつものように食べる。



「仕方がない。私から1つ助言しよう!」

人差し指を立てウインクをしそう言い出す。

どうせろくでも無いことだろう。


「太陽が動きたいように動けばいい。したいようにすればいい。」

え?

予想外のことを言い出し、手を止める。



「せっかく違う世界にいるんだもん。やりたいようにすればいいじゃない」


僕のやりたい事をする。

僕が今やりたいことは…1つある。

ただ、それは今まで避けていたこと。

飯田千遥、たまにはいいこと言うじゃん。



「おはよー!」

またいつものように飯田千遥と登校する。

教室に入り1番に森山志穂の席を見る。

今日もみんなに絡まれているようだ。

「あっ、はじめっち!はるっちおっはよー!」

里奈はいつも元気だ。



放課後僕はどうしても行きたいところがあった。

それは、図書室。

下校も一緒にするのだが今日は飯田千遥に用事があるため先に帰っていて欲しいと伝えてある。


たくさんの本が並び奥に進んでいくと机が3台ほど並んでいる。

そのうちの1台の端にやっぱり彼女はいた。

なんて、声をかければいいのだろう。

ここまで来て今更そんな事を考えるのはきっと待ちがっている。

よしっと、腹をくくり読書をしている森山志穂に近づく。


「あ、あの。志穂さん、僕とと、友達になりませんか?」

な、何をいきなり僕は言い出しているんだ!!

順序があるだろーー!

森山志穂も驚いたのか、読んでいた本にしおりを挟み立ち上がる。

ペコッと頭を下げて下を向きながら歩き出したため、肩がぶつかり持っていた本が落ちた。


「あ、ごめん。」

落ちた本を拾い森山志穂に返そうと顔を見ると彼女の目からたくさんの涙がこぼれている。

ぼ、僕が女の子を泣かせてしまった!?


「あぁーえーと、そのーなんと言えばいいのかなー。あはは」

笑いでごまかそうとするが涙が止まる気配はない。


あぁー他人に関わらなければ良かった。


「ありがとう…とても嬉しい!」


森山志穂の、声を僕はこの時初めて聞いた。

とても、可愛らしい声ではないか!!


【ありがとう】


この言葉は僕の痛む胸を一瞬和らげた。


他人に勇気出して関わって良かったと、僕はこの時思った。



しかし、この行動によってこのプログラムの世界は大きく運命の歯車を変えてしまうなど知る余地もなかった。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ