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7歳児リーデル

高明がリーデルになって7年が経った。森の中での暮らしも慣れて、今では狩りの手伝いをできる。獲物を見つけるまでが高明の仕事で、戦いには参加させてもらえないが。


「リーデルは獲物を見つけるのが上手いな。」


「恥ずかしいって言ってるだろ親父。」


この世界での父、グレゴールがリーデルの頭をなでるがその手を躱す。反対の手では今回の成果である大きな鳥を担いでいる。


『ほら!ほら!便利だったでしょう?』


『確かに。』


リーデルは360度の視野に加え、三人称視点で周囲を見渡すことができるので、当然獲物の発見が得意だ。しかしグレゴールはしばしばリーデルよりも早く獲物を見つける。この森での生活が長いだけある。やはり経験の差は偉大だ。


「リーデルも大きくなったわね。あんなに小さくてかわいかったのに。今でもかわいいけど!」


ララが木の根元の穴から顔を出す。リーデルの姉、ララも今では17歳で髪型は短いままだが、出るとこは出てしまるところはしまった男の理想のような体型だ。腹筋はバキバキだが。グレゴールや近所の皆さんと比べると劣るものの、たくましく育っていた。今もビーバーのような生き物を捕まえて穴から出てきた。


「お姉ちゃんお疲れさま。」


「ありがとう!」


ララはそう言いながらリーデルに抱きついた。


『ヤッフウウウウ!』


リーデルは歓喜の叫びを心の中に押しとどめるも、精霊だけは知っている。精霊が呆れた表情で言う。


『貴方元の年齢16にこちらでの年齢5を足したら21なのですが・・・・・、それについてはどうお考えですか?』


『俺の心はまだ少年なんで。』


『・・・・21歳童貞。』


『あっちとこっちの年齢足すのやめろ!』


精霊にも年齢の概念があるのだろうか。





しばらくしてリーデルは猪のような生物を見つけた。体長2メートル、体重300kgはありそうだ。見るからに頑丈そうな鼻と生半可な刃物ならものともしない剛毛で覆われている。まだ木の上に隠れているこちらには気づいていない。


「リーデル、あのデカシシを自力で仕留めてみろ。」


「わかった。」


なんとも安直なネーミングだが、いちいち突っ込んでいると日が暮れるのでリーデルは弓を左手に持ち、右手で矢をつがえた。鏃には麻痺系のスライムが塗ってあり、急所に当たらなくとも何本か当てれば獲物の動きが鈍くなっていく優れものだ。弓はグレゴールが作ったもので大きさは1.4mほど。10cmだけリーデルより長い。アウフラウフ大森林の木を素材にして作られているので丈夫だが、弦を引くのにかなりの力がいる。


「<頑強化>、<運動能力強化>」


二つの魔法を使った。頑強化で矢を強化し、運動能力強化で弦を引きやすくする。二つともよく使われる魔法だ。放った矢はデカシシの左目に刺さった。デカシシは驚いて暴れるが致命傷にはならなかった。


「やっぱ丈夫だな。」


リーデルが次の矢をつがえようとしたときララとグレゴールが顔を見合わせてにやけている。そしてグレゴールがリーデルの右肩に手を置いた。


「ん?」


「何事も経験だ。」


「がんばってねリーデル!」


『え?』


グレゴールはそう言うとリーデルを木から突き落とした。リーデルは受け身をとって着地には成功したが、音を完全に殺せなかった。デカシシはその音を聞くや、こちらへ突進してくる。まだ麻痺は効いていそうにない。


『こんなところで死なないでくださいよ!?』


『上にいる二人に言えっての!』


そう言いながらもなんとかデカシシを躱し、矢を番える。直線的な動きしかしないのでよけるのは難しくないが、ぶつかる木をへし折る威力だ。一度当たれば死にかねない。リーデルは通り過ぎたデカシシが振り向く前に矢を放つ。しかし当然のように体毛で弾かれてしまった。デカシシはひるんだ様子もない。


「うおっ!」


再び突進を躱して矢を番える。デカシシは麻痺が効いてきているようで少し動きが鈍くなっている。今度はデカシシの振り向きざま、右目を狙った。


「<頑強化>。当たれ!」


矢はデカシシの右目に当たり、デカシシがやみくもに暴れる。リーデルは少し離れて、弱るのを待った。少ししてデカシシが立てなくなってから腰に帯びていた剣を抜いて頑強化をかけ、のどにとどめを刺した。


「よくやったリーデル。」


グレゴールとララが木から下りてきた。


「わたしも安心して森の外へ行けるよ。」


「森の外?」


「うん。森の中もまだまだ知らないところだらけだけど、お父さんとお母さんの故郷を見てみたいの。王様のお城とかも見たいし。」


「そっか。」


「なにより結婚相手探さないと。わたしの同年代の人間の男が村にいないからね。」


「・・・まだ早くないか?外は危ないぞ?」


どう考えても森の中の方が危険だ。グレゴールは娘が遠くに行ってしまいそうで寂しそうだがララの意志は固い。


「大丈夫よ。必ずいい人見つけるわ。」


『・・・・なぜ俺とお姉ちゃんの年をもっと近くしなかった?』


『そんなことしたら貴方の実際の年齢15+17で32歳ですよ?犯罪臭がすごいです。』




読んでくれてありがとうございます。

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