リーズ・ナブルはサベクの街へ
どうもアゲインストでございます。
遂に到着、サベクの街。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
サベクの街。
確か国境の防衛を任されている領主が納めるサベク市の街であったか。
ただでさえ越境してこようという奴等への監視で忙しいというのに、今度はダンジョンという問題を抱えることになるとは、幸運とは言い難い状況だろうな。いつもとは段違いの人の波が押し寄せる、それに混じって悪さを働く奴がこうして現れているのだから。
俺はライドたちの後ろで進む、自分の馬車の揺れの中でこれから赴く土地の情報を軽く反芻しながら、それを知っていたはずの男に対して質問をすることにした。
「なあ」
「…はい、何でしょうか」
御者の男。
こいつがこの事態について知らないはずがない。正規のギルド員以上に裏に事情にまで精通していなければ、あの上司の要望に答えることはできないだろうからな。それを見出だされたからこそ、こいつは俺を運んでいるのだ。
「ダンジョンだ。どうなってる」
「…そうですな。サベクより西、歩きで半日といったところに数日前より出現したとか」
「……聞いてねぇぞ、俺」
「…今のあなた様には不要であるかと思いまして。まだ完治はしておられない様子、わざわざ戦いに望むようなお方でもないので実地で判断していただこうかと」
こいつ……。
そういう情報を出し渋るとか、俺にとっては死活問題だぞ。
「確かに次の街じゃあ体を休める目的だったがよ、それだってこんな問題があるってんならもっと別のルートがあっただろうが。これじゃあ休むどころじゃねぇ、絶対面倒が起こるぞ」
「…まあ、そうでしょうな」
「なら」
「…よろしいではありませんか」
「……何考えてやがる」
馬を操る後ろ姿からは全く意図が伺えない。どう考えればこれがいい機会と言えるのか。
「…ダンジョンの出現は、同時に様々な者たちを呼び寄せます」
「……」
「……あなた様のお眼鏡にかなう相手が、居るやもしれませんなぁ」
「……そういうことか」
なるほど、そういうことなら話は別だ。
確かにこの選択にはそれなりに納得できるものがある。
「何かを得ようとするなら、リスクを許容するべき、か」
これは前から考えていたことだが、旅の同行者についてどうするべきかということがある。
俺が旅をしているのは、極めて個人的な理由があるからだ。つまり、ほとんどの相手と共通の目的がないということになる。
俺はこのことから、仲間だとかいうのを募ることはないと考えていた。しかし、やはり俺自身の決定力のなさはなかなか改善できないでいた。
今それの調整に取りかかっているが、それにしたってもう少し時間が掛かる。どこまで通用するかを知らずに使うのもあまりいい考えとも言えんしな。
「全部実地で確かめる、ってことか」
「…左様で」
厳しいねぇ……欠片も甘やかしちゃくれないってか。
相変わらずのスパルタか、ここまで干渉してくるかよ。
「いいさ、乗ってやる。火の輪潜りは得意なほうだ」
「…はて、その程度で済みますかな」
不吉なことを言いやがる。
だがいいさ、乗り越えるだけだ、苦難など。
ダンジョンか、いい試金石となってくれるなら、お前の存在も受け入れよう。
それが歪な存在であっても、な。
日の陰りが見え始めた頃、遠く平地の中に人工物が見えてくる。
大きく剛健な作りの外壁は、外敵に対して威圧感を与え攻め込ませる意思を挫くようである。
しかしそれは、内側の住民たちを守るために必要なものである。この街だけではなく、国境を守るそれはもっとすごいものであるのだとか。
「―――リーズさん! ちょっといいですか!!」
俺がサベクの守りについて考えていると、前を進んでいるライドから呼び掛けがあった。何があったのかと御者台の方へと移動する。
ライドは馬車の後ろから体を乗り出してこちらに向かって叫んでいる。
「どうした」
「優先者用の出入り口があるのでそちらに行きましょう。 時間を掛けずに中に入れます」
「わかった。 先導頼む」
「はい!」
通常の出入りとは別に、商人や依頼を受けた冒険者などを優先して出入りさせる専用の門があるというのだろう。今は人の出入りが増加しているし、妥当な判断と言える。
道を逸れ、大勢が並んでいる大門からいくらか小さい方の門へと向かう。イナナキの奴らと同じような装備をした二人の警備兵が俺たちを出迎えてくれている。
「何用か!」
「僕たちは冒険者パーティー「星の歩み」です。盗賊被害に関するの依頼を受けていたのですが、少し事情がありまして」
パーティーを代表してケインが率先して動いている。他の子らもそれぞれの役割を果たそうと動いていた。
荷台に運んだ盗賊たちを見せ、後ろについて来た俺の説明をしている。こちらにも一人来て、説明を求めてきた。
「失礼、お名前は?」
「リーズ・ナブルという、冒険者だ」
「どうも。私はベイズリー、早速ですいませんが彼らが連れてきた盗賊たちの親玉を見せていただけますか」
「分かった、少し待ってくれ」
馬車の外で話に応じた俺は、積み込んでいた盗賊のボスを担いで持ち出した。
「短い付き合いだったな」
「……次はヘマしねぇ」
「意欲は認める、今度はマシな奴になるんだな」
「……出来たら苦労はしねぇんだよ」
髭面の男は苦悩をにじませた表情で俺を睨んでいた。こいつにもやむにやまれぬ理由があって盗賊になどなったのかもしれないが、それに同情してやるのは俺の役目ではない。
「言っちゃあ悪いが、元は孤児でね。ここまでくるのには苦労したよ」
「おめぇ……」
「だからって訳じゃないが、まあ生きてるだけその幸運を喜びな。死んでちゃ何もできないんだからよ」
だが、不幸自慢なら負けることはないだろう。
人生の教訓とでもいうべきものを少しばかり溢して、おとなしく連行されていく男を見送った。
男は憑き物が落ちたような表情で粛々と街の中へと消えていく。増員された警備の奴らに囲まれて、他の盗賊たちも共に消えていった。
「―――ご協力感謝します、リーズ殿」
「何、火の粉を払っただけだ」
「盗賊たちの賞金等についてお話がありますので、そのまま中へお願いします」
「わかった」
丁寧な誘導に従って、俺は少年冒険者たちと門を潜った。
ダンジョンによって変化する街、サベク。
ダボンナ最後となる街へ、俺は第一歩を踏み出した。
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