トトン、計画を知り賛同 ハリマ、疑心を持つも押しきられる
どうもアゲインストでございます。
語り手が代わり、トトンとハリマから裏話を語ります。
今回はそんなお話。
今年最後の投稿でございます。
それではどうぞ。
それでは彼女たちが来るまで説明を続けますか。
というトトンの台詞から、また解説が始まった。
それはドイルの話から遡った時間軸の話であり、かなり始まりのあたりの話となるらしかった。
「私が彼から話を聞くことになった経緯ですが、難しい話ではありません。私がいつものようにドイル夫妻の診察をしていた時、彼が来たことから事態は動いたと言っていいでしょう。
彼は昼にも来てくれていましてね、マチルダさんとお見舞いにきてくれていたんです。
今回は彼一人で来てくれましてね、まあ何なんだろうと思って話を聞いた次第なんです。
『おや、リーズさん。こんな時間にどんなご用で?』
『どうも、トトンさん。いや、ちょいと有益なお話をしようと思いましてね』
といった具合にお話を聞いていたんですが、その話の内容というのが自分が直面し続けてきた問題を解決するための光明となるのが話を聞く内に理解できたわけなんです。
是非参加させてほしいという自分に、リーズさんはこう言いました。
『実をいうとまだ協力者がいるんだ。できればギルドに話を通せるような人物がいるといいんだが』
と。
自分には都合がいいことにその人物というのに伝があるものですから、医師の一人を使いに出してその人を呼んできてもらったんです。
それがハリマさん、というわけですね」
彼独特の話し方で淡々と口を動かし続けるトトン。
このまま話を続けるのか、というところで話に出てきたハリマが説明を引き継いだ。
正直トトンの話し方はどうにも馴染めないベンにはその判断がとても助かった。
「始め、私はドイルさんたちがいるところの医師が来たとき最悪のことを予想した。
その彼がやけに急いでいたのが原因といえば原因なんだが、もしやお二人に何かあったのかと思った私は駆け足で治療院へと急いだ。
まあ、それは取り越し苦労というものだったんだがな。
いつものようにベッドの上で眠っている二人の姿を見たときには心底安心したが、問題はその後にあったのだ。
まあ、言わなくてもわかるだろうがリーズ・ナブルのことだ」
ハリマさんもまた、誰にも知られない内にリーズと関わっていたようだ。
あの夜のことも、おそらく計画の内だったんだろう。
だからリーズはクランの建物の中に入ることができたのだ。
「てことは、ハリマさんがギルドに掛け合ったってことですねよね。大会を開くために」
「その通りだ。だがそれも、私一人でできたことではない。そもそも、最初私はそのことについてはやる必要のないことだと彼に断っていたのだ」
「は?」
あ、いや。まあそうか。
いくら事情があるとはいえ、この人が最終的に街に混乱が起こるようなことをするとは思えない。
「明日開催する、などどう考えても無理な話だ。住民たちに話を通すのにも時間が掛かるというのに、ましてやギルドがそのようなことをする理由がない、とも言ったな。領主も許すわけがないとも話した。そうしたら奴はこう答えた。
『もう開催は住民に広まっている。他二つも問題なく話を聞いてくれるだろうさ』
とな」
まるで確信があるかのような話し方である。
ベンはリーズがどうしてそういったのかが気になったが、ハリマの話がまだ続くようだったので口を挟むことはしなかった。
「その時の私の猜疑心は凄いものだった。
ケインのやらかしを部下から聞いていたのでリーズという名前は知っていたが、だからこそこの男がこの街の者に顔が利くはずがないと思っていたからな。
そのことを指摘すれば、奴は悪巧みをするような顔で、
『俺がただの冒険者だったなら、そうだったろう。だが、そうはならない理由がある。話すと面倒だからここでは語らないが、絶対におれの提案は通されるはずだ』
とな。
納得したわけではないが妙に自信満々なのが癪に触ってな。ならばギルドに話に行こうとなったわけだ」
結果はこの通りである。
リーズが話したように、ギルドどころか領主すらもゴーサインを出したわけだ。
何があったのかは分からないままで謎が増えただけだが、リーズからしてみればこの展開は予想の範囲内だったのだろう。
見事ハリマも味方につけ、こうしてドイルを治療することにも成功しているといる。
彼らの様子を見る限り、全て順調に進んでいるということが伺える。
「それで、その後はどうなったんです?」
「うむ。大会が開催することが決まり、私たちはドイルさんたちの治療を始めることにした。とはいっても、リーズ・ナブルがトトン殿に頼んでいたようで二人は別のところに運び出されることになっていたのだ。その間、私と奴はお前たちがいるクランの部屋へと向かっていた。
奴から話を聞かされていたからな、お前がその時どこにいるのかは容易く検討がついていた」
話、というのは修行というか荒療治のことについてだろう。果たし合いについても分かっていたような口ぶりだ。
ということは、あのことも分かっていたのだろう。
「リーズは、知っていたってぇのか」
「そうなるな。奴は敏い男だ、当然ナイフのことも理解していた」
「……そうですか」
気付かれない、とは考えていなかったがナイフ一本でここまで行動が読まれているとは。
そこまで分かりやすかあっただろうかと自分の行動を振り返り、あそこまでケインにこだわりを見せていたのであればそれは分かるだろうな、と内心で納得するベン。
「ちなみにいつ気づいたんです?」
「初日の夜だそうだ」
「盗んだその日じゃねぇかあの野郎」
やってられないとばかりに天を仰ぎ掌で瞳を隠すベン。
どうしようもないほどに見透かされていたという事実が彼を苛んでいた。ぶっちゃけ恥ずかしい。
自分は結構な覚悟で盗みを働いたが、それを糾弾されるどころか利用されるなど、どんな顔をすればいいのか誰かに教えてほしい。
「……まあいいっすよ。後で返しますんで、そんときまた話します」
「それがいいだろう。さて、では話を戻すがどこまでいったか」
「ケイン君たちに大会の話をしていたところですよ。私はその間にドイルさんの治療の準備をしていました」
ベンのせいで逸れてしまった話の流れをトトンが修正する。
この二人、意外にも相性がいいのかもしれない。
そんなことを考えていたベンだが、話のそもそもの問題に彼は気付いてしまった。
「というか、ドイルさんって治療不可能だったんですよね。何で治ってるんですか?」
雷角獣キリンの傷跡は、どうやっても治せない。
だからこそ、ケインはクランの長になろうと暴走してしまったわけである。
それがどうして完治しているのか。
ベンはその理由を知っているトトンへと視線を向けた。
「はい。自分たちも最初、というか今までそう考えてきました。なにせ既存の方法がまるで効かない。症状も何もあったもんじゃありませんでしたからね」
トトンはそう言うと、白衣のポケットから何かを取り出た。
「ですが、リーズさんのお陰で新しい発見がありました。これこそこの病の治療に不可欠な、少ない症例のせいで深く知られることのなかった「魔力汚染」という病を治すための鍵」
―――これがそうです。
トトンは取り出したそれをベンに見せた。
光を反射して輝くそれは、規則正しいブロック状の形をしている。
それはベンにも見覚えのある、とある物体であった。
「―――魔鋼。純度の高い魔鉄を鍛えた先にある、魔力の器となる物です」
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