復活のドイル、彼はその時のことをこう語りだした
どうもアゲインストでございます。
遂に正体を現したジョン、改めクラン長ドイル。
何故彼が目覚め、大会に参加していたのか。
これからはそんなお話。
それではどうぞ。
全くもって予想外。
絶対にあり得ないはずの存在が、ベンの目の前にしっかりと立っている。
戦いの疲労によってボロボロだが、それをまるで気にしていないようなその顔には、彼を苛んでいたはずのあるものが存在していなかった。
そう、ドイルの全身を苛み顔を覆い尽くすほどに蝕んでいたはずの火傷の痕が綺麗になくなり、痛々しかったそれから元の精悍な顔立ちに戻っていたのだ。
あまりにも予想外すぎる展開に周りもついてこれていない。
勝敗を告げる司会ですらその役割を果たすことを忘れ、会場で立つままのドイルに目を向けて驚愕の表情で固まっていた。
決勝戦に相応しい、と言えるかは人によって別れると思うが次々と繰り出されるベンとジョンの攻防によって沸き上がっていたはずの観客たちは謎の男の正体が自分たちの英雄だったことに唖然とした表情から戻れないでいる。
で、あるにも関わらず当の本人はその様子がおかしいのかニヤついた顔でいるのが腹立たしい。あんたのお陰でこんなことになっているんだが、それを理解しての反応というのがまたかつてドイルという男がこんな奴であったのだというのを住民たちに思い出させる。
そんな中、まず始めにドイルへ向けて声を掛けることのできたのは実際に戦い、その強さの理由がこの人であるならばと思い至ったベンであった。
確かにフードの中の正体を知った衝撃は凄まじいものだったが、今まで目を覚ますことはないといわれていた人物がここにいるのだ。そのことについて聞かなければならないと地面に横たわる体を何とか起こし、ドイルへと問い掛ける。
「……ドイルさん……なんですよね?」
おずおず、といった様子でだが質問をするベン。
ドイルの方も何とか息が整ってきたのか、落ち着いた様子でベンへと視線を向ける。
「驚かせたな、ベン。まあ……いろいろと話さねばならんことがあるのだが、まずは一つ言わせてほしい」
一体全体、会場全体を混乱に陥れた男が何を言うというのか。
だが、それでも某かの答えを貰えるのであれば聞かないわけにはいかない。
「なんですか?」
「いやなに、簡単なことでな」
「――――――疲れた。……もう、むりだ」
激戦を制した王者は、それだけ言うととても危ない感じで地面へと倒れ込んでいった。
それはもう、見事なほどの倒れっぷり、といった具合である。
ドグシャア、という効果音が静寂を切り裂く。優勝者が倒れ込むという事態に更なる混乱が会場に起こることとなった。
事態が収拾するまでに幾らかの時間が掛かり、その間にドイルたちは係りの者たちと一緒に会場から退場し設営されていたテントの中へと運び込まれることとなったのである。
一種異様な雰囲気を孕む外の空気から隔絶されたテントの中であったが、こちらもこちらで大変なこととなっていた。
傷を負った選手の収容所となっているテントであったが、運び込まれてきた人物がまさかの人であったのだから。
外の出来事を知らないテント内の連中は、突然入ってきた人物の顔を確認できた者から驚愕の表情に変わっていく。
何があったのだと聞こうとするが、ドイルとベンの治療に意識を割いているのもあってまともに取り合ってもらえない。
そして大勢の医師たちに囲まれて次々と処置を受けていくのを戦々恐々とした心持ちで眺めるしかできない彼らは、包帯やらでぐるぐる巻きにされようやく解放された二人に対して憐れみの感情を向けるのであった。
―――で、それから。
隣同時のベッドに眠らされる形となったドイルとベン。
彼らの姿は先程まで激戦を繰り広げていた戦士というものから重傷患者といった風体となっている。
怒濤の治療行為に流されてしまい、何となく、切れてしまった会話の続きを切り出せないでいたベン。
まず聞きたいことが多すぎると考えていた彼の思考を遮ったのは、聞き出したい相手であるドイルからの呼び掛けであった。
「なあベン」
「は、はい」
声に反応し、ドイルのいる方向を向くベン。
ドイルは語り掛けてきたものの、その視線は仰向けの体勢のまま上を向いている。
「ケインは、いるか」
「え、ええ。反対側にですが、まだ眠っているみたいです」
「そうか」
まあ思いきりやったからなぁ……、と息子に奥義みたいなものを打ち込んだくせにしみじみ語っている。
そういえばこういう無茶なことも結構する人だったことを今さらのように思い出し、懐かしさに浸りそうになっていたベンだが今はそんなことをしている場合ではないと頭を振って思考を正す。
そう、今聞かなければならないことは、そんなことではないのだ。
「ドイルさん。あんたが目を覚ましてくれたことは本当に嬉しいです。でも、俺たちには理解できないことが多すぎる。
お願いしますドイルさん、最初から話をしてください。
何であんたがここにいて、俺たちと戦うことになったのかを。
一体あんたに何が起こったんですか?」
謎がある。
あまりにも多い謎が。
それをベンたちは知らなくてはならない。
そしてドイルも、それを話さないでおくことはできだいだろう。
「そうだな、まず何から語るべきか。初めからというのならこの人たちにも居てもらう必要があるだろう」
入って来てくれ。とドイルがいうと、テントの入り口から二人の人物が現れた。
片方はある意味この場に相応しいと言える人であったが、もう一人は……―――
「トトンさんに……ハリマさん?」
一人は医師としてドイルにも大会にも関わっているトトン。
そのもう一人はこの大会に参加するようにと言った本人である、クランの副長ハリマであった。
ベンはさらに疑問を募らせることとなったが、事情を知っているであろう二人はドイルに全てを任せているようで何かを話す、という雰囲気ではない。
二人が自分の近くに来くのを待ってから、ドイルは静かに事のあらましを語り出す。
―――あれは昨夜のことだった。という言葉から、ドイルの話は始まった。
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