決勝戦 その3 side ベン
どうもアゲインストでございます。
決勝戦も終盤へと差し掛かります。ベンの抱える策とは一体どういうものなのか。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
ジョンの対策として実行している「格下」戦法だが、当然のことながら相手以上に俺の方が疲れる。
無理な体勢、支える腕の負担、攻撃だって無茶苦茶だ。
それでも食いつく。
できる限りを、最大限。
だがそれも、こいつ相手じゃいつまでも通用するようなもんじゃねぇんだようなぁ……。
「……っとぉお!?」
ああくそ!! やっぱりか!!
この野郎もう対応してきやがった!!
もう安全圏を築きやがった、入ろうとすれば避けられる! 反撃も十分威力がありやがる!!
ちくしょう、「格下」はもう効かねぇ! もうちょっと付き合って欲しかったが、こうなりゃ次の策だ!!
「んなもんでっ、仕切り直しだ!!」
地面に張り付けていた腕で勢いを着け体勢を直す。
こんな隙を晒してるっていうのに、ジョンの奴に攻めてくる気配はない。
ありがたいことだがよう、次の手で目にもの見せてやるからなぁ!
俺は対策第二弾のため、構えていた剣を―――
―――鞘に納めた。
「へへ」
ジョンの奴も俺の行動に疑問のようだ。まあ待てや、これで終わらないからよ。
俺は鞘ごと長剣を腰から引き抜き、革紐でぐるぐる巻きにして固定していく。
ある程度の固定ができたところでひとまず完成といったところか。
訝しげな視線の相手や観衆の奴らにも分かるように、その場で二三度素振りを行う。
よし、こんなもんか。
「そんじゃあ、行くぜー」
あくまで軽く、がらりと雰囲気を変えて。
戦闘の流れを変えるくらいに、緩く、ゆるく。
足取りも軽く無造作に、あの野郎がケインとやりあったときみたいに、なんでもねぇような感じで。
しかし、こんなところでお前のやり方を真似ることになるなんてなぁ。
―――なあ、リーズ。ちょいとお前の戦い方、使わせてもらうぜ。
「第二弾」
「……?」
距離よし、反応よし。
作戦決行に十二分、そいじゃあ仕掛けますか!!
俺はジョンとの間合いが剣のそれとはかけ離れた位置から、ことさら大きく長剣を振りかぶる。
「っチィ!!」
そんなところで振りかぶろうと、何がどうなるわけがないとそう思っていることだろう。
だが、このくらい勢いを着ければな、
「食らえおら!!」
鞘の一つも飛んでいくってもんだろうが。
固定してたんじゃないかって? 誰も剣ごと固定したなんていってねぇよ。そういう誤解をしやすいようなやり方はしたがな。
力の向きに従って、放たれた鞘は真っ直ぐにジョンへと向かっていく。いきなりの飛び道具に驚くと思ったが、前の戦いで使った戦法だったのが原因か対応が早い。素早く横に避けるが、それはくらいは俺だって予測できるんだよ。
「舐めんなよ」
「……!」
急拵えだがそれなりに丈夫な革紐だ。多少乱暴に扱っても千切れるようなことはねぇ。剣を持つ方とは反対の手で見掛け以上の長さのあった紐を引っ張り、無理矢理に軌道を変更させてジョンの奴のほうへとぶつけてやる。
相手側からは紐の余裕が見えねぇようにとやった甲斐があった。咄嗟に防がれてはいるものの、十分に当たったと言えるだろう。
これが対策第二弾、「追い縋り」だ。
奴の回避行動を促すと共に、これは鞘の動きに注目させることで俺の行動を隠すことにも効果がある。
これだけじゃ終わらねぇぞ。
俺はさらに紐を手繰って鞘を回収し、もう一度投げつける。
今度は上に、ふわりと投げた。
人間てのはどうしても動くものってのに目がいってしまうらしい。こんな分かり易いもんでもちょいとばかしその方向に目線がいくんだとか。
で、それが隙になる。たとえ一瞬だとしても、この男相手にその一瞬がどれだけの価値があるか、考えるまでもない。
ここまでの戦いで、この男が結構正道な戦いの仕方をしているのが理解できた。片足どちらかは絶対に地面から離れないし、構えも基本となるものばかりだった。
対人戦闘に長けた相手であること、というのは簡単に分かった。
正道な戦いではまず勝てん。じゃあどうするか。
俺は冒険者だ。剣士以前にな。
だったら使えるものは何だって使う。勝利するための努力が足りないなら、どんな手を使ってでもその差を埋めてやるよ。
どうやら策は効いたみたいで、視線が鞘の方に向いたのを見計らいい、地を滑るような低さでジョンへと迫る。
すぐに気付いてこちらに対応しようとするが、頭上の鞘への注意を忘れてはいけねぇな。
革紐を操り鞘を強襲させる。それでも難なく弾くがまだ甘い。それで終わるとでもあるとでも思ったか。
俺はさらに手の中にある長剣もジョンの奴に向けて投げつけた。
「……!!」
これもまた想定外だろ?
足元からの攻撃に対応できたから、安心してたろ?
迎撃しようと考えていたところよりも早く攻撃がくる。これならお前も度肝が抜けただろ。
だが、まだだ。
まだもう一個、策がある。
その剣もまた、その布石とは思うまい。
ジョンの上半身に向けて投げつけた剣には思いきり回転を掛けておいた。目に見えて脅威だと分かるそれには対応せざるを得ないだろう。
案の定、連続した奇襲に面食らったのか、対応が遅い。
ここだと思った俺は全力でジョンを捕獲すべく低空タックルを繰り出した。
だが敵もさるもの、ということだろう。
「格下」よりも低く低く、地面と擦れるような位置にいる俺の手が奴の足に届く、といったところでその足が動く。
真っ直ぐに突っ込んだ俺の手が、足の踏み込みによって弾かれる。その足がそのまま顔面へと迫り、突進の勢いをものともしない強度を持った蹴りによってそのまま蹴り上げられた。
ゴガッ!! とも、バキッ!! とも言えないような音が響く。
あまりの勢いに、俺は顔面からかち上げられて足が着いていないのに直立してような姿勢にさせられる。
無防備な腹を晒すようなものであり、そしてそれを見逃すような相手ではない。
腹部に横に一閃、だがしかし。
「……第…三弾…………」
俺の腹を綺麗に切り裂くはずだったその一撃は、そうはならず俺にいくらか傷を付けるだけなった。
衝撃によって後ろに転がった俺。痛みの程から何とか上手く策が嵌まったことを朦朧とする頭で何とか理解する。
ジョンは蹲ってうめく俺のこの隙に追撃の一つでも食らわしそうなものだが、それはちょっとできないだろう。
なんせ、攻撃しようにも剣がスッパリいっちまって半分以下になってるだろうからな。
お前さんに使うはずじゃなかったんだが、こうでもしねぇと勝てそうもないんでな。
俺の左手には、それまでずっと隠し持っていたものがある。
刃渡りは長剣に及ばずとも、切れ味だけならそれを容易く上回る代物だ。
俺も手癖が悪くってな、これが終わったらちゃんと謝るから許してくれよな。
それはリーズが持っていた、ケインの長剣を切り裂いた黒い刀身のナイフだった。
「第三弾……「牙折り」……成功」
さあ、第二ラウンドといこうぜ。
読了ありがとうございました。
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