決勝戦 その一 side ベン
どうもアゲインストでございます。
遂に決勝戦、ベンは果たしてどう戦うのか。
その心中について語る回です。
それではどうぞ。
準決勝を終えたイナナキの街中央。
あまりにも壮絶な結果を迎えた戦いを観戦していた観客の心とは裏腹に、雲一つない蒼天が最後の対決を今か今かと待ち望んでいた。
激戦を繰り広げた二人の容態を心配する者やベンの現状を知る者が決勝が始まるまでの時間の間、隣にいた人たちと相談をしたりしている。
そんなざわめきが周囲に満ちる中、静かに精神統一を行っている男がいた。
自分が入る門の前で目を閉じて、時が来るのを待っている。
クラン「青き鬣」第十位、ベン・ブリッチである。
知略と幸運に恵まれ、こうして決勝まで上り詰めることができたが、その心中にそれを喜ぶような感情はなかった。
むしろ準決勝でのジョンの戦いを見て自分の勝率が決して高くはないことを認識していた。
強敵である、というのはこれまでの戦いで分かっていた。その実力が自分よりも格段に上であることは百も承知である。
その上で、まさかケインがあそこまでの見せたにも関わらずそれを上回る動きをしてみせるとは思わなかった。
(……ケインの動きはまだ分かる。だがジョンの野郎のは……)
正直言って、自分にも見えなかった。
これまで戦士の力を見抜く目を養ってきたつもりだったが、それが意味をなさないような駿足の一撃。
ケインの猛攻にも対応し、渾身の一撃さえ最小限の負傷で凌ぎきった。
体力が削られているのだけが唯一の勝算と言えなくもないのが実の笑えないことになっている。
しかし、問題はそこではないのだ。
別に戦うこと事態にそこまで悲観しているわけではない。剣士として強敵との戦いは望むところである。
だが、しかし……。
(あいつとは決勝で戦うつもりだったんだよ、俺はな)
ケインとの因縁は自分自身で決着を着けなければならないと改めて誓った身である。
ベンからして倒すべき相手と認めた相手が自分と戦う前に倒されてしまった。それがこんな風な感情を抱くことになど、かつての自分からしてみればあり得ないことである。
(―――仇は、とらねぇとな)
問題児であった。
周りのことなど考えず、迷惑ばかりを掛けられてきた。
悲劇を体験した奴だった。
それが性根を変えてしまったが故に、何よりも力を求めた。
だが、
その裏には真摯な思いがあったことを知っている。
周りに挑むための努力を重ねた日々を知っている。
何のためにそんなことをしているのか知っている。
ずっと……そうずっと見てきたのだ。
その血反吐にまみれた闘争の道筋を、ずっと見てきたのだ。
だから、
だから……―――
「―――それをぶっ飛ばしてやるのは、俺の役目だったってのによ」
勝手に一人になって、勝手に強くなって、勝手に先に行こうとして。
そんなに俺たちは頼りないかよ、お前を支えることができないと、そう思ってんのかよ。
なんだよそれ、なんだよそりゃあ。
寂しいこというなよ。仲間じゃなかったのかよ。あんなに親のことを思って、クランのことを思ってくれてるんなら、なんで俺たちに協力させてくれないんだよ。
「……見せてやるよ、ケイン」
確かに俺なんぞお前の足元程度の実力しかないかもしれないがな、だからといってあんまし舐めてるんじゃねぇぜ。
弱いと思ってる奴の本当の実力ってやつを、この戦いで見してやるよ。
目に見えるものだけで判断できるほど勝負の世界は甘いものじゃないってことを、証明してやるよ。
決心は定まった。
「―――ベン選手、そろそろ試合となります」
調度いいことに、覚悟を決めてからさほど時間が経たない内に決勝の準備ができたようだった。
ジョンの消耗がかなりのものだったように見えたが、もう回復に時間を割かなくてもいいらしい。
こちらは十分に休ませてもらった。疲労の度合いではこちらが有利。その点は存分に利用させてもらおう。
「ああ、分かった」
さあ、ジョンとかいう奴。
「青き鬣」最後の砦、ベン・ブリッチが相手になるぜ。
係りの奴に促され、会場の中央で観客に語り掛けている司会の煽りで徐々に盛り上がっていく周囲の空気に押されるように、俺も門から姿を表す。
さあ、やってやる。
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