そして対決の時来たり
どうもアゲインストでございます。
準々決勝をダイジェストでお送りします。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
時は過ぎ、日が頂点から落ちいく午後となった。
今一度、戦いの火蓋が切って落とされる。
剣闘大会は選手の数を半分にし、更なる激戦を予想させるものへとなった。
準々決勝初戦、対戦はケインから始まった。
相手は初戦でも堅実な戦いで勝利を納めたミドラである。
同じ剣士との戦いだが、機動力膂力に優れるケインが終始圧倒する結果となった。
相手もケインの猛攻を掻い潜り何とか反撃をするが、次の戦いへと戦意を燃やすケインには残念なことに届くことがなく、渾身の力を込めたケインの一撃を受け損ね手首を負傷してしまい戦闘を行うことができなくなってしまった。
これによりケインの勝利が決まり、準決勝へと駒を進めることとなる。
準々決勝二回戦、フードの男ジョンの対戦。
四回戦の勝者であるサーベル使いのビョウ、ジョンの初戦の相手とは毛色の違う相手であり得意の連続攻撃で格上の相手と見なしたジョンであっても果敢に攻めていく。
軽快な動きによって様々な角度から襲ってくるサーベルの刃。前回のように最小限の動きで避けてはいるが、それを繰り返していくと明らかに息が上がっていくのが分かるようになる。
それを好機とみたビョウは更なる攻撃を繰り出すが、ここまで一度も防御のために使わなかった長剣がそれを阻んだ。
意識の外にあった長剣の防御により体に硬直が起こるビョウ、その隙をジョンが見逃すことはなく、コンパクトに振られた右脚はビョウの脇腹に突き刺さり彼を大きく蹴り飛ばした。
吹き飛ばされ、腹部の痛みによって呼吸ができなくなったビョウは大きく咳き込み体を震わせている。
その姿には立ち上がれるような気力があるようには見えず、ここで勝敗を決める宣言が司会よりなされた。
肩で息をしているが、両の足でしっかりと立っている。長剣を鞘に納め、門の方へと去っていく。
ジョン・ドゥニーム、この男もまた、準決勝へと進出した。
準々決勝三回戦、ベン・ブリッチの戦い。
短槍による速攻を得意とするレイテは今大会において紅一点の女性の戦士である。
女性特有のしなやかな動きで敵の懐に入り込み、急所に鋭い一撃を食らわす。実力はこのイナナキの街でも上位に入るほど、しかしベンは彼女に対する秘策を用意していた。
戦闘が開始され、レイテは一気に勝負を着けようと短槍を構えて突進してくる。その速度は素早いが、ベンはこれが全速力でないことを知っていた。
ここで回避しようとすればその隙に今度こそ全力に一撃が放たれる。だがそれは、知っているのなら対処ができる。
ベンは右手に長剣を持ち、左手にその鞘を持つ。そして勢いよく左の鞘を彼女に向けて投げつけた。
横向きに投げられた鞘は円盤のようにレイテの進行を妨げる。レイテは慌てて回避するが、その先にはすでにベンか剣を構えて待ち構えている。
ベンは知っていた、彼女は咄嗟の回避をするとき必ず左に避けることを。その動きを促すように、鞘の回転は彼女を右から襲うようになっている。
機先を制されたレイテだが、それでも反撃として短槍を繰り出してきた。
しかし、先手を取り続けたベンがその反撃を予想していない訳はなく、鞘を避けようとしている彼女は外側に力が加わっているのを考慮して動いていたベンは内から外へ弧を書くように向かうことによってその攻撃を誘導していた。
歩幅を制御したチェンジオブペース、クロスステップによる正面を向いたまま動きレイテの攻撃を避けたベンはすかさず体当たりを行い彼女を地面へと転がした。
諦めずに立ち上がろうとしたレイテに向けて剣を突きつけたベン。目の前にあるそれが決め手となり、ベンもまた準決勝へと進むこととなる。
準々決勝四回戦、これがまた驚きの結果となってしまった。
短剣使いのハンスと武術家ボーゼンの戦いとなったのだが、ボーゼンの拳を受けたハンスの短剣が何とその一撃で破壊されてしまったのだ。
武器破壊を素手で成したボーゼン、得意気な顔でハンスに負けを促したのだがそれがよくなかった。
お気に入りの武器を破壊されたハンスは、何を血迷ったのか武術家に対し素手で挑み掛かったのである。
これにはボーゼンも面食らってしまい、無防備な顔に一撃を受けてしまう。これが上手いこと顎に入ってしまってからが凄かった。
乱打を繰り出しボーゼンをボコボコにするハンス、何とか正気を取り戻し反撃を繰り出そうとしたボーゼンだがそれまでに蓄積されたダメージが攻撃を許さない。
そうこうしている内にハンスが攻め疲れを起こす。そこに打ち込まれるボーゼンの反撃のアッパーカット。酸欠ぎみになっていたハンスにこれは不味かった。
途端に変わる攻守、今度はボーゼンの拳打が舞う。
右に左に翻弄されるハンス、大きく体勢を崩した瞬間を見逃さずボーゼンはとどめの右ストレートを放つ。
しかし!
これにハンス、獣の眼光を瞳から放ち超反応。握りしめられた左の拳が動く。
即ちクロスカウンター。
ここに来てのクロスカウンターである。それにより沸く観衆、息を飲む。
お互いの顔面に突き刺さった拳、一瞬の停滞の後二人同時に仰向けに倒れる。
鳴り響くカウント、立ち上がれと叫ぶ観衆の声と自身のプライドが体を二人を動かす。
そして最後のテンカウント、ふらつきながらも立っていたのはクロスカウンターを決めたハンスであった。
ここ一番の大勝負に沸き上がる観客たち、ハンスを称える歓声が鳴り響く。
勝敗が決まり二人を会場から退散させた大会陣営。あまりの激戦を繰り広げた二人はそのダメージがかなり深刻なものとなっていた。お互いにこれ以上の戦闘を行うことはできないと判断した大会の運営者は、会場の中央にて宣言した。
二人の容態はこれ以上の戦闘を継続できるものではないこと。それによってベンの不戦勝を告げるものであった。
惜しむ声はあれども、あれだけの激戦を繰り広げた二人を称える拍手によってそれは了承されることとなる。
そして―――
「―――……皆様! 先ほど少々のトラブルがございましたがここに準決勝へと進む戦士が出揃いました! 残念なことに準決勝を戦う戦士たちは一組となってしまいましたが、この一戦もまた素晴らしい戦いになることは明白でございます!
まずは東門! 若干十六才、クラン「青き鬣」所属! 小さな体に大きな力! ケイン・ガーゼル選手!!」
歓声を背に、会場の中へと向かうケイン。すでに長剣は抜かれており戦意は十分である。
「続いて西門! 経歴年齢ともに不明、しかしその実力はこれまでの戦いにて証明されております! 冒険者ジョン・ドゥニーム!」
西門から現れたジョンもまた剣を抜き構えのままに進んでいく。その実力に魅せられた観客の声が凄まじいが、それに応じることなくそれまでと同じく静かに戦いに望む姿勢である。
「両者出揃いました! お互いに悔いのないよう、それでは準決勝! 始めぇええええ!!」
剣を構える静のジョンに一気に攻め込む動のケイン。
対照的な二人の戦いが、今まさに始まったのだ。
読了ありがとうございました。
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