リーズ・ナブルは好き勝手
どうもアゲインストでございます。
今日もなんとか投稿できました。
今回のお話は前回から勝手なことをし出したリーズの思惑とかを語る感じです。
それではどうぞ。
シャハトとのお話は特に時間を掛けることなく終わってくれた。
この爺さんの性格上、自分の欲望には逆らえないだろうなという思惑の元この特別な魔鉄を持ってきたが、二三言葉を交わすだけで詮索されることもなくこちらの要望を聞いてくれたのは助かった。
早速作業に取りかかるようで、床の上で俺たちの様子を伺っていた弟子の二人はギラつきだした顔のシャハトのそれまでとは別の恐怖でも抱いてしまったのか、青い顔色に冷や汗まで足していた。
まあ俺には彼らがどうなろうが関係ないのでさっさと退散させてもらうことにしたのだが。
通路を抜け、表に出ようとすれば店番をしていた奴とマチルダが奥に入らせろだの入らせないだのの言い合いをしていた。
これに途中で気付いた俺はたいした時間を取られずにすんだのは行幸だったとつくづく思ったね。
この調子ならばマチルダに押しきられて奥に侵入を許していたのももうすぐのことであっただろう。
そうであったならこちらの思惑をそれなりに知られてしまうかもしれなかったので店番の彼が囮になってくれたよかったよかった。
こうも上手くいってくれたのは日頃の行いのお陰だろうと内心で呟きつつ、マチルダをここから引き離すために姿を現すことにした。
「おいマチルダ、ぎゃあぎゃあうるせえぞ。もうちっと静かにしろや」
「リーズ!? いや原因のお前が言うことか!!」
「はいはい、行きますよー」
「おい! 勝手に行動するなと言ってるだろうがこら!!」
ツッコミ役に回ってしまったマチルダに構わずそそくさとこの工房からの逃亡を図りつつ、俺が中で何をやっていたのかシャハトたちから聞き出されないよう自分を餌にして彼女の行動を俺に集中させる。
店番の彼に手を振りつつ、俺は工房を後にするのだった。
早足で行動する俺に追いすがろうと追いかけてくるマチルダを連れ、警備隊の兵舎へと帰ってきた俺は門の警備の奴等に困惑した顔をスルーして中へと入る。
後ろからいろいろと言ってきているマチルダのこともあるんだろう、今の状態の彼女に下手に関わって不評を買うことをしたくないというのは十分に理解できる考えだ。
一行に自分の質問に応えない俺に対してかなりフラストレーションを溜めているだろう。
背後にいる彼女の気配からそれが分かっていた俺は、被害が周囲に及ぶことがないようにここ二日ボコボコにされていた鍛練場へときていた。
さて。
「で、何か言いたいことでも?」
「……散々無視をしておいてまず言うことがそれか……!」
ちょっと人には見せられないような顔になっているマチルダに向かってそんなことを言ったものだからそれはまあ怒りますわいな。
とはいってもこの怒りで頭が働かないような状態はこちらにとってちょうどいい。
「だってよう、いい加減にしてほしいじゃねぇか」
「ああ!?」
「俺はな、本当だったらこんな面倒に巻き込まれることはなかったはずなんだよ。今さら起こったことにどうこう言ってもしょうがないとは思うがよ。」
怒りに震えるマチルダに対し、俺はさらにその感情を逆撫でするような台詞を口にしていく。
「何で俺はこんなことをしなきゃいけない?
俺を守るためといいながら尻拭いを頼んでくるようなベン・ブリッチ。
仕事の範疇だと言いながら自分の感情の発散することを望むあんた。
強くなると言いながらその実周りに迷惑しか掛けていないケインの小僧。
そしてこのガキを更正させる気概のないこの街の連中。
全員過去に囚われているくせに、それを改善するための覚悟もなにもない。
何故俺が、そんな奴等のために自分の自由を制限しなけりゃならない?
なあ教えてくれよ、腕っぷしの強さしかないくせにどうのこうの言うんだから、教えてくれよ。
―――この問題を解決するためにあんたにできることはなんなのか、それが答えられないのなら口出しするんじゃねぇよ」
そこまで言って、俺の言葉に対するマチルダの反応は薄かった。
それまで怒りの感情で震えていた体は静まっていたが、徐々に拳に力が込もっていく。
だが、それ以上どうするということはなかった。
「……答えろといったな、リーズ・ナブル」
「そうだ、マチルダ・ボータン。お前らが道を誤らせなきゃ起こっていなかった事態に対して、しっかりとした返答をいただきたい」
こんなことは本来ならベンの奴に聞くべきことだ。
しかし、今回治療院での出来事で俺の考えは変わっている。流れに身を任せるなんてもうお断りだ。
「確かにお前の言うことは分かる。しかし、両親があんな状態になってしまったケインの苦しみを、どうやって私たちが癒せるというのだ」
「それは逃げだ。あんたらがもっと真剣だったなら、そんなことは言わないはずだ」
そして何より。
「小僧の苦しみだとか何だとか言ってるが、本当のところはこれ以上自分たちが傷付きたくなかっただけなんじゃねぇの」
「そんなことはない!!」
「はっ、どうだかな」
まあ。もういいか。
話すことなど、これで十分だろう。
「悪いがここで世話になるのはここまでにさせてもらうわ」
「何を言って」
「大人ってやつの責任が取れないんなら、あんたらに小僧は救えんさ」
まだ何かを言いたそうにしていたマチルダを尻目に、俺はその場から姿を消した。
背中から放たれていた拒絶の意思を読み取ったのか、マチルダも追ってくることはなかった。
そして俺は俺の考えの元、自分のための行動を始めることにしたのだった。
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