ガーゼル夫妻と主治医のトトン
どうもアゲインストでございます。
ようやくあえたガーゼル夫婦、そこに登場するのはトトンという医師であった。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
毛布を掛けられた二人の姿は悲惨というべきだろうか。
ベンの奴が見せてくれたキリンにつけられた傷跡、見える範囲ではそれが顔全体に広がっている。
奴の話通りなら、そこだけでなく全身に満遍なく広がっているのだろう。火傷の痕というにはなんというかどことなく違うように見えるのはあいつの傷と変わりなく、それでいてベンのものより濃いように見える。
俺が彼らを観察している間に、マチルダは二人のベッドの間にある台の上に花束を置いていた。それぞれに向かって祈るような所作をするのは回復を願ってのことだろう。
特にミハネさんだったか、女性の方には若干長めにそれを行っていた。恩人というだけあって思うところが多いのだろうな。
俺も倣うようにして手を合わせる。
さて。
「お見舞いですかな」
「うおっ……!」
突然背後から聞こえてきた声に驚いてしまい思わず大声を出してしまいそうになったが、なんとか口を押さえたのでそれ以上声が出ることはなかった。
驚き扉の所から身を引けば、そこにはなんか人かどうかを疑うようなシルエットが。
「どうも見知らぬ人、自分がトトンです」
「……ご親切にどうも、リーズ・ナブルという者だ」
「マチルダさんもお久しぶりです、この前は私用で出掛けておりまして」
「気にされることじゃないですよ、見舞いは私が好きでやっていることですから」
「そういうところがいいですねぇ、よい大人になられました」
とても親しげに話をしている二人だが、俺に注目はそこではなくやはりこのトトンという人物に向けられていた。
何故ならこのトトン、一見するとカエルのような顔をしているのだ。大きな瞳と腫れぼったい唇、通常より平らな頭の骨格がそう見せるのか、一度そう思ってしまうとそうとしか見えない。カエルにしか見えない。
短い髪、低い身長もまた彼の印象を顔に集中させてしまう要因となってしまっている。何せ俺の方より下に頭があるのだ。姿勢の悪さもあるんだろうが、前のめりなせいでなおさら頭が前にきていてどうしてもまず顔を見てしまうような感じだ。
「リーズ、彼が主治医のトトンだ。少し変わっているが腕は確かだ」
「自分はそこまでの人間じゃありませんよ、結局こうして患者を助けることができていないのですから」
そう言いながら眠っている二人の元に歩いていくトトンは持っていたいた板に白衣の下から取り出したペンで何やら記入をし始めた。どうやら寝ている二人の診察をしているようだ。
「リーズさんと言いましたね。あなたはどこから来られたのかな」
「ああ、えっと王都のほうからです」
「おお王都ですか、あそこは最近賑わっていましたね」
「まあ、そうですね」
「今日はどういったご用で? ただのお見舞いではないと愚考しますが」
「ちょっとした問題に関わってまして、この二人に関係してるって言えばわかりますかね」
「ああ、坊っちゃんですか。あの子は本当に……」
主治医というのならケインとも当然面識があるのだろう。あいつがどんなことを仕出かしているのか分かっているのか、心配そうな顔をしている。
「申し訳ありませんリーズさん。あの子には何度も言い聞かせているんですが自分如きの言葉など聞いてくださらないんですよ」
「いやいや、トトンさんせいってだけじゃないでしょ。あれはワルガキってレベルじゃないですよ」
「ははは、なるべくお説教にはならないようにしてはいるんですがねぇ」
「きっちり叱った方がいいじゃないですかねぇ」
「ははは、いや、面目ない」
いや面目ないじゃないんですけど、こっちはすげぇ迷惑してるんですけど。
そういってやりたいのはやまやまだが、真剣な眼差しで診察を続ける彼の姿を見てここで文句を言ったって何かが変わるわけではないと思い、まずはガーゼル夫妻のことについて聞くことにした。
診察の邪魔になるからと脇に避けたマチルダがこちらに近寄ってくる。一応彼女の方から先に聞いてみるか。
「ずっと眠ったままってのは、何をしてもそうなのか?」
「ああ、聞いたところによるとまずは火傷の痕を治そうとしたらしい。だが何が原因なのか分からんが薬も魔法も全く効かなかったみたいなんだ」
それ以来やり方を変えていろいろ試しているそうなんだが、と彼女の言葉が続いていたのだが俺の耳はそれ以降の言葉を聞き流していた。
俺の目は診察を続けるトトンの手の先にいっていたからだ。
男性の方、確か名前はドイルさんだったか。そちらの方の触診をしていてた。
ケイン少年はこの父親をそのまま幼くしたというくらい顔の作りが似かよっている。
息子と同じ群青に近い髪の色をしているが、こちらは生気が抜けているのか若干髪色が薄くなってしまっている。
そしてなにより、今トトンが触れているところがマジでやばかった。
「おいリーズ、聞いているのか」
「おい、あれってなんだ」
「あれ? いやあれと言われても、ただの触診だろう」
「いやそうじゃなくって」
まああれとだけ聞かれて分かるわけがないか。
トトン本人に聞いた方が早いと思った俺はなおも話を続けようとするマチルダをそのままに、診察を続けているトトンとドイル氏のそばに近寄っていった。
「すまん。ちょっといいか」
「おや、どうされましたかな」
「俺にも診させてくれ。ちょっと気になることがある」
胸の辺りを診ていた彼に断りを入れ、俺もまた彼のことを診ていく。
これがここに来た目的の一つだ。
ベンが見せてくれた傷跡に感じた違和感、それが何なのかを確かめるためにより深い傷を負っているこの二人のところに来たのだ。
そしてこの胸のところにある傷を見て、違和感が確信に変わった。
「まずいな」
それは想定していたよりも深く、彼の体を侵食していた。
長年の影響がここまで酷いことになっているとは、やはりキリンが規格外の存在であることをまざまざと見せつけてくれる。むしろこうして生きているだけこの男の生命力が半端でないことを示していた。
「リーズさん。何か知っているのですか?」
俺の言葉の意味が何を示しているのか分からないトトンはその疑問を口にする。
俺としてはもっと調べてからにしたかったが、これに関しては専門家の意見がなければどうにもならないと思い、自分の考えを言った。
「―――おそらくだが、これは魔力汚染だ」
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