リーズ・ナブルは先輩冒険者と
どうもアゲインストと申します
みんな大好き冒険者ギルド
リーズに語りかけてくる人物の正体やいかに
そんな第七話でございます
この社会において力というのは重要なステータスだ。
特に後ろ楯のない、冒険者という者たちにとっては自分の守る最善の手段といえるだろう。
そしてこの冒険者ギルドにおいて、力とは生存することと同義だ。それはいかな手段であろうとだ。命あっての物種であるこの職業では、命を掛けてことを成すのことを美徳とするような考えは少数派だ。
だが、そういった道理を蹴っ飛ばす存在が稀にいる。
人という存在において脅威となる環境、生物。
こういったものに嬉々として挑んでいくような、はっきりいうなら傍迷惑な奴ら。
それが、高ランク冒険者である。
「見ねぇ顔だな。やっぱり新人か!」
このマッシブも、恐らくはそういった高ランクの冒険者であると推測できる。
先程まで俺を威嚇していた周りの視線が、この男に目を付けられないようにしたいとでもいうように顔を逸らしてしる。
マッシブはそんなことなど気にしていないかのようにしてこちらに近づいてくる。
「お疲れさまです、ユルゲンさん」
「おう、帰ったぜ!」
どうやら帰還したことの報告のためかまずは窓口に来るので脇によける。
そしてホスキンスとの会話で男の名前が判明する。
彼らがなにやら話をしているのを聞きながら、ユルゲンという男について観察していた。
まずはその容姿だが、俺よりも背が高く全身を分厚い筋肉で覆っている。
冒険者にしてはかなりの軽装だ。見たところ魔物の革でできたものだと判断できるが、両腕は肩から剥き出しになっている。
武装もない。しいて言えば指だしグローブをしているくらいだろうか。
「(軽装ラッシュタイプか)」
打撃を主体とした戦闘スタイルはいろいろあるが、この手のタイプは高速で動いて一方的に攻撃を加える戦術を好んで使う。
相手をするなら面倒な相手だろう。
そんな考察している間に話が終わったのか、ユルゲンは今度こそこちらに向き直った。
「おう新人。わりーなほっといてよ」
「いや、構わない。リーズという。元軍人だ」
「へぇー」
改めて、という感じで俺の姿を視界に納めるユルゲン。俺はあまり露出がない服装なのだが、そこから何を読み取るのだろうか。強者の着眼点には興味があるな。
「…軍に居たにしちゃ若干ひょろいな。てーことは魔法使う感じか」
「まあな。もっぱら後方支援で活動していたんだ」
「そんな奴が推薦ねぇ」
「上司の覚えが良くてね」
「ほうほう」
上からの見下ろす視線にはこちらを探るような思惑を感じるが、だからといってそこに悪感情があるわけではないようだ。さきほどからのギルドとのやり取りを見る限りかなり信用もされている。
実力者であってもそれをひけらかすようなタイプではないらしい。珍しい、そして望ましいタイプだ。兄貴とか言われてそう。
「よし。いっちょやろうか」
前言撤回、戦闘狂だ。
「…いきなりか?」
今から、というのは正直勘弁してほしい。
宿を取ったりとか、早くしないと部屋が埋まってしまうし。もう夜だし。面倒だし。
「そういうの明日にできないか?」
「そこまで時間掛けねぇからよぉやろうぜぇ」
「まあまあ、ユルゲンさん。彼も来たばかりですし、ここは一つ先輩の器量を見せるということにしてあげませんか?」
副長が大人な対応でマッシブを諌めてくれる。こういった常識人が増えてくれないかと思うが、こんな世界だ、ここに一人いてくれているだけありがたいもんだ。
「でもあんただって気になんだろ? いくら推薦されたからって、きちんと能力把握してないとだろ?」
「すぐすぐ緊急な事態になるわけではありませんでしょう。そういった手の内を探るようなことを今すぐするべきではない」
「そうだそうだ」
ギルドっていいな。軍より気持ちよく仕事ができそうだ。こんなに庇ってもらったりなんて何年ぶりだろう。
俺、ここにきてよかったかも。
なんて、感動している場合じゃなかったらしい。
突如バタリと音をたて、ギルドの門戸を押し開いて来るは救いを求める者であるか。
音のした入り口に体を目をやれば、なんだというのだ。
そこには、俺の顔馴染みが、それはもう焦りに焦った表情で。
「…ああ居た、居てくれた…」
やめてくれよ、俺をそんな風に見るんじゃねぇ。
もう、お前らの面倒を見るような立場に俺はいないんだぞ。さっきそういって別れたばかりだろうが。
「お前…」
「お願いします…助けてください、先輩」
そんな内心をよそに、近づいてきて足元に膝をついてくる。周りの奴らもその尋常ではない様子に余計な口を挟むようなことはしない。
そしてそいつは、俺の元部下ハナセは、とんでもないことをその口から語りやがった。
「ヘンブロ森林に出た魔物の相手に、俺たち支援部隊が駆り出されました。敵は……高位の魔物です」
それはおよそ最悪と言っていい、俺の門出を呪うかのような、緊急事態というやつだった。
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