治療院では静かに、お医師さんや患者さんの邪魔にならないようにしましょう
どうもアゲインストでございます。
度々投稿期間が空いて申し訳ありません。最近の気候のせいかどうにも集中ができないものでして。
それでなのですが、更新のほうを隔日にしようと思っています。
読者の皆様にはご迷惑をお掛けすることになりますが、何卒ご容赦ください。
治療院。
この世界では主に治療の方法が二つに別けられる。
薬草などで自然治癒を高める普通の治療と、回復魔法で傷を癒す魔法治療だ。
どちらが優れているか、というのは場合によってという他ない。軽度の傷ならば魔法で一瞬で治してしまえるし、最悪切り落とされたような手足を繋げることもできる。
しかし、回復魔法でも複雑骨折によって体内に散らばった骨の欠片を取り除くのは無理だし、毒や病気なんかに対しては効果がない。あくまで肉体を治すのが回復魔法なのだ。
そういう場合には医師の診断のもと、症状に適した対抗薬を処方する他ない。いくら奇跡のような力があっても、人にできることは限られているのだ。
そのため希少とされる回復魔法が使えずとも、日々研鑽を重ね人々の命を救うことを志す者たちがいる。
彼らの存在のお陰でこの危険に満ちた世界でも人が生還することができる。とても大切な存在だ。
そんな彼らが掲げる象徴、交差するように重ねられた二つの白十字にはこんな意味がある。
『医の道に区別なく、救う命に貴賤なく、全ては交わりの中にあり』
人の命は同価値であり、それを救う自分たちの技術もまた同価値である、ということらしい。
まあどんな技術だろうと身に付けておけば損はないということなんだろう。芸は身を助けるというのと同じことじゃないかって勝手に思ってる。
なにはともあれ、そういった志を持つ人たちが怪我人相手に頑張っているのだ。邪魔にならないようにしなければなるまい。
治療院の中は外から見た通りの木造そのまま、という感じだった。
掃除は行き届いており目立つような埃はない。正面に受け付けがありその前には診察を待つための背もたれの長椅子がいくつか置いてある。
何人かはそこに座って自分の番を待っているようだった。
俺は入り口から邪魔にならないところで待ちながら中の様子を見ている。先に建物に入っていたマチルダが受け付けの女性と話をしていてるからだ。どうやらお見舞いにきたことを話しているらしい。
少し話をしてから受け付けの女性は二階に続く階段を指し示した。
「リーズ」
「はいよ」
会話を終えたらしいマチルダに呼ばれた。
呼ばれるままに近寄る俺に対し、彼女は注意を促してくる。
「これからガーゼル夫妻の部屋に行くが、くれぐれも静かにしろよ」
「そんな常識のないことするかよ、子供じゃあるまいし」
「いやな、確かにそんなことをするような奴じゃないのはわかってはいる。しかしな、夫妻の主治医がその……初対面の奴だと驚くような方でな」
なにそれ?
びっくりするような主治医ってなんだよ。
「何? そんなにホラーなの? ホラーなホスピタルなのここ?」
「ホラーなのは彼だけだ。見ろ、彼女はホラーとはほど遠いだろう」
「むしろホルスタインとかそういう類いだな、あんたと違って」
「セクハラだな。名誉毀損と侮辱罪でブタ箱にぶちこんでやろう」
「助けてお姉さん、仮の上司が俺をいじめるんだ」
「漫才してないでさっさと行ってください」
ちぇ。
傷心を慰める軽いジョークだというのに、あんまし付き合ってくれなかったな。
ブー垂れる俺を呆れたような様子のマチルダに首元を掴まれて連れられていく。
持ち上げられて苦しくなるのをタップして訴えかけるが見向きもされない。完全にお仕置きを受けているなこれは。
仕方なくこの状態でぎりぎり呼吸ができるくらいに体を動かしてされるがままになっておく。
しばらくこの状態で背中で揺れていたら、目的の場所についたのかストンと床に落とされた。
言いつけを守り静かな着地を決めた俺は、身だしなみを整えて前を向く。そして目の前にはしっかりとした作りの扉が。
こちらがそうやっているの見たマチルダもまた、少しばかり格好を整えている。
眠っているとはいえ目上の人たちの前に立つのだ。格好だけでもしっかりしておかねばなるまい。
「いくぞ」
「あいよ」
マチルダが扉に手を掛けて押し開き、中から漏れ出す空気からこういう所特有の鼻を突くような薬品の臭いがしてきた。
さあ、ご対面だ。
患者を運び出したりということを考えてか、割かし広めな作りとなっている室内。
扉の先に大きな窓があり、薄いカーテンが覆い淡い光を室内に差し込ませていた。
そして、並べられるようにして置かれているベッドの上で二人の人が眠っているのが見えた。
この人たちが、俺がここに来た目的。
この街の英雄にして、俺が今関わってしまっている問題のある意味での原因とも言える、悲劇の登場人物たち。
この夫婦は、そんな悲劇の結果がどうなっているかなど知る由もなく、ただただ瞳を閉じていた。
隣に立つマチルダはそんな夫婦の姿を痛ましそうな目で見ていた。
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