リーズ・ナブルは城を出る
どうもアゲインストと申します
リーズ、ついに城を出る。
そして明かされる彼の目的。
そんな第五話でございます
今日ももう一話、午後六時に投稿いたします
それからナインハルトの話を聞き終えた俺は荷物を取りに支援部隊とは別の兵舎へと帰ってきていた。
そこまで多くない荷物を纏めながら、俺は情報を頭のなかで反芻する。
『ダグダの杖』
一言で言うなら秘宝だ。二言にするなら失われた秘宝である。
何故俺がそれを求めるかといえば、元々それは俺の、母方の部族のものであるからだった。
俺の母方の部族は元々辺境に住んでいたが、やむにやまれぬ事情があり、駆け落ち同然にして親父と共にこの国に来たと聞いている。
その際に部族から絶縁されたのだが、やはり心残りがあったようで。
親父が徴兵され出兵してから瞬く間に帰らぬ人となってからは、しきりに部族に帰りたいというようになった。
まあ、俺から言わせてもらえるなら弱い人だったのだろう。
母は部族の中でも高い位の人間らしかったが、それ故にこの国の生活についていけないところがあったのだと思う。
そこに来て、親父の死だ。
この国に頼るものの無くなった母が部族に帰りたいと願うのも分からんでもない。
しかし、絶縁された母に戻ることは許されない。
そこで『ダグダの杖』だ。
これは母の部族が奉る神の武具とされるもので、争いの中で失われたものだとされている。
結構重要なものらしいので、これを手土産にすれば帰属の目処が立つのではないか、というのが母の考えであった。
生憎そういった情報を集める術のない母には、そうは考えても実際には動けず。ずるずると生活をする内に病で倒れてしまい、親父と同じく帰らぬ人となってしまった。
はれて平民親無しリーズ君の誕生である。落ちぶれるのに時間は掛からなかった。
貧民街で生活する内に件の奴、ナインハルトにバレてしまった能力を買われ、その対価として行動してきたわけだ。
そして今日、待望の情報を手に入れたわけである。
「…せめてもの恩返しだもんな」
一応とはいえ育ててくれた親である。その死が不名誉なままであってほしくない、というささやかな願いのためだ。
『ダグダの杖』を見つけ出し、部族へと返還する。
そして母の絶縁を取り消してもらい、せめて遺品を部族の地へと埋めてもらいたい。
それだけが、今現在このリーズ・ナブルの行動する理由なのだ。
「…目的地は、遠いな」
ナインハルトからもたらされた情報は、全てが正しいとは言えない情報であったが、それでも影も形もないままであった現状よりかなりましなものだった。
亜人領域最前線にある国。
人の領土を広げんとする国の中で、宗教によってことをなさんとする国がある。
それが『クロスユナイト聖教国』だ。
『正人教』と呼ばれるそれを掲げる彼らの教えは一つ。
人であれかし。
人でない者たちをこの大地から一掃したい、というだけの宗教なのだが、優越感に浸りたい奴らにはうってつけのありがたい教えである。
そんな国に杖があると、ナインハルトは語った。
なんでも最近になって神官長の一人となった男が、それらしき杖を所持しているのを何度か目撃されているらしいのだ。
『ダグダの杖』は八つの突起を持つ、一見すると短い棍棒のようなものらしい。
しかしそれは所有者の力を高めると言われ、母が言うには死者すら甦らす奇跡を起こすこともできるのだとか。
正直まゆつばものなので実際にどうかはわからないが、癒しの力を発揮している所もまた目撃されている。
手がかりがない以上、これが『ダグダの杖』と仮定して動くことにすることにした。
「よし、終わり」
そして、頭の中も荷物も片付き、旅立ちの準備は整った。
ありがたいことにあのナインハルトから路銀としていくらか包んでもらった。さらには総隊長と同じく推薦状も貰えたのだが、気味が悪い。ここまでするような奴だっただろうかと疑問に思わざるを得ない。まあ、どうせなにか考えがあってのことだろう。悪巧みだろうがなんだろうが、利用させてもらおう。
「さあいくか」
独り言も寂しくなってきたしな。
昼過ぎから取りかかった手続きで時間を食い、もうそろそろ夜になろうかという空模様である。
出入りの門の脇を固める守衛に挨拶をして、俺は軍の領地から抜け出す。
もう来ることはないだろう場所に、心の中でさらばと告げる。
ああそうさ。リーズ・ナブルは此れにて御免、ってね。
目指すは最前線。まずは手軽な身分証明ができるところにいこう。
そうして俺は歩みを止めず、スタこらさっさと足を動かすのだった。
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