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リーズ・ナブルは此れにて御免 ~元軍人付与士は冒険者として成り上がる~  作者: アゲインスト
ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~
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さらばダボンナ、此れにて御免

長らく続いた稚作、ついに一章の終わりでございます。

これまでお付き合いしていただいた読者、同好の方々。

本当にありがとうございます。

これを期にサブタイトルをつけ、章にも名前をつけて次の章との差別化といたします。

それでは一章最後のお話。

どうぞよろしくお願いいたします。

 闘技場の広間から去り、そのまま入り口まで進んでいるとまるで待ち構えていたかのような集団が先にいることに気づいた。

 その内の何人か、というか全員に見覚えがあることがわかったのでその集団へと近づいていくことにしたのだった。

 

 

 

「…リーズ!」

 

 いの一番に俺の元へと駆け寄ってきたのはリティアだった。

 きらびやかな格好の彼女が式典の時よりも近く、俺に体を預けてきてくれている。

 ぎゅっと抱き締められたせいで肩を押さえていた手を退けなくてはならなくなった。

 

「っ!? リーズお前、怪我を!」

「かすり傷だよ。大丈夫さ」

 

 近づいたからだろう、血の臭いに気付かれてしまった。

 心配そうな顔をしてほしくないので健常さをアピールするが、潤んでしまっている瞳にはたしてどれほど効果があるのやら。

 

「リティア」

「大体お前な! あんなに強いならそう言っておけ!」

「なぁ、リティア」

「それならこんなに心配することもなかったんだぞ!」

「リティアってば」

「怪我のこともある! すぐに家で」

「リティアっ!!!」

「…っ!?」

 

 ビクリ、と。

 捲し立てるように言葉を並べ立てていたリティアは俺の大声によって遮られ体を跳ねさせる。

 まっすぐに瞳を覗き込めば・・・ああやっぱりな、わかってるんだろ。

 

「悪い」

「…言うなよ、そんなこと」

 

 まあ、なんだ。

 後ろのご仁たちからは分からんが、俺の目的についてはわかっているんだろう。

 そのためにここから、この国から去ろうとしているのを。

 

「…行くんだな?」

「ああ、行くよ」

 

 いろいろ言いたいこともあるんだろうな。

 でも。

 

「野暮ってもんさ。男が去るって時に言葉はいらねぇ、バンと背中を叩いて門出を祝うもんさ」

「…帰ってくるんだよな?」

 

 不安そうにくしゃくしゃになった顔でそんなことをいう。

 

「当たり前だろ? 土産話の十や二十、語り明かす所存ですのことよ」

「…じゃあいい。約束だ、必ず守れよ」

「了解さ、なんせ友達だもんな」

「…それなんだがな」

 

 そこまで話して、何故か顔を赤くするこの少女。

 なんだ、なんかそんな要素があっただろうか。

 

「お、お前がしていた友達繋ぎなんだがな…」

「ああ」

 

 あの手を絡ませるやつか。

 

「あれは正式には『恋人繋ぎ』というらしい」

「うそやん」

 

 うっそまじかよ俺恥ずかしっ!!

 

「まんまと嘘を信じやがった、ちょーウケる」

「うるせぇ元凶が!!」

「ま、まあ私も! まんざらではないというか!!」

「ごめんちょっと黙ってて」

「いやー、意外に君もやり手だねぇ」

「いきなり会話に入ってこないでくれます!? ややこしくなるんで!!」

「…少し準備運動の時間を貰えるだろうか、本気を出したい」

「お待ちになってお父様!?」

「…君にはまだそう呼ばれるわけにはいかない…!」

「歯軋りまですることないじゃん! っていうかここでそんな顔するかよめっちゃ怖ぇ!!」

 

 集まっていた面々が、各々好き勝手に騒ぐもんだから収拾がつかなくなっている。

 あと臨戦態勢に移りつつあるこの強面ダディをなんとかしろ厄介者上司コンビ、だいたいお前らのせいだろうが。

 

「まあそれはそれとして、お疲れさまリーズ君。まさか鎖まで使うとは思わなかったけど上手く切り抜けたみたいでよかったよ」

「…上司が使えねぇもんでね、自分でやりくりする方法を身に付けただけですよ」

「じゃないと私が隊長を任せるわけないでしょ。隊長の一番の役割は隊員を守り切ることだからね」

 

 そのせいでいろいろ苦労させられたんですけどそれは。

 

「それとそっちの腹黒野郎、なに誤解を生むようなこと教えてんだ」

「よかったじゃねぇか、お陰でこんなに愉しいんだから」

「それはあんただけだろ」

「安心しろ、誰も不幸になってねぇ」

「いつかその顔ぶっとばす」

 

 あーくそ、折角格好よく去ろうだなんて思ってたのに。

 やっぱり柄にもないことをするもんじゃないのかね。

 

「あーその、そういうことじゃないんで、とりあえず娘さんとお話させてもらっていいですか?」

「…手短にな」

「イエッサー」

 

 さて、先ほどから顔を真っ赤にしているこの乙女にどういったものか、言葉のチョイスで天国か地獄かが明確に分かれてしまうぞ。

 

「あー、リティアさん」

「…だ、大丈夫だ、お前がそういう意図でやったことではないのはわかっている」

 

 そういうわりにはすげー動揺されてらっしゃるんですがそれは。

 

「まあいい。お前さんにはちっと頼みたいことがあるんだよ」

「頼み?」

「ああ、ダールトンのことだ」

 

 その予想外のことに、彼女は顔をしかめてしまう。

 あそこまで敵意満々だった相手のことだ、いい思いを抱いていないだろうさ。

 

「何故そんな…」

「まあ、なんだ。俺とお前みたいなもんさ、出会い方は悪かったがだからといって全部が全部悪いやつってわけじゃないみたいだからよ。お前は友達少ないみたいだし、今回のことに漬け込んで仲間にしとけ。俺がやったことを、お前もやってくれればいい。そうやってちょっとずつでいいから頼れる仲間を作っておきな。

 俺が帰ってくるまで、安心できるぐらいにはよ」

 

 頭を撫でながら、そう言い聞かせる。

 俺にだけ固執するようにはなってほしくはない、ということもだが縮こまっていちゃあ成長なんてできないからな。

 

「俺も頑張るからよ、お前も頑張れよ、リティア」

「…驚かせてやるくらい、いっぱいいっぱい作ってやるさ」

「そいつは楽しみだ、そんときはハンスのところで祝杯でもあげよう」

「ああ、楽しみにしている」

 

 ……さて、こんなもん、かね。

 別れの挨拶にしちゃ、ちぃと長くなっちまったか。 

 

「……んじゃ、行くわ」

「達者でな、馬鹿者が」

 

 お別れは、これにて挨拶といたしましょう。

 

「外に馬車を用意してある。ギルドの依頼についでだが次の街まで直行できるぞ」

「……そういやあのマッシブいねぇな」

 

 俺がこんな目にあっている原因の一つであるあの男がここにいない、そういえばという程度ではあるが何かありそうで何となく怖いんですけど。

 

「感謝しとけよ、この馬車その筋肉が手配してくれたんだからな」

「ちょっとなにいってるのかわかんない」

 

 それ絶対そいつじゃないよ、副ギルド長のホスキンスさんのおかげだよ絶対。

 

「なんか用事があるみたいで来れねぇとかで、手紙を預かってる」

「嘘くせぇ」

「まあ時間もねぇし、馬車の中ででも読んでおけや」

 

 そうやって手渡された手紙を胡散臭げに眺めつつ、懷に納める。

 

 さて。

 

 それじゃあ。

 

 

「行ってきます、お世話になりました」

 

 

「おう、気ぃつけてな」

「体を大事にね」

「…また会おう」

 

 

「―――幸運を、リーズ」

 

 上出来だ。

 俺のような人間に、ここまで上等な門出は出来すぎなくらいだ。

 なんのかんのといって、いい出会いがありすぎた。

 

 声援を受けながら、言った通りに背中をバチンと叩かれて俺は前へと踏み出した。

 様々な人の支えでここまで来た、それを力強く感じられる。

 本当に、出来すぎなぐらいだ。

 

 外に控えていた馬車に乗り、進んでいく光景を眺めながら思いでにしばし浸る。

 言葉は尽くしてきた、もう必要ない。

 ここ数日の激動と、今までのことを思い返す。

 ここから、ここからなのだ。

 まだ始まったばかり、先はまだまだ長いだろう。

 

 外の光景が変わり、夜の空がよく見えるようになった。

 どうやら外壁を越えたらしい、この手の馬車には魔物避けの仕掛けがあるので夜の行軍も心配のいらない。

 風景が変わったことで俺の意識は懷の手紙へと移っていた。

 あの筋肉マンが何を書いているのやら。

 怖々とその中身を読み進んでいけば、なんとまあ。

 

「…マジかよ」

 

 手紙に指示された通り、足元の隙間を見てみればそれなりの大きさの四角い箱が。

 開けてみればそこには黒塗りの装具一式、腕甲と脚甲さらには同じ素材だろう黒いナイフが一本。

 どうみてもあの時の『ジャバオック』が素材だと一目でわかった。

 

『親愛なる我が後輩へ

 

 お前がこの国を出ていくことはなんとなくだが分かっていた。

 そのまま見送るのもなんだから、この俺様から餞別をくれてやる。 ありがたく受け取っておくといい、代金は大体お前からの報酬でまかなったから遠慮はするな。物は席の下の隠してある。

 お前のようなやつがこの国を去るのはつまらんが、面白いもんを見してもらったから許しといてやる。どうせお前のことだから、外でも騒ぎを起こすだろうからそれを楽しみにしている。

 いつか俺と同じところまでくることを期待しているぞ。

 

 お前の大先輩 ユルゲン・ハワードより』

 

 

「格好よすぎるぜ先輩…」

 

 こいつは参ったね、闘い方を見抜かれてたか。

 たぶんいろいろ無茶言ってこさえたんだろうし、よく俺の寸法が分かったもんだ。

 体の力が抜けていく感覚と共に、この餞別に素直に感謝を捧げる。

 

「合縁奇縁も縁の内、とはよく言ったもんだ。なんたってこんな、価千金の友情有情がありやがるかんなぁ。全く・・・ありがたすぎて泣けてくるぜ」

 


 

 

 

 

 

 ああ、生まれ故郷よ。ダボンナの人々よ。

 とても返せぬこのご恩。いつか帰還のおりには必ずや。

 果てを目指すは我が宿命、なにが在ろうと果たしてまいります。

 抱えきれぬは土産の話、たんとこさえてまいります。

 全てのことに決着を着けるそのときまで、どうかお待ち下さいますよう、どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、それでは皆様。

 

 

 ―――リーズ・ナブルは、此れにて御免。

 

 

 王国ダボンナでの彼の詳細なことは、この式典を期に記録が途切れている。

 しかしその名が表に出てくるのはそれほど遠くない未来、次に辿り着くであろう都市にて。

 しかし、一旦の羽休め。

 

 

 ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理立ち~

 

 

 此れにて御仕舞いにございます。

読了ありがとうございました。

感想など大募集しておりますのでよろしくお願いいたします。

評価、ブクマもお願いします。


次章も変わらず毎日投稿を予定しておりますが、二三日書き貯めのための時間をいただきたく思います。

より面白い話を書いて参りますので、どうかご容赦ください。

それでは、此れにて御免。

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