リーズ・ナブルは敵意を煽る
どうもアゲインストでございます。
またもこんな時間に・・・申し訳ない。
やっと戦えるぜ、なげぇんだよ、ほんと。
まあ、自分のせいなんですけどね。
とにもかくにも、導入はこれで終わり。
ということで、どうぞ。
突如選手交代を告げた俺の言葉に、王子ばかりか周囲も疑問そうな顔をしている。
必要がないと言った決闘を、俺がするという。
その行為にどんな意味があるのか、頭を巡らしている。
俺はダールトンにも分かりやすいように、考えていることを話し出した。
「そもそも、ダールトン殿は此度の偉業が分かっておられない」
俺の言葉に再びダールトンがいきり立とうとするが、王子の鋭い目線で動きを縫い止められる。
硬直する彼を尻目に、俺は話を続ける。
「高位の魔物というのは本来であれば幾人もの犠牲を覚悟して挑まねばならない存在。私が軍に所属していたときに別種のものの討伐に参加しましたが、とても今回のような結果にはなりませんでした」
「原因があると?」
「はい。現在軍が抱える戦力はその多くを遠方へと置いています。決定打に欠ける状況と共に、戦線を維持することは困難を極めます。
その点、今回の戦況を考えれば破格の成果といえます。
現場の判断もよかった。
無理に倒そうとせず、時間稼ぎに終始して戦力の到着まで凌ぎきった。この結果にいちゃもんをつける、というのなら示してもらう他ありません」
「…否定するにたる力を示すべき、と」
「仰る通りでございます。しかし、指揮の能力を示すのであれば場を整える必要がございます。たかだか個人の嫉妬でそこまでする必要がどこにありましょう」
リティアに食いついたダールトンの感情を、くだらん嫉妬と断じる。それはあいつの感情を逆撫でする行為で、案の定こちらに対するやつの苛立ちのような気配が強くなる。
「それで、決闘か」
「王子が求めた決闘は、お互いの正当性を証明するためのもの。
それはいい。
しかし彼は彼女だけでなく私の元いた部隊の者たち、今回の功労者も侮辱している。ならば、彼女と戦う前に自分と戦っていただきましょう。古巣を馬鹿にされて、黙っていられるものではない」
ごめん、あんましそんなこと思ってないわ。
嘘じゃないけど、本当のことを話すと面倒だしこういう流れでいかせてもらうぞ。
友達のために戦う。
それだけのことをするためだからな。
「私が決闘を求めるのは、そういった理由です。軍属を離れ旅立とうというときに、これでは安心して国を発てません。どうか、私に名誉を守るための機会をお与えください」
それとも。
「ダールトン殿も、まさか平民だからという理由で逃げる訳はございませんでしょうね?」
「ふざけたことを……!!」
「いいだろう」
「で、殿下っ!?」
ダールトンが返答するまえに、王子が決定を下す。
これで準備は整った、後は軽く挑発してやれば……。
「ダールトン殿が怖いから嫌だというなら別にいいですよ?」
「そんなわけがなかろう!!」
「なら、受けていただけますね」
「くっ…」
逃げ道はないぞ。
衆人環視のなか、ここまで事態を進めたんだ。恨むなら自らの迂闊さを恨むがいい。
お前はもう、戦うしかないんだよ。
それが全く意味のないものでもな。
対象が俺に変わったことで、お前が戦う理由がそもそも薄れている。ラインホード家との繋がりもそこまでではないように見える俺ではリティアにダメージを与えることも叶わない。
何より俺に勝ったところで、それがなんだというのだろう。
平民の冒険者に勝って得られるものなど、貴族にとってナプキンよりも意味のないものだ。せいぜい憂さ晴らしにしかならない。
そのためにわざわざ戦うか?
「……よかろう! ああ、受けてやるさ…っ!!!」
当然こいつは、乗ってくる。
あっさい思考のこの男には、せめてその勝利に得ようと行動するしかない。
さんざん荒らした頭の中には、焦りと怒り、そしてそれをぶつけることに支配された自棄っぱちなものに染まっているのだろう。
汗を垂らしながら、始まる前から追い詰められたような彼の表情は苦々しく歪んでいる。
「ですがしばし時間をいただきたい! 頭を冷やし気を整えませんと、このままではこやつを殺しかねませんので!!」
おや、そこまで言ってくれるかい。
ならいいや。
「構いませんが?」
「は?」
「決闘なのでしょう? でしたら当然全力を尽くしたものであるべきだ。殺さないよう手加減していたなんて言い訳されるわけにはいかない」
俺が望むもの。
それを達成するためには、それこそ真剣勝負でなければ。
「今後こんなことがないよう、あなたには学んでいただかなくてはいけない。命を掛ける行いに、どれほどの覚悟がいるのか分かっていただくには、それが必要だ」
命懸けというのは、とんでもないことだ。
自分以上の存在に挑むことは、それなくして成立するものではない。
それを馬鹿にするのなら、理解してもらおう。
その覚悟をするために、どれほどの恐怖を乗り越えなければならないかを。
「まさしく真剣勝負。私は、それを望みます」
かくして、この決闘騒ぎ。
公爵家、ダールトン=スペルチナ。
対
元軍人、リーズ・ナブル。
異色のカードによるそれぞれの理由を賭けた、戦いの火蓋が切って落とされることになるのだった。
読了ありがとうございました。
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次から戦うよ。
本当だよ?




