戦いが終わり集う者たち
奇襲投稿十三話
どうもアゲインストと申します
あっさり終わった魔物討伐
後処理の方が大変なんじゃと思いつつ
そんなお話でございます
当然の結果、といえば聞こえがいいだろうが後始末というのはどんなものであっても面倒なものだ。
ユルゲンの拳で奏でる太鼓のマーチのおかげでジャバ公はほぼほぼ原型がなくなる位までボコされている。もはや面影もない。
自分の拳が起こす現象にはしゃいだユルゲンが残虐行為に勤しんでいる間、俺は元隊員たちのフォローに回っていた。
いくら回復するからといって全部が全部治るわけではない。本職の治療士でもない俺では骨折までは直せん。そういった連中の添え木やらをしている中で、俺に話しかけてくる人物がいた。
「…少しいいか?」
「構いませんよ」
レティア=ラインホード嬢は比較的軽傷で済んでいたためある程度の回復で動き回れるくらいにはなっている。なぜかよそよそしい態度なのが若干気になるが、あんな怪物と戦って生き残れたことに気が抜けているのかもしれない。
俺は応急処置を続けながら彼女の言葉を待った。
「…何者なのだ、お前は」
「さあ? 何者か、なんてもんに本当の答えなんてあるんですかね。こんな俺でも色々と立場がありますから。人の子だって以外に全く一緒の人間がいないように、その程度の人間ってだけですよ」
両親の子供。
孤児。
軍人。
部隊長。
冒険者。
今までで、ここまで立場が変わった。
「でもまあ、一言でいうなら」
「…言うのなら?」
そこで言葉を区切って、俺はある方向を指差す。
それに吊られるようにして、彼女もその方向に顔を向ける。そこには湯気を立てて屍を晒し、今度は逆に無様な姿になったジャバオックと。
その上で嗤うユルゲン・ハワードの、血塗れな、悪鬼の如く不吉な有り様だった。
「正直、ああいったのとは違う、と願いたいね」
あそこまで怪物してないと、俺は自分をそう評価する。
俺は英雄じゃない。
俺は勇者じゃない。
俺は傑物じゃない。
だが、愚者じゃない。
だが、弱者じゃない。
だが、悪者じゃない。
「改めて、一言」
そんな俺を言い表すなど、簡単に済む。
「俺は、リーズ・ナブルだ。それが妥当な男だよ」
恭しく、深々と、胸に手を当てて腰を折る。
劇場の役者のように。道化師のように。
俺はそうやって、このお嬢様を煙に巻いたのだ。
「おーい新入り! そっちは無事か!!」
「死者なし! 任務完了だ、先輩!!」
はっとしたような気がしたお嬢様からユルゲンのほうに体を向ける。そこにはテンションをいくらか下げたユルゲンが帰ってきた。相変わらず血塗れのままだが気にした様子はない。この男にとって、この姿は勲章のようなものなんだろう。
獲物を屠り、その命の象徴を浴びる行為に、野蛮さと力強さが同居している。
そして思う。この男は、まさしく英雄という奴なんだと。
「いやはやすげーぜ! これがお前の魔法か? 俺こういうのあんま掛からねぇんだけど、なんでだ?」
「技術の差だよ。装備を着けるみたいみたいのものさ。正確には体の周りに作用している」
「見たことねぇな」
「窓際軍人だったもんでね。見せる機会が少ないんだ」
ユルゲンとの会話でお嬢様とのやりとりが途切れる。それからはどんどんと人が流れ込んできた。
「ああ! やっぱり来てくれたんだね!! 信じていたよリーズ君!!!」
「どうも総隊長殿。先程ぶりで」
「やっぱり帰ってこない? またこういう事態になったら、って思ったらさ」
「これを期にもっと励むでしょうよ。あなたがちょいと手を加えればもっと動けるようになる」
「んん~…連れないなぁ」
大型の武器を背中に構え、もう一体を倒してきただろうに汗一つ流していない。ユルゲンもいきなり現れたこの人に興味があるのか会話に混ざってくる。
常駐部隊の連中も一緒に来ていたようで、こちらに頭を下げながら倒れた支援部隊の対処にあたっている。
いくらか見覚えのある奴もいたので死んでなくて何よりだった。
「よう。あんた誰だい?」
「おや、確かあなたはユルゲン・ハワード。あなたが助っ人でしたか。それならこの結果も頷けます」
ユルゲンに手を差し出して握手を交わす元上司。
「プライオス=オルスデッドといいます。彼の元上司でして、この度は部下共々お世話になりました」
「気にすんなよ! 面白いもん見れたしな!」
「そう言っていただけると幸いです。何分軍というやつはこう、あれでしょう? お堅いっていうか」
「まあしゃあねぇよそこんとこは。持ちつ持たれつってな」
「いやはや申し訳ない。尻拭いをさせてしまいました」
「いいっていいってぇ! こんくらいのこと」
そうして、夜は更けていく。
予想外の足止めを食らったが、まあ、この国で最後の仕事と思えば。そうだな、こういうのがいいだろう。
「門出に相応しい、実に妥当な仕事だった」
誰の耳にも残らないように、周囲の物音が掻き消してしまうようにそっとそれだけ溢して、俺は地面に転がる奴らの対処に歩きだした。
そんな俺を見つめる視線があったが、俺はそれに気づくことなく応急処置に励んでいた。
もう少しそれについてなんとかしていればと、少し未来の俺がため息を吐いているのだが、そんなことは今の俺にわかるわけもなく。
まだ昇らない朝日の到来を望みながら、ひたすらに作業に集中するのだった。
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