リーズ・ナブルと赤毛の闘士ユリアナ
どうもアゲインストでございます。
波乱の幕開け、新たな出会いの積み重ね。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
店の中央にて顔を付き合わせる俺たち。
相手は見た目からはそうとは伺えない、女性の冒険者。赤毛と獣のような眼光が相まって好戦的な性格であることを言葉にせずともその佇まいで物語っている。
少年と勘違いする貧相な胸部の代わりに鍛え上げられた四肢があり、顔と言わず至るところにある古傷がその戦歴を想像させた。
「お前かぁ、俺らに喧嘩売ってきてんのは。で、そいつらが連れか……」
「ああ、そっちのチンピラどもよかよっぽど未来がある優秀な後輩君たちさ。羨ましいだろ」
「そうだな、確かに羨ましいよ。ありもしねぇ未来に希望を持てるんだ、その能天気さが羨ましい」
「どうだろうなぁ……案外できちまうかもしれねぇぞ? 何たってあいつらには俺がついているし、何よりお前らと戦っているわけじゃあないんでな」
「……はは、はははははは!!!! そいつはスゲー自信だ!! お前がいりゃ初心者集団も立派な攻略者ってか? いやいやお前……―――笑わせんなよ」
バシィ!!!
と音を立てて、彼女の拳が俺の掌に突き刺さる。下腹部を狙った鋭い一撃、前動作を省略した虚を突く拳打であった。反応できたのも偶然に近い。
嘲笑を浮かべていた顔から表情が抜け落ち、冷たい無表情が殺気を伴って拳以上の力を俺に向けてくる。
「……なめてんじゃねえよ。たかだか銅級の初心者集団がダンジョンを攻略できるとでも思ってんのか? みすみす死なすことになる……それが分からねぇとはいわせねぇぞ」
「案外熱い性格してんのな。後輩思いのいい先輩だ」
「ほざけ」
さらに力を込められた拳が俺の体を吹き飛ばす、後ろに数歩たたらを踏みながらも体勢を立て直して相対する。
「厳しいねぇ……だったら、やるかい?」
「あ?」
「力試し、的な?」
懐を探り銅貨を一枚取り出す。そしてこれ見よがしにそれを見せつけて、俺は言う。
「ラッシュの速さ比べといこうか。知能比べとなるかはそっち次第だが……単純な方が分かりやすいだろ?」
「……何がしたいんだ、お前?」
「随分と実力に自信がおありのようなので、それならそういうだけのものを見せてもらわにゃこっちも納得できんだろうってことさ。上に弾いた硬貨を先に掴んだ方の勝ち、俺が勝ったら口出しはよしてもらおうか」
「俺が勝ったら?」
「まあ、諦めるさ。俺だけじゃなくとも協力してくれる奴がいるならそいつらにライドたちは任せる。そしたら俺は大人しくここを去るさ。そして、俺は負けるつもりはない。絶対にな」
「……おもしれぇ」
俺の見え見えの挑発にあえて乗る、というとでもいうつもりか俺を招くかのように指を動かす。
それに従うようにして、俺は硬貨を弾きながら近寄っていく。
「てめぇ名前は?」
「リーズ・ナブル、階級は魔鉄」
「そうか、俺はユリアナ。鋼級の冒険者だ」
あっそ。
別に相手がどんな階級だろうが関係のなかった俺は、開始の合図代わりに一段と高く硬貨を弾いた。
回転しながら二人の間を上昇し、頂点に差し掛かかる。落下してくるまで三秒もないだろう高さに至り、降下と同時に勝負は始まった。
「おらっ!!」
「シャアっ!!」
お互いに硬貨が落ちてくる線上へと拳を繰り出す。硬貨に触れようとすれば腕を叩いて弾き、掴みそうになれば逸らして妨害する。
「だりゃぁあ!!」
「ショオラっ!!」
拳打の速度は加速を続け、位置の取り合いで足が床を叩く音が鳴り響く。硬貨は落下の軌道から外れ拳打の中を踊っている。
「そこっ!!」
「甘いっ!!」
取り合いではらちが明かないと、拳が捉える対象は相手の体へと移行する。それは硬貨を取ると見せ掛けての妨害や体勢を崩すための小細工などにまで至り、勝利するためには相手を打倒しなければならないという結論を頭が導き出す。
「しゃらくせぇ!!」
大きく体を屈ませたユリアナは下から掬い上げる、と見せ掛けてリーズへの攻撃を繰り出した。素早い踏み込みによってリーズの懐に入り込んだユリアナは自分の体を使って硬貨をリーズの視界から失わせる。
そしてそのまま至近距離での肘打ちへと繋げたユリアナは、踏み込みの勢いを利用して体ごとリーズへとぶちこんでくる。
「…っ!? おっも!?」
が、しかし。
しっかりとその攻撃を受け止めたリーズはユリアナの体を抱き抱え後ろへと投げ飛ばした。
いつの間に立ち位置が入れ替わっていたのか、投げ飛ばされた方向はガラドルの戦士団が観戦している方であった。
突如始まった戦いに沸き上がっていた連中もこれには驚いたのか慌てて退避している。
「うげぇあ!?」
「あぶねぇ!!」
テーブルを破壊しつつ床に叩きつけられたユリアナは背中への衝撃で一瞬意識が飛んでしまう。
痛みを堪えつつも立ち上がろうとすれば、その視界には荒い息を吐きつつも無事な様子のリーズがユリアナを見据えていた。
リーズは足元に落ちていた硬貨を爪先で弾き、その手中へと納める。
「……見ての通りだ。これで認めてもらえるな?」
リーズが示す勝利の証しを苦々しげに見つめるユリアナ。
そんな二人を仲裁するようにして出てきたのはこの集団のボスであろうあの男だった。
意味ありげな表情で出てきた男が何を言い出すのか。リーズは少し身構えて彼が口を開くのを待つのだった。
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