リーズ・ナブルと現状打開の話
どうもアゲインストでございます。
一時休戦、と思いきや、リーズの思惑がライドたちへと伝えられるようです。
今回はそんなお話。
それではどうぞ。
「ガラドルの戦士団」の一人とのいざこざは終息したが、だからといって状況がよくなったわけではない。
以前としてこちらことを伺っているのが何人か運ばれてきた料理や酒を口に運びながら目を光らせている。
「……すいませんリーズさん、面倒なことになってしまって」
「何、俺ならどうってこたねぇさ。それよかお前らのほうが心配だ。完全に一括りで勘定されてるね、俺たち」
「そう……ですよね。まいったな」
「どうしようライド君……」
「星の歩み」の三人の顔には不安気な表情が浮かび自分たちがこれからどうなってしまうのか、そんな想像をして顔を青くする少年たちへ向けて声を掛けるのはこの事態にも全く動じていないもう一人の少女、シェルフィーである。
「ご安心なさって皆様、私の伝がこの街にもございますわ。教会の方へ事情を話せばあの方たちの狼藉を止めることもできましょう」
「ほう、できるんで?」
「これでも神官長の娘ですもの。こういった時こそ権力の使う時というものですわ」
「ヒュー、頼もしい」
「あら、それはお互い様というものですわリーズ様」
「うん? 何のことだ?」
流石に目敏い、というべきか。
先程の動きで俺の実力をいくらか見抜いたらしい。どうにも見た目以上に場数を踏んでいるようだ。直ぐ様安全策を提案するあたり頭も回るらしい、こんな才女が冒険者としてこんなとこまでくるってのは余程の理由があるってことかね。
「まあ、今んとこ一人旅なもんで、それなりにな」
「秘密がおありなのでしょうか、気になりますわ」
「いやいや、ただの諸国漫遊さ。冒険者ってのも都合がいいんで名乗ってるだけでね。どうだい、用心棒を雇う気は? 今ならお安くなってるぜ」
「あら、売り込みがお上手ですこと。ライドさん、仮参加の私がいうことではございませんがここはリーズ様のお力を貸していただきませんか?」
この場の主導権を握ったシェルフィーの問いかけにライドたちは顔を見合わせて考え込んでいる。
用心棒というのも、このダンジョン騒ぎが収まるまでの間でのこと。奴らもこの場所にいる理由がなくなればまた別のところに行くはず、そうなってから俺もゆるりと次に行けばいい。
「リーズさん……その」
「どうだい少年、俺は中々使えるぜ」
「はい。お願いしようと思います、僕たちに力を貸してもらえませんか」
「いいぜ。じゃあこれからしばらく俺たちはお仲間ってことで。よろしくな、ライド」
さて。
「それじゃあ、方針を決めようか」
「え、方針?」
「そう、方針」
握手を交わすライドの顔に疑問の感情が浮かぶ。それは俺の言ったことに対する当然の疑問だが、俺からしたらこういった問題をほっとくのは時間の浪費が激しく無駄でしかない。
ダンジョンが攻略されるまで大人しくしているって?
そいつは一体誰がするんだ?
あいつらか? 他の誰かか?
それは一体いつ達成される?
明日か? 一ヶ月後か? それとも半年後か?
妥当じゃないね、そんなこと。
実に無計画、天にすがって震えて待つなど、俺はごめんである。
だから、
「―――ダンジョン攻略しちゃおうぜって話。俺と、お前らで」
「へ?」
俺はまだまだ新米の彼らに向かって、およそ達成できないことを極々真剣に口にした。
「目標は一週間だ。忙しくなるぜぇ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「いやいや、いやいやいや……」
「うそーん……」
「あらあら」
様々な反応はあれどほとんどが驚愕の声である。それもそうか、簡単に言って他の攻略者に喧嘩を売るってことだもんな。
「何、別に俺たちがマジで攻略する必要はねぇ。俺たちがそうやって行動することによって他の奴らの動きを活発化させてやるのさ。年下で新米、ぺーぺーの集団が先輩方を押し退けて偉業の一つとされるダンジョン制覇を達成する。それを黙って見ているような奴が冒険者を名乗れるとでも?」
それにだ。
こうして声を潜めていない以上、戦線布告はあちら側へと伝わっている。ここで退いてしまっては今まで以上に侮られることになるだろう。
その証拠に、奴らからの視線が増えリーダー格の男からは戦意に溢れた目線を向けられている。快くこっちの思惑に乗ってくれるようだ、これで純粋にダンジョン攻略での勝負ができる。街でちょっかいをかけられるってことも少なくなるだろう。
「お待たせしてすみません! こちらご注文の料理と水です!」
「ほれ、詳細は飯を食いながらにしようぜ。腹が一杯になれば話をする余裕もできるだろうさ」
「ええ……」
「ライドくん。いつまでも呆けているものではありませんわ。より上位の冒険者を目指すなら、挑戦を躊躇ってはいけませんわよ」
「シェルフィーちゃん……でも私たちダンジョンなんて潜ったことなんてないんだよ」
「そ、そうよ。何をすればいいんだか何も分かってないのよ。魔物相手に戦ったことだってそこまでないっていうのに、ダンジョンのはもっと狂暴だっていうじゃない。絶対に無理よ」
「何事も経験って奴さ。ここ踏ん張れば確実に強くなれるぞ」
「経験で済ましていいことじゃないと思うんですけど……」
床に散らばったコップ等を片付け改めて料理を運んできたエイミーがこちらの話しに疑問の表情を浮かべていたが、あっちのほうからまた注文をする呼び声が聞こえたので対応のために飛んでいってしまった。彼女も大変だな、こういうことが起こっても接客しなきゃいけないんだから。俺も軍人の時にこういうことあったなあ……あんときゃ大変だった。
そんなことを思い返しながらこれからの計画について思案していると、店の扉が開かれ新しい人物が中へと入ってきた。
目につく赤毛の頭をしているその人物は、格好から見るにあちらのお仲間のようであった。
しかし、それにしては奴らの反応はあまりその人物の登場を喜んでいないようであった。
扉の方へと向けた顔が次々にひきつり、直ぐ様机の上へと視線を固定している。それは何というか、目について欲しくないとでもいうような動きであった。
一通り店の中を見渡し、目的の奴を見つけたらしく軽い足取りで店内を進んでいく。
「何だここにいたのかよ、探したじゃねぇか兄貴」
「誰のせいだと思ってんだ、おめぇが前んとこで暴れたせいで出禁になっちまったんだろうが。そのせいでこんなとこまで来ちまってんの。実際迷惑行為な訳よ、俺様のすることじゃねぇわけそこんとこわかってんの?」
「ありゃ相手が悪りぃんだろうが。俺のこと小娘扱いしやがって、ふざけんじゃねぇっつの」
「小物みてぇなこと言ってんじゃないの。それにそんな言葉使いはやめろって散々言い聞かせてきただろうが、仮にも女でしょうが」
「うるせぇ! 俺はその前に冒険者なんだよ!!」
どうにも癖の強いらしいこの人物はあちらの関係者らしく、リーダーにも強気な態度で接している。何より驚くのは少年のような格好のくせに女性ということらしく、野獣か何かのような狂暴さを感じることであった。
「そういやお前、俺らに喧嘩売ってきた奴がいるぞ」
「マジで!? どこのどいつだよその馬鹿!!」
ほれ、そいつだ、と。
俺に対して指を指し、それに釣られて野獣の目が俺を射抜く。相手さん、早速こちらに一当て目論んでいるようだ。
そして面白そうなものを見つけた、とでもいうような顔でずんずんとこちらに近づいてくる女。いいだろう、言った手前、俺がどこまでできるかをここにいる奴らに示すのも悪くない。実際に実力を見せればライドたちもやる気になってくれるだろう。
俺は口の中にあったものを飲み込んで、滾るような戦意に対峙するために立ち上がるのだった。
読了ありがとうございました。
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