6 王様登場
そんなこんなで、所定の位置に着いたため、しゃがみ頭を下げる。
これはさっきの執事さんが教えてくれたことだ。
「面を上げよ」
国王に言われ、顔を上げる。
(うわあ、すっごくきらきらだあ)
国王は金髪で金の瞳をした、「きらきら」と言うにふさわしい美貌を持っていた。
国王は「ほう…」と声をもらした。それからこほん、とわざとらしく咳払いしてから、コノハににこりと笑いかけた。
「お主がコノハだな」
「はい」
コノハもにこりと笑った。が目は全く笑っていなかった。
彼女は小さい頃から一人で冒険者をやっていたため、同年代の子供より大人と話すことが多かった。
その分、自分の身は自分で守らなければならないので、大人の考えていることを読んで行動していた。
そうしなければ、すぐに面倒事に巻き込まれるだろうから。
なので下心のある大人には気付き易かった。
(…王様なんか考えてるな)
コノハは国王が何か自分にとって良くないことを考えていることに気づいた。
彼女の洞察力は国トップの人物でさえ見破った。
しかしさすがに口には出さない。
さすがにそれをしたらまずい。
「コノハ、炎竜を倒した褒美だ。受けとれ」
国王が傍にいた使用人にお金が入っているであろう袋を渡し、それを使用人がコノハに渡した。
コノハはそれが思った以上に大きく重いような気がしたが気のせいと思うことにした。
「はい。ありがとうございます」
とりあえず無難に感謝の言葉を述べた。“さわらぬ国王に祟りなし”である。
「ところでっ…」
国王が何かを言いかけて止めた。コノハは首を傾げる。
(この国の王様って行動力のある腹黒おやじって聞いてたんだけどなぁ。
うーん、予想と違う。まあ別にいいけど)
仮にも自国の王に結構な言い方だ。
このことはどっかの没落貴族(多分)が酔った勢いでご飯やさんで大声で話していたことだ。
聞いたというか嫌でも聞こえてきたのだ。
「腹黒」と聞いていたので軽く言い負かす用意をしていたのだが無駄だったらしい。
まあ、穏便に済ませた方がいいのでコノハにとって好都合だった。
さわらぬ国王に以下略なので。
「…陛下?どうかしましたか?」
とりあえず聞き返す。一応。
彼女の声を聞いた国王は「…もういい。帰ってよし」と何故か若干震えながら言った。
コノハは心の中で首を傾げながら、
「では、私はこれで失礼します」
と一言言い、ぺこりとお辞儀をして帰った--。




