18 牢獄の少女に希望を
コノハは話しかけてきた少女を見る。
年齢はコノハより少し上だろうか。だが、生気がない。
彼女と同じように首輪がつけられている。
そのためか、その目には絶望しか映っておらず、希望は失われていた。
とりあえず、質問。
「………お姉ちゃん、ここ、どこ?」
少女は虚ろな表情をしながらも、
「ここはろうごく。私たちは売られるの」
と言った。状況はわりと理解しているようだ。
他の子も何も発しない。もうそんな気力が残っていないのか。
(さすがにここまでひどいとはね……)
コノハは誘拐犯にふつふつと怒りがこみ上げてきた。
仮面が面倒になったため、町娘の役をするのは止めた。
(さっさと潰して、さっさとみんなと帰ろう)
ミッションの目的が変更された。
猫被りを止めたコノハはいつも通りに行動することにした。
「牢獄、ねぇ……、さっさと出よう」
少女はコノハの雰囲気の変わりように驚いて、彼女の方を見たがすぐに視線は下におりてしまう。
「出ようって……。簡単に出れないもの」
「そんなことない」
「なんでっ……、私だって出ようと思ってた、けどっ……」
「逃げることを、希望を、諦めちゃだめ。できることもできなくなるから」
「……っ………」
コノハは諭すように言った。
“全てを諦めていれば、叶うものも叶わない”
誰かがそう言っていたのを思い出す。
子どもの心は希望にも絶望にも染まりやすい。
だからこそ、自分を強くもって欲しい。
コノハはそう願っていた。
「あきらめちゃ、だめ………」
「そう。今の状況がどんなでも、諦めなかったら希望って案外簡単に見えるかもね」
完全に8歳児が言う言葉ではないが、この状況も相まって指摘する者は誰もいなかった。
少女はコノハの言葉を呟く。
「そうだね」と小さく呟いたが、その目に希望は見えない。
コノハは大体人を説得する時、受け売りの自分も大事だと思う言葉を使う。
コノハは少女に希望を取り戻してほしくて他の言葉を探していたが少女の次の言葉で唖然とした。
「………でも、もう遅いの」
「え、なんで?」
聞いてしまったの、と言って。
「だって私たち、今日全員売られるの。逃げる隙なんて、ないの」




