10 あの王様めぇぇぇー!!!!
ならコノハは怪しい二人の近くの屋根の上で気配を完全に隠して、観察していた。
二人は男で、一人は青い髪と瞳。身長はこっちの方が高い。いや、もう一人の身長が低すぎるのだ。そのもう一人は緑の髪と瞳で、二人の服装はーーーー
(………………はあ、やっぱあの王様腹黒だった)
なんと、この国の騎士の姿だ。
ご丁寧に剣まで下げて。
面倒事の予感しかない。
「先輩、これいつまでやるんですかね?」
先に喋ったのは、長身(相手が低すぎてそう見えるだけ)の方である。
(あ、君が後輩なのね)
今さらながらどうでもいいことをコノハは考えていた。
現実逃避である。
「ノルヴィツ様から次の命令がくるまでだな」
「あの有名な少女、コノハでしたっけ?あの子どうして見張るんですかねー」
「知らん。大方、国外に出ないようにとかそんなところだろう」
話題のコノハ本人がすぐそこにいるとも知らず会話している彼ら。
コノハは嫌な予感があたり、ため息をつく。
ノルヴィツとか言う奴がどんな奴かは知らないが、おそらく国の上の奴だろう。
(……国が見張ってる、かぁ~)
おそらく国側につけば自由は、平凡は、程遠い。
(へ、平凡が遠くなるぅ~~)
彼女が望んでいるのはあくまで平凡なのだ。
平凡は面倒な事が起きないので。
しばらく騎士の話に耳を傾けていたが、自分のこととは関係のないものになったので、音を立てず、そっとその場を離れた。
(うーん)
無事に家に戻ったコノハは今の状況を考えた。
騎士が家を見張っている。それはつまり、国がコノハをどうにかしようとしているのだ。
それは彼女にとって面倒事以外の何物でもない。
「いやだぁ~~~!!!あの王様めぇぇぇ~!!!」
面倒事は嫌いなのだ。
のんびり過ごしたい。
そして、決めた。
「めんどい、逃げよう」
少女の瞳はかつてないほどに強い光があったーーー。
ーーーこれは面倒事を避けるために名声を捨てた少女の物語ーーー




