おなかいたい
あるところに おとこのこが いました。
おとこのこは おかあさんと いっしょに
ちいさなおうちで くらしていました。
おかあさんは おとこのこのために
まいにち がんばって はたらきながら おいしいごはんをつくっていました。
それなのに、おとこのこは とても わがままで わるいこ でした。
おとこのこは よくばりでした。
おかいものに いって ほしいものがあると
「あれ かって! かって!うわーん!」
と なきさけび おみせの ゆかを ころげまわりました。
あまりのようすに まわりの ひとたちは ヒソヒソと はなしました。
「なあに あの おとこのこ」
「みっともないわねぇ」
「おとこのこが じゃまで おみせのなかを あるけないわ」
おかあさんは ほかのひとの めいわくに なってはいけないので
おとこのこの ほしいものを かって なきやませなければ なりませんでした。
おかあさんは どんどん びんぼうに なって いきました。
おとこのこは うそつき でした。
ほいくえんに いきたくないと
おとこのこは いつも なきながら さけびました。
「おなかいたい! おなかいたい!
おなかいたくて ほいくえん いけない!うわーん!!」
さっきまで ふつうに あさごはんを たべていたので
おかあさんは おとこのこの いうことが うそだと わかっていました。
「ほいくえんに いかないと だめでしょう?
おともだちと あそべないよ?」
それでも おとこのこは なきつづけ、
ゆかに ひっくりかえって
もっとおおきなこえで さけびつづけました。
おとこのこの こえは とても おおきいので
まわりの いえの ひとたちが さわぎはじめました。
「なんだなんだ」
「おかあさんが おとこのこを いじめているのかな?」
まわりのひとが ふしぎに おもいはじめたので
おかあさんは しかたなく あきらめました。
「きょうは ほいくえんに いかなくて いいよ」
すると おとこのこは ピタッと なくのを やめて
たのしそうに あそびはじめました。
おかあさんは おとこのこの せわを するために
おしごとを やすまなければなりません。
おしごとが できないので
おかあさんの おかねは どんどん なくなって いきました。
おとこのこは おもちゃで あそぶのが すきでした。
でも おかたづけを しないので おうちは いつも ちらかっていました。
おかあさんは まいにち おとこのこに いいました。
「ちゃんと おかたづけ しないと ダメでしょう?」
すると おとこのこは ひっくりかえって あばれながら
おおきな こえで さわぎました。
「いやだ! いやだ! おなかいたい! おなかいたい!
おなかいたくて おかたづけできない!うわーん!!」
さっきまで おなかなんて いたく なかったのに
おとこのこは うそを ついて なきはじめました。
おとこのこの こえは とても おおきいので
まわりの いえの ひとたちが なんだなんだと さわぎだしました。
「うるさいなぁ」
「なきごえが おおきすぎて ゆっくり できないよ」
おかあさんは ひとの めいわくに ならないように
しかたなく おとこのこの おもちゃを かたづけました。
すると おとこのこは なくのを やめて
たのしそうに おもちゃを ちらかしながら あそびはじめました。
おかあさんは いつも おとこのこの かわりに
おかたづけを しなければ なりませんでした。
おとこのこは よふかしが だいすきでした。
まいばん まいばん いつまでたっても
ねようとしないで あそんでばかりいました。
どたんばたんと ゆかを ふみならして おどったり
おおきなこえで さわいだりします。
おかあさんは、まいばん おとこのこに いいました。
「もう ねなさい」
すると おとこのこは、ゆかに ねっころがって
ばたばたと あばれながら おおきなこえで なきわめきました。
「いやだいやだ! ねるのいやだ! おなかいたい!
おなか いたくて ねむれない! うわーん!!」
さっきまで おなかなんて いたく なかったのに
おとこのこは うそを ついて なきはじめました。
おとこのこの こえは とても おおきいので
まわりの いえのひとたちが めをさまして さわぎはじめました。
「また おとこのこが さわいでるぞ」
「もう よなか なのに」
「おおきな こえの せいで ねむれないよ」
おかあさんは おとこのこを なきやませるために しかたなく
「ねなくていいよ」
と いいました。
すると おとこのこは ピタッと なくのを やめて
また あそびはじめるのでした。
おとこのこが ずっと うるさく あそんでいるので
おかあさんは いつまでたっても ねむることが できません。
おとこのこは くいしんぼうで そのくせ すききらいばかりしていました。
ごはんを たべるときには、いつも おおさわぎ です。
「これ たべたくない!」
と なきさけんだり
「おかあさんのも たべたい!」
と おかあさんの ごはん まで たべたり します。
そして たべおわると かならず いいました。
「アイスが たべたい!」
でも おうちに いつも アイスがあるわけではありません。
それなのに おとこのこは たべたい たべたいと せがみます。
しまいには ゆかに ひっくりかえって あばれながら わめくのです。
「おなかいたい! おなかいたい! アイスたべないとなおらない!
アイスかって! アイス! アイス! うわーん!!」
おとこのこの こえは とても おおきいので
まわりのひとたちが おこりはじめました。
「いいかげんにしてくれ」
「いつも いつも うるさすぎる」
まわりのひとに めいわくを かけてはいけないと おもい
おかあさんは いつも しかたなくアイスを かいに いきました。
おかあさんは じぶんの ごはんも まんぞくに たべられません。
こんなことが まいにち まいにち つづきました。
おかあさんは おとこのこの わがままのせいで ごはんも たべられません。
おとこのこが まいばん よふかしして さわぐので ねむることもできません。
おとこのこが いつでも おおきなこえで なきさけぶので
まわりのひとから へんなめで みられます。
おかあさんは つかれてしまい とうとう びょうきに なってしまいました。
おかあさんが びょうきでも おとこのこの わがままは かわりませんでした。
びょうきで ねている おかあさんに、おとこのこは いいました。
「おかあさん ぼく アイスたべたい」
かいに いかないと また うるさく なきわめくので
おかあさんは しかたなく アイスを かいに いきました。
おとこのこが しばらく まっていると
おかあさんが かえってくる おとが しました。
おとこのこは はやく アイスを たべたかったので
げんかんまで おかあさんを むかえに いきました。
「おかあさん おそい! はやくアイス!」
でも そこに たっていたのは おかあさんでは ありませんでした。
からだじゅうが まっくろで おおきな めだまが あかく ひかり
みみまで さけた くちのなかに
のこぎりの ような きばを びっしりと はやした
おそろしい すがたの おばけ だったのです。
「わあああああ!!」
こわくなった おとこのこは にげだしました。
でも ちらかした おもちゃに つまづいて ころんで しまいました。
おとこのこが かおを あげると
そこには いつのまにか おばけが たっていました。
おばけは、おとこのこの はなが くっつくくらい かおを よせて
おそろしい こえで いいました。
「おれは うそつきの こどもや わがままな こどもを たべる おばけだ」
「おまえは うそつきで わがまま だから
あたまも うでも あしも おなかも たべてやる」
おとこのこは たべられたくないので いっしょうけんめい あやまりました。
「ごめんなさい! ごめんなさい! もう うそ つきません!」
「もう わがままも いいません! おかたづけも ちゃんとします!
よふかしも しません! だからたべないで!」
おとこのこが ひっしで あやまるので おばけは いいました。
「よし いまは たべないで おいて やろう」
「そのかわり こんど わがままを いったり うそをついたり
おかあさんを こませたら おまえを たべるぞ」
いいおわると おばけは すうっと きえました。
おとこのこは ほっとして そのまま きを うしないました。
おとこのこが めをさますと
ちょうど おかあさんが かえってきたところでした。
「なあんだ さっきのは ゆめ だったんだ」
おとこのこは おかあさんが かってきた アイスを
パクパクとたべはじめました。
アイスを たべている あいだは おとこのこは しずかにしています。
おかあさんは びょうき なので
となりの へやの おふとんで やすむことに しました。
アイスを たべた おとこのこは
こんどは チョコレートが たべたくなりました。
「おかあさん チョコたべたい」
おかあさんは つかれていたので へんじを しません。
おとこのこは チョコが たべたいと さわぎはじめました。
「チョコたべたい! チョコたべたい! すぐ かってきて!」
「おなかいたい! チョコたべたい!
チョコたべないと おなか いたくて しんじゃう!」
すると、ほんとうに おなかが すごく いたくなりました。
おとこのこは じぶんの おなかを みました。
そこには さっきの おばけが
おとこのこの おなかに かみついて いました。
おばけの するどい きばが おとこのこの おなかに
ぐさりと ささって ちみどろに なっていました。
「おまえは うそを ついた こんどこそ くってやる」
おばけに おなかを かじられて おとこのこは さけびました。
「わあああああ!! おなかいたい! おなかいたい!」
でも、となりの へやの おかあさんは たすけに きてくれません。
おとこのこが おなかいたいと いうときは いつも うそ だからです。
おばけは どんどん おとこのこを たべていきます。
おとこのこの おなかは さけて はらわたが はみだしてきました。
「おかあさん! おなかいたい! おなかいたい!」
でも、となりの へやの おかあさんは たすけに きてくれません。
「そうね こんど チョコを かってくるね」
おとこのこが チョコを ほしくて
いつものように うそを ついてると おもっていたからです。
おばけは どんどん おとこのこを たべていきます。
おとこのこの おなかを たべおわると
うでや あしに かみついて
ぶちぶち ちぎりながら たべはじめました。
「おかあさん! おてて いたい! あんよ いたい!」
でも、となりの へやの おかあさんは たすけに きてくれません。
「あんまり うるさく しないでね
また ごきんじょの ひとが へんに おもうから」
おとこのこが いつも うそをつく せいで
おかあさんは つかれて いたからです。
さいごに おとこのこの あたまを たべようと
おばけは いちばん おおきく くちをあけました。
おとこのこの めのまえには おとこのこの ちや にくに まみれた
するどい きばが ずらりと ならんでいます。
「おかあさん! もう よふかし しない! おかたづけも するから!」
でも、となりの へやの おかあさんは たすけに きてくれません。
おかあさんが なんどいっても
おとこのこは よふかしばかり したからです。
おかあさんが なんどいっても
おとこのこは おかたづけを しなかったからです。
「おかあさ――」
がぶり。もぐもぐ。ごくん。
おとこのこは とうとう ぜんぶ たべられてしまいました。
おなかが いっぱいになった おばけは げっぷを しながら いいました。
「やれやれ さいごまで とんでもない うそつきの おとこのこ だったな」
「こんなに わるい こどもを たべてしまったら――」
おばけは、ちだらけの きばに はさまった
おとこのこの かみのけを のみこむと
ぶきみに わらって いいました。
「おなかが いたく なっちゃうかもな」
おばけは すうっと きえて おとこのこが いた おうちは
しずかに なりました。
おかあさんは しずかな おうちで
ゆっくりと ねむることが できました。
おしまい
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おうちの方へ
このお話には、一般に「手がかかる」子どものシーンの描写があります。
「欲しいものをねだる」「夜更かしする」などの場面です。
もし、お子様が実際には「夜更かしをしない」場合は、
該当するシーンを飛ばして読み聞かせても構いません。
また、「アイス」や「チョコ」などは
お子様が好きな食べ物に読み替えても差し支えありません。
「おかあさん」を「おとうさん」や
「おばあちゃん」「おじいちゃん」に代えてもいいでしょう。
お子様の日常に適したお話にアレンジすることで、
お子様にとってより身近なお話になり、より適切なダメージを与え…ではなく、
より適切な躾を行うことができます。多分。
是非ともお試しください。
なおお試しされたことによって生じた損害には一切責任を持ちませんので
ご了承ください。
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知り合いの子供がとても嘘つきだったため、嘘をつかない子になるように『オオカミ少年』のお話をしたことがきっかけで書きました。
その子供はオオカミが何だかわからなかったので、その場でテキトーに思いついてオオカミを「おばけ」に変えて即興でお話しました。
そうしたところ、子供だけでなく親まで怖がったのが面白かったため、こうして絵本をイメージしてまとめてみました。
お話が山場になったところで「わっ!」とか叫ぶと効果的です。
それでは。




