第95話 受け継いだ力
「真面目な顔して何言ってるんだよ。本気でそれ言ってるのか?」
半ば呆れ気味に俺がそう言うと、トウジは、
「もちろんだよ」
と言った。そして、
「だって、僕達は、……普通じゃないじゃないか」
「は?普通だろ?」
「違うよ。よく考えてよ。この家にいる他の子たちと、僕達は違うじゃない。アカツキの夜に、体に変化があるのは、誰がいると思う?それに、園長が話してくれた、先の戦いに関係している子供って何人いる?」
「それは…」
俺とトウジ、それにカイナ…か。
「そう、僕達三人だよ。ま、後ここには居ないけど、ソウゴさんを入れて正確には四人だけどね」
声に出さずとも、トウジには伝わっていた。
「きっとね、アンジの力って言うのかな?強さっていうか、何て言えばいいかな。ん~戦い方?それと、僕の不思議な文字を読む力…後、ソウゴさんの剣術もそうだけど、これって、きっと遺伝?だと思うんだよね。受け継いだ力。アカツキを止める為のね」
「受け継いだ力か…」
確かにそう言われると、そうかもしれないと思えてきた。自分の両手を見ながら、ここ最近の事を思い返してみた。
普通に生活してきた俺が、リョカさん達の訓練に耐えられているのは、…そのお陰なのかもしれない。
「それでね、そこを考えるとさ、自分の親が出来てた事が、僕達は出来るかも知れないってことでしょ?だったら、カイナもそうなんじゃない?」
「つまり?」
「もぉ、だから、カイナのお父さんは、園長だけど、お母さんは?」
「お母さん?」
「そう」
「カイナのお母さんは……。あっ、そっか」
ハッと気付き、自分の手から、トウジの顔へ目を移した。
すると、トウジは頷き、
「そうだよ、セナさんだよ。話しでは弓を使ってたって言ってたね。と、いうことは、離れた場所から標的を狙ってたはずだよね?」
「まあ、そう言うことだろうな」
「ほら!そしたら、昨日のカイナの事にも繋がるじゃない。あれは、カイナがその力を受け継いでいるかどうかを確認するためのものだったってさ」
「……」
確かに、トウジの説明した通りだとすれば、つじつまが合う。だが…
「何でだよ?何で急にそんなことやる必要があったんだ?」
俺はその核心を知りたくて、トウジにそう尋ねた。
しかし、トウジは首を横に振り、
「それは、僕には分からないよ。そもそも、これはリョカさんに聞いた訳じゃなくって、あくまでも、僕の仮説だからね」
「そう…だな」
「でも、そこは、リョカさん達に聞いたら教えてくれるんじゃない?みんな下にいるから、聞いてみようよ」
「そうだな、そうするか」
トウジのお陰で、俺の中でもやもやしていたものが少しスッキリした。
「そうそう。だって、朝ごはんもまだでしょ?」
トウジは、笑いながらそう言った。
「早く支度して降りておいでよ」と、トウジは言うと俺の部屋から出ていこうとした。
俺は、彼の背中に向かって、
「ああ、トウジ、ありがとうな」
と、声を掛けた。
彼は振り向かず、
「いいから、いいから、早くね」
と、言い残し、部屋の外へと出ていった。
一人になった部屋で、俺は再び自分の両手を見つめた。
受け継いだ力…か。
トウジは、アカツキを止めるためだと言っていたが、俺の目的はあくまでも、トウジの父親を救うことだ。あいつには、それを言えなかったけど、アカツキを止めるのは、俺の中では、おまけみたいなものでしかない。さすがにそれは、トウジには言えない。あいつは気にするだろうから。
「俺、間違ってないよな……父さん」
俺は自分の手を見つめながらそう呟いた。
返事が返ってくるはずもない。目を閉じて、拳を握りしめた。
俺は一つ頷き、着替えを済ませ、自分の部屋を出た。




