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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第五章
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第91話 嘘

 「もちろん、貴様がそれを渡さないとなれば…強引に奪うまでのことよ」


 と、コウエンは続けた。


「まあ待て、コウエン。何も渡さぬとは言っておらん。そう焦るでない。肝心なのは、これから話すことなのだ」


「ならば、早く話を進めよ」


「…やれやれ、焦るなと言っておるのに…。よいか、数多ある未来の中で最良の答えを導き出す事は、私には出来ない。…しかし、それが可能になる術がある。それは、この水晶を使うことだ。この水晶は、私が先代の者から譲り受けたもの…」


「ほう、それではそれを一緒に頂けば良いということだな」


「話は最後まで聞くのだコウエン。…確かに、簡単に言えばそうなるのだが、使う為には一手間必要なのだ」


「…成る程、契約…か」


「さすがだなコウエンよ。左様。サキヨミの力を活用するのであれば、この水晶と契約を結ばねばならんのだ。とは言っても簡単におわるのだがな」


「そうか、ではやってもらおうか…これからの持ち主は、この私になるのだからな」


「無論、そのつもりだ。しかし、それは、一人では出来ぬ。現使用者の私と、お主が必要なのだ」


「…では、どうすれば良いのだ?」


 コウエンがそう尋ねると、エスカは水晶を軽く叩き、


「ここに両手をかざしてくれるだけで良い。…先程も言ったが、お主が来ることも分かっていたのでな…あらかじめ進めておいた。…残るは最後の一文のみ…」


 そう言うと、エスカは先に水晶に手をかざす。そして、再度、


「コウエンよ、ここへ来て手をかざすのだ」


 と、言った。


 コウエンは、その言葉に導かれる様に、エスカのもとへと近付き、同じ様に手をかざした。


「これで良いのか?」


「充分だ」


 そう言うと、エスカは自分の手をコウエンの手の上に重ねた。


「目を閉じて気を落ち着かせるのだ」


 エスカは、静かにそう呟き、目を閉じた。


「…」


 コウエンも、それにならい、目を閉じる。


 そして、一呼吸おいてエスカは、そっと目を明け、コウエンを確認する。


 言われるがままに彼は目を閉じていた。


 そして、そのあと、視線をあの砂時計へと移した。


 大半は、下へと落ちており、残りはもう僅かになっていた。


 エスカは、それをじっと見つめていた。


「…まだか?」


 コウエンがそう尋ねると、


「もうすぐだ。案ずるな…」


 と、エスカは答えた。


 もう少し……、あと少し………


 そして、砂時計の砂が、ごく僅かになったところで、


「…では」


 と、言った後、エスカは一言、術を唱えた。


 すると、その直後、二人の手をかざしていた水晶が弾け 、跡形もなく消えたのだった。


「すまんな、コウエン…この力は、お主には渡せん」


 水晶にかざしていたコウエンは、両手の手の平をひどく損傷していた。


「貴様…、図ったな…!」


 コウエンは、声を震わせ、怒りをあらわにする。


「仕方あるまい…これもこの世界を救うため。許せ。それに、その手の傷は一時のもの…いずれ治る。心配するな」


「それを信じろというのか!」


「それは、お主が決めることよ…、それと、私の生気はもう取らぬ方が良いぞ…」


「何?…まさか…貴様」


「察しがいいな。左様だ。私の命も残り少ない。…それは、私の残り時間を示す為に用意したものだからな…」


 そう言って、エスカは砂時計を見つめる。


「何から何まで、貴様の思惑通りだと言う訳か…」


 コウエンは、痛みと怒りで顔が歪む。


「それは、お主のお陰だ…私の言葉を信じてくれたお主のな……」


 そこまで口にすると、エスカは椅子に座りこむ。


 そして、


「コウエンよ…、この力をお主が持てば、きっとこの世を支配したことだろう……。だが、だからこそ、それだけは何としても阻止せねばならなかった……。更には、お主の力も抑える必要があった。……若い力を育てるためにもな………。私は初めて、この力を悪用した。許せ、コウエン。………そうだ…お詫びと言ってはなんだが…………最後に、一言、『サキヨミ』として…教えておこう…。これは、…嘘ではない、しっかり覚えておけ………敵は、外に、いるだけではない。…………敵は………お主の、身内にも……………、背中に、気を付け…………………ろ」


「何だと?どういう意味だ、エスカ!」


 コウエンは、エスカに真意を問う。


 が、答えは返って来なかった。


 彼は、既に息絶えてしまっていたのだから。

 

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