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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第一章
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第9話 ガラス玉…

  「トウジ…」


  俺の目の前で、最悪な事が起こってしまっていた。


 なんでこんな事になってしまったのだろう…




  俺達はタイラ隊長を含むシシカドが到着したことで安心していた。


 もう大丈夫だと。


  「今からどうするんだろう?」


  と、素直な疑問をトウジが俺にぶつけてきた。


  「さあな。ま、とりあえず見ていよう。でもきっと、あいつをやっつけてくれるはずだ」


  なんの根拠もなく、俺はそう答えた。


  「そうだよね。きっと、そうだよね」


  そうであって欲しいという願いがトウジの言葉には含まれているような感じがした。


  少し離れた場所ではヒトツキとタイラ隊長が対峙している。


  「きっと大丈夫さ」


  俺が自分に言い聞かせるようにそう言った時だった。


  ヒトツキの口元から例の細い管がタイラ隊長目掛けて伸びてきた。


  『危ない!』俺はそう思った。


 が、タイラ隊長はそれをヒラリとかわすと、その管へ刀を振り下ろた。


 管の先は地面に落ち、残りは口元へ戻っていった。


 更に、タイラ隊長はヒトツキの元へ踏み込むと幾度となく、暫撃を繰り出した。その光景を見ながら、俺は、


  「やっぱりすごいな」


  と、感嘆の声をあげた。


 あの身のこなし方、俺の憧れとする人のそれは、誰もが真似出来るものではない。


 だからこそ俺はシシカドに入り、もっと間近でそれを見て学び、盗み、そしていつしかあの人を越えたい。


 そう思うのだ。


  やはり、あの人ならあの化け物を倒してくれる。


 俺はそう確信した。


 だが、トウジは違った。


  「でも…あのヒトツキっていう化け物、傷一つついてないよ」


  たしかに、言われてみればそうだった。


 あれだけの攻撃を受けながらヒトツキは身じろぐ様子もみせていなかった。


  タイラ隊長が攻撃を止め、ヒトツキから離れる。


 そのあと何事か呟くと、刀を地面に突き刺した。


 そして、腰から別の刀を抜いた。


「なんだあの刀…黄色く光ってるぞ」


  「本当だ…なんでだろう」


  俺達は互いに目を丸くして、顔を見合わせた。


  『よし!照射開始だ!』 タイラ隊長の声が辺りに響いたその直後の事だった。


  ガラスにヒビが入った様な音が俺達のいる路地の奥の方から聞こえてきた。


  俺達はその音に驚き、とっさに振り返った。


  着いた時は暗くて奥まで見ることが出来なかったが、アカツキが徐々に南の空へと移動したことで、そこは明るくなっていた。


  音が出た場所を探すが、見える範囲で建物の窓が割れている様子はなかった。


『気のせいか?』


 俺がそう思った時、再度その音がした。


  「どこだ?」


  俺達はまた辺りを見渡す。


 すると、今度は先程より短い間隔でヒビの入る音がした。


  「アンジ、あそこ」


  トウジが何かを見つけた様子で指を指した。


  そこは俺達のいる場所より少し奥の地面だった。


 俺は目を凝らしその場所を確認する。


  「!…あれは…まさか」


  そこにあった物、それは俺達が公園の外で見つけたガラス玉と同じ物だった。


 近づかなければ確認出来ないが、間違いなくあの黒いガラス玉だ。


 しかし、そこにあるガラス玉の表面には無数のヒビが入っていた。


  そして、俺達が見ている中で、更にそのガラス玉に大きくヒビが入った。


 そのせいで今にも割れそうだ。


  俺達は息を呑んで見守る。


  「どうなるんだろう」


  トウジが怯えながらそう言った時、また更にヒビが入った。


 それがきっかけとなり、ガラス玉は粉々に割れてしまった。


 そして、黒い液体が地面に染み込んでいった。


 その量は本当にガラス玉の中に入っていたのだろうかと、疑いたくなる程、多かった。


  「やばいんじゃないか?」


  視線をそこから動かさず、俺は隣にいるトウジに問い掛けた、次の瞬間だった。


  黒い液体が染み込んだ辺りの地面が波打ち始めた。


 最初は小さく、次第に大きく隆起していく。


 それはどんどん大きくなっていった。


 そして、それが止んだ時、そこにはあれが立っていた。


  「…ヒトツキ」


  トウジが呟く。


 そう、俺達はヒトツキの生まれる瞬間を目の当たりにしたのだった。

 

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