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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第四章
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第85話 安堵と緊張

 アカツキが消え元の景色が戻ったのだが、その場にいる誰もがその事を喜んでなどいなかった。


 ただ一人を除いては。


「アンジ、タイラさん…勝ったんだよね?」


「ああそうだな」


「でも…ホウキ、生きて帰っちゃったね」


「…」


「どうしてだろう。何で、あのジンキみたいにならなかったんだろう…」


 首を傾げながら、トウジは俺に質問してきた。


 が、


「…」


 俺には、なんとも答える事が出来なかった。


「ねえ、アンジってば!」


 何も喋らない俺にしびれを切らしたトウジは、


「園長、どうしてですか?」


 と、側にいた園長に答えを求めた。


 しかし、


「…」


 園長もまた、無言で返したのだった。


 だがそれは、俺とは違う理由での事だった。


 良く見ると、園長の体は小刻みに震えていた。


 トウジもそれに気付いたらしく、


「園長?大丈夫ですか?」


「…」


「え…ん長?」


 そうトウジが尋ねた時だ。


「タイラァ~~」


 そう言って、園長は突然タイラさんの方へ向かって走り出した。


 その声に気付き、タイラさんがこちらへ振り向き、自分の方へと駆け寄ってくる、園長に驚いていた。


 そして、次の瞬間。


 園長はタイラさんを抱き締めていた。


 皆はその光景に唖然とする。


 しかし、園長は気にする様子もなく、タイラさんを強く抱き締めていた。


 そして、


「タイラ。ありがとう。良く…やってくれた」


 そう言って、大粒の涙を流したのだった。


「い…痛いです、ジンさん」


 その言葉で、園長は我に返り、


「ああ、すまんな。興奮してしまってつい」


 と、言ってタイラさんから離れたのだった。


「どうしたんですか?園長」


 俺達は二人の元へ駆け寄り、園長にそう尋ねた。


「お前達、分からないのか?」


 園長がそう聞いてきた。


「だから、何がですか?」


 トウジはそれを質問で返した。


「見えなかったのか?あのホウキから出ていった光を…」


「あっ!」


 園長の言葉に俺達はあることを思い出し、声を上げ互いに顔を見合わせた。


「良くやってくれた。タイラ…これで、カイナが…カイナが……」


 園長はそう言って再び涙を流した。


「いや、まだ分からないですよ。ジンさん。ヤツはまだ生きていたんですから」


 と、タイラさんは複雑な表情をしながら園長に答えた。


 確かに、光がひとつホウキの体から飛び出したのは間違いなかった。


 しかし、あれがカイナの物かどうかは、誰にも分からなかった。


 しかし、


「いや、あれは…間違いなくカイナだ。私には分かる。分かるのだよ…思い込みなどではなく、感じたのだよ。あの光にカイナの存在を…」


「…そうですか」


 タイラさんもそれ以上は何も言わなかった。


 『カイナが帰って来る』


 その会話を聞いていた俺は、自然と顔がほころんできた。


 それはトウジも同じだった。


「もうあいつらに嘘付かなくていいんだな」


「…そうだね」


 そう言って俺も抱き合って喜んだ。


 と、その時、


「お前達気を付けろ!」


 離れた場所からリョカさんがそう叫ぶ声が聞こえてきた。


 ジンキ達もいない、この状況で一体何に気を付けろというのだろうか…


 俺達はそんな気持ちでリョカさんの方へと振り返った。


 しかし、叫んだ本人はこちらを見ていない。


 全く違う場所をにらんでいた。


「えっ!?」


 トウジが驚いたように声を上げた。


 彼もまた、リョカさんと同じ場所を見ていた。


「どうしたって言うんだ?トウジ」


 トウジは答えず、指差した。


 その先を目で追うと…


「あっ!」


 そこにはジンキの崩れた体があった。


 もちろん、それだけで驚く訳がない。


 いつの間にか、その側に見たことのない人影がまた一つそこに増えていた。


 人なのか…?


 それとも…。




 皆の顔から笑顔が消え、再び緊張が走る。


 離れていて顔も良く見えない。


 が、どうやらジンキの事を見ているようだった。


 俺は、その人影から目を離し、入り口である門を見た。


 …開いている事を期待して。


 だが、その期待は容易に裏切られた。


 門はしっかりと閉じたままだった。


 ということは、あの人影…あれは…人ではないという事だ。

 

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