第82話 袋の中身
「遅かったな。ハク」
「そう?結構、これでも急いで来たんだけど」
「まあいいさ。で?持ってきたのか?」
リョカは構えを解かず、ジンキの方を見ながらハクと会話していた。
「もちろん!ここにあるよ」
ハクは、手に持つ袋を掲げ、リョカにそう言った。
リョカはそれを確認はしなかったが、
「そうか。だったらいい」
と、返事をした。
その袋は、ハクがいつも持っていたあの袋だった。
中身は、彼とリョカにしか分からなかった。
「あれは、何ですか?」
当然の質問をジンキはリョカにした。
それは、ジンキ以外の者も気になった事だろう。
しかし、リョカは、
「さて、なんだろな。気にしないでくれ」
と、まともに取り合わなかった。
「まあ、いいでしょう。おっしゃるように、気にせず続けさせて頂きましょう」
言い終わるより先に、リョカに向かってジンキのシッポが勢い良く襲いかかって来た。
リョカは構えていた刀でそれを受け、横へ払った。
強い衝撃の後が、リョカの両手に残る。
「おや?良く耐えられましたね」
「そうか?まだまだ俺は余裕だぞ?」
「そうですか。その強がりもいつまで続きますかね?」
「さあな。…試してみろよ」
そう言いながら、リョカは痺れの残る両手で再び刀を構えた。
「では、遠慮なく」
ジンキは、リョカに向かって尻尾を左右から鞭のように振るった。
それは、まるで意思を持つ蛇のようにリョカに向かって襲い掛かって来た。
しかし、それでもリョカは、その攻撃を全て払いのけていく。
その攻防が幾度か続いた時、
「いい加減、しつこいですよ!」
ジンキは、今までよりも強くリョカに向かって尻尾を振るった。
「奇遇だな。俺もそう思ってたところだ」
リョカはそういうと、その攻撃が当たる寸前に身をかわし、ジンキから一旦距離を置いた。
すかさずそこへ、ハクが駆け寄り、例の袋をリョカに渡す。
「もう、大丈夫なの?」
「ああ、問題ないだろう」
「久し振りじゃない?これ使うの」
「そうだな。…だが、好都合だ」
「えっ?どういう事?」
「あいつに、これを使って見せる機会なんて、そうある訳じゃないからな」
リョカは離れた場所にいるアンジの方をちらりと見た。
「そうだね。じゃあ、彼にしっかりと見るように言っておくね」
「ああ、頼む」
「リョカこそ、しっかり頼むよ!」
そう言い残し、ハクはリョカのもとを離れて行った。
「こざかしい真似を…まあ、良かったですね。それを受け取れて」
「そうだな。だが、お前にとっては…どうかな」
「ほう。どういう意味ですか?」
「なに、そのままさ」
そこまで言って、リョカは一呼吸置き、先を続けた。
「そもそも、あれが出て来て、本来の力が発揮出来るのは、お前達だけだと思っているだろ?」
「何を今更…当たり前ではありませんか」
「ほらな。そこが大きな間違い。勘違いなんだよ」
「なっ、何を根拠にそんなことを!その様な嘘をこの私が信じるとでも?」
「…嘘かどうかは、試してみればいいさ。その身をもってな。……、アンジ!しっかりと見ておくんだぞ!」
リョカは背後にいるはずの彼に向かってそう叫んだ。
そして、袋の中身を取り出した。
出てきた物は、片方だけのブーツの様な履き物だった。
それは、燃えるように赤い色をしていた。
しかも、すねの部分にはほとんど装飾が無いのに対し、足先の部分には細かい装飾が施されていた。
リョカは、それを左足に履いた。
その様子を見ていたジンキは、鼻で笑い、
「そんな物が今更何の役に立つというのです?」
「そんな物?そんな物に、お前は倒されるんだよ。…いいか、覚えておけ。あれが出て来て力が発揮出来るのは、お前達だけじゃない。人間も同じ
なんだよ!」
するとその時、リョカの左足が赤く光り輝いた。
「お前の負けだ、ジンキ。だが、感謝する。アンジにこれを見せる機会を作ってくれてな」
リョカは、一気にジンキとの間合いを詰めた。
「なっ!!」
ジンキは驚き、短く声を発した次の瞬間。
リョカが、左足でジンキの胸の辺りへ蹴りこんだ。
するとその勢いで、ジンキは後方へ弾かれ、倒れてしまった。
そして、そのままジンキが起き上がる事は無かった。
「なっ、言っただろ?」
リョカは、倒れて動かないジンキに向かってそう言った。




