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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第四章
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第73話 苦笑い

 俺達二人は、リョカさん達に声を掛け、園に向かって帰り始めた。


 もちろんその時、リョカさん達がこちらを見ながら話していることには気が付いたが、俺は気にしなかった。


 聞いても、答えてくれないことが分かっていたから。

 この半年、毎日顔を合わせているのだから、それくらいのことは分かる。


 だから、俺達は、気にせずに帰るのだ。


 …気にしていたら切りがない、といった方が正しいのかもしれない。


 林を抜け、公園を後にし、俺達は真っ直ぐ園へ帰った。


「お帰りなさい。アンジ、トウジ」


 帰るなり、俺達に気付いたリアンさんが声を掛けてきた。


「ただいま。リアンさん。」


 と、俺達も返した。


「今日は早かったわね。どうしたの?」


「…」


 答える気にならない、俺の代わりにトウジが、


「今日は、夜もあるそうです」


 と、まるで他人事のように返す。  


「あらそう。大変ねぇ。じゃあ、早めに夕食の準備しなきゃね」


「お願いします」


 トウジがそう言うと、リアンさんは、足早に食堂の方へと向かっていった。


 しかし、その途中で一度足を止めこちらへ振り向き、


「あら?そういえば、リョカさん達は一緒じゃなかったの?」


 と、尋ねてきた。


「一緒だったけど、置いて帰ってきたよ。…何だか、話してたからさ」


 ふてくされながら、そう答えた。


「…そう。じゃあ、遅れて帰って来るってことね」


「多分ね」


 俺が、そう答えると、リアンさんは再び、食堂へ向かって歩いていった。


 半年前のあの日以来、リョカさんと、ハクさんはここで一緒に暮らしている。


 元々、リョカさん達はこの街に住んでいる訳ではない。


 つまり、帰る家はこの街に無いのだ。


 そこで、ここの園長が、ここで一緒に住まないかと持ち掛けたのだ。


 俺達に訓練をつけてもらわないといけないことと、リョカさん達に住む家がないこと。


 それに、もし、万が一にも、再びアカツキの夜にヒトツキ達が現れても彼らがいれば、安心だといこと。


 二人はその話を喜んで受け入れてくれた…らしい。


 園長は、そう言っていた。


 お互いにとって損は無いのだから、俺も良かったのだろうと思っている。 


「夕食までどうする?」


 不意に、トウジが尋ねてきた。


「…そうだな~。とりあえず、俺は、」


 そこまで言い掛けた時、


「あっ!アンジ達が帰って来てる」


 と、元気な声が食堂の方から聞こえてきた。


 もちろん、その声の主は、ここに住む俺達の弟だった。


「えっ!本当に!」


 と、また別の声が聞こえる。


 そして、その目で確認するなり、数人の子供達がこちらへ駆け寄ってきた。


「おかえり~」


「今日も、いっぱい練習したの?」


「ねぇねぇ、今日は、どんなことしたの?」


「痛くなかった?」


 等々…どれから答えようか、迷う程の質問攻め。


 別にこれは、今日初めての事ではない。


 これもまた、日課といっていいほど、毎日のように繰り返されていた。


 しかし、訓練に対しての質問は俺達にとって、別に苦にはならなかった。



 訓練に対しては、だ。



 彼らは、必ず最後に別の質問をしてくる。


「ねぇねぇ、それじゃあ、カイナは?カイナは元気になってた?」


 俺とトウジは、顔を見合わせる。


 『やっぱり、来たか…』


 声には出さないが、内心俺はそう思った。それは、きっとトウジも同じだと思う。


 この質問が、一番俺達にとって、辛いものだった。


「アンジ~。ねぇ、どうだったの?」


 俺の返事を待つ弟たちの目は、この時が一番輝いている。


「…」


「ねぇ、アンジ~、教えてよぉ」


 俺は毎回、答えに詰まる。


「…実は、今日は…行ってないんだ」


「ええええ~~」


「なんでぇ~」


 と、みんな一斉に、落胆の声をあげ、悲しそうな顔になった。


 すると、すかさず、


「アンジ、何で、嘘つくのさ。ついさっきまで、会ってたじゃないか」


 そう、トウジが口を挟む。


「なぁんだ、アンジ、うそついた?の」


「アンジのいじわる!」


「ああ…ごめん。…つい…」


 俺は、苦笑いをしながら、みんなに謝った。


「話はトウジから聞いてくれ。トウジ…頼む。俺は、…部屋に戻るよ」


 そう言って、俺は逃げるようにして、その場を離れた。

 

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