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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第四章
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第71話 訓練

 『あれは全部偶然だったのだろうか…』


 地面に座り、訓練のために必要な胸当てを着けながら、俺は、あのアカツキの夜の出来事を思い出していた。


 俺達は、たまたまあの日、外へ出た。


 そして、赤い月を目の当たりにした。


 その後、ヒトツキと遭遇し、タイラさんと出会った。


 そして、更にその後で、今度はリョカさん達と出会うことになった…


 その結果、今、ここにいる…


 『もし、あの日俺達が外に出ていなかったら、一体どうなっていたのだろうか』


 先程の公園で遊んでいた子供達の事を思い出す。


 『あんな風に、遊んでいたのかもしれないな…きっと、何も知らずに』


 たった半年しか経っていないのだが、無邪気に遊んでいた頃が、とても遠い過去のことように感じた。


 とはいえ、今更あの頃に戻れる訳ではない。


 俺達にとって、大事なのはこれからだ。


 俺は気を取り直し、立ち上がると、リョカさんの方へと歩みよる。


 『俺達は、ある意味恵まれているのかもしれないしな』


 それは他でもない、この人達がいるからだ。


 この街でこれほどまでに優れた先生達に訓練をつけてもらっている奴は、俺達の他に、後一人しか知らない。


「リョカさん、準備出来ました」


 俺がそういうと、


「おう。それじゃ、続きだ。タイラ!よろしく頼むぞ」


 と、リョカさんは、一人で訓練をしていたタイラさんに声を掛けた。


「了解」


 と、返事をしてタイラさんが、こちらへ歩いて来る。


 それを見て、


「お願いします」


 俺は、頭を下げた。


 そして、いざ始めようとした時、


「そうそう、アンジ。今日は、夜もやるからそのつもりでな」


 リョカさんは、なに食わぬ顔をしてそういうと、俺達の側から離れ、地面に腰をおろした。


「今日は、夜もか…大変だな、アンジ」


「そっ、そうみたいですね…」


 俺は、苦笑いを浮かべながらタイラさんに返した。


 最初の頃は、日中明るいうちしか訓練していなかったのだが、三ヶ月ほど過ぎた頃から、夜間の訓練が始まった。


 それが始まった頃、


『何故、夜も訓練をするんですか?』


 と、リョカさんに聞いたことがあった。


 それに対する返答は、


『お前が戦う相手が日中出てくるのか?違うだろ?それに、昼と夜とじゃ、物の見え方が違う。その環境に慣れておかないと 、まともに戦えないぞ』


 と、いうものだった。



 全てに意味がある…



 それが分かった俺達は、以来、何も言わず夜間の訓練を受け入れていた。


「おい、早く始めろ!」


 リョカさんから檄が飛ぶ。


「はっ、はい」


 俺は気を取り直し、改めて刀を構え、タイラさんの方へ顔を向ける。


 すると、そこにはすでに真剣な眼差しをしている顔があった。


 俺も、顔を引き締める。


「それでは、始めるよ」


 タイラさんのその言葉をきっかけに、俺達は訓練を再開した。


 ちなみにタイラさんは今、俺と同じ刀を構えていない。


 代わりに、両手で自分の背丈ほどの長さのある、鉄の棒を握っていた。


 無論、俺の訓練のためではなく、本人の訓練のためらしい。


 タイラさん本人が言うには、しばらく刀は握らないそうだ。


 詳しくは、教えてくれなかったのだが、リョカさんに言わせれば、


 『ヒトツキの管だと思えば、丁度いいお前の訓練材料じゃないか』


 と、言われた。


 確かに初めの頃は、タイラさんのそれをヒトツキの管だと思いながら、俺も訓練をしていた。


 だが、今は…



 そう思えなくなっていた。


 訓練の時、タイラさんは手に持つ棒を、槍のように俺の方へ向かって突いて来る。


 まさにあの管のように、俺の胸元めがけて。


 しかし、タイラさんの突きの速さと精度は、日を増すごとに上がっていた。


 そして、今では俺の記憶の中にある、ヒトツキのものより、断然速くなっていた。


 毎日訓練しているとはいえ、タイラさんの突きをかわすのは至難の業だった。


 いや…それは皆無に等しい。


 だからこそ、俺は胸当てを着けなければならなかった。


 これが無かったら、今頃ここにはいないかもしれない。


 だが、それでも俺はこの訓練方法を辞めなかった。


 『全ては強くなるため』


 という一心で…


 そうこうしながら、しばらくした後、


「よし、そろそろ切り上げるぞ」


 という、リョカさんの一言で、俺達は訓練を終了した。


 気がつけば、いつの間にか日も沈みかけていた。


「と、いうことだ。今日は終わりにしようか、アンジ」


「はい。ありがとうございました、タイラさん」


 俺は礼をいうと、その場に座り込み、呼吸を整えつつ、胸当てを外した。


 『俺は…本当に強くなれるのだろうか』


 外した胸当てを見ながら、俺は一抹の不安を感じていた。

 

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