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RGB~時計の針が止まる日は~  作者: 夏のカカシ
第四章
70/211

第70話 半年後

 俺の住むこの街には大きな時計台がある。


 それは、この街のどこからでも一目でそれと分かる程、高くそびえ立っている。


 正確に時を刻み、そして、一時間経つ毎に大きく鐘の音を響かせる。


 しかし、その鐘の音は、時に聞こえてこない事がある。


 それは、この街の人々が不安と恐怖に包まれる時でもあった。


 何故なら、その日の夜には必ず赤い月が空に浮かぶからだ。


 だが、恐怖の対象はそれではなかった。


 その時に現れる化け物。『ヒトツキ』だ。


 確かにあの赤い月に染められた街は、気色の良い物ではなかったが…そこにいるヒトツキは、それ以上だった。


 とはいっても、俺も一度しかそれらを見ていないのだが…


「アンジ、どうしたの?」


 時計台を見ながら、物思いにふけっていた俺に、トウジが声を掛けてきた。


「いや、別に…」


「そう?ならいいけど」


 トウジは、それ以上何も聞いてこなかった。


「ただ、あれからもう半年も経つんだなぁ。って思ってさ」


「…そうだね。でもさ、なんか…あっという間だね」


「ああ。あっという間だったな」


 俺達は今、あの公園にいた。


 『アカツキ』を見るために、俺達二人が待ち合わせをしていた場所だ。


 しかし、今日は、それを見るために、ここにいる訳ではなかった。


 公園に用事はない。


 その奥の林の中にある。


 まぁ、今もそこから出てきたのだが…


「そろそろ、戻ろうよ?」


「…そうだな」


 トウジに誘われ、俺は時計台から林の方へと目を移した。


「……はぁ~」


 俺は思わずため息を漏らした。


「どうしたのさ?」


 笑いながらトウジが俺に尋ねる。


「分かってて聞いてるだろ?」


「さぁ?分かんないよ」


「嘘付け…分かってるくせに」


「へへ。じゃ、早く戻ろうか、アンジ。僕達の『優しい』先生達のところにさ」


 足取り軽く、トウジは林の中に消えて行った。


「お前はいいよな…トウジ。…先生がハクさんだからさ…」


 俺は一人、小声で愚痴りながら、林の方へと向かって歩きだした。




 半年前のあの日、俺達はある人達と出会った。


 そして、その翌日、俺達は、その人達に自分達の置かれている境遇を知らされた。


 そして、俺達は、ある事を成す為、その人達と訓練をしている。


 いや、訓練してもらっている。


 その場所がこの林の中だ。


 中へ足を踏み入れる前に、公園の方へと目を向ける。


 そこでは、俺達よりも大分幼い子供達が、無邪気に遊んでいた。


 『つい、この前まで、俺達もあんな風に…』


「いや…」


 俺は頭を振り、再び前を向く。


 考えても仕方がない。


 俺は、俺達には、やらなきゃいけないことがあるんだ。


 俺は一人頷き、林の中へと進む。


 途中、トウジが木の横で、こちら向きに立っていた。


 もちろん、彼が何をしているのか分かっていたのだが…


「何してるんだよトウジ。さあ、行くぞ」


 と、俺がわざとらしくそう言うと、彼は呆れ顔で、


「何言ってるのさ、待っててあげたのに」


「…分かってるって。ありがとう、トウジ。とにかく戻ろう」


「うん」


 そして、俺達は、更に林の奥へと進んでいった。

 この半年の間、ほぼ毎日のように俺達が歩き続けたせいで、わだちが出来ていた。


 といっても、ほぼ獣道…


 だがそれは、間違いなくいつもの場所へと続いている。


 トウジと一緒に歩き出してからは、二人共無言になった。


 お互い、今更それを、苦痛に感じることもない。


 何故なら、常に一緒にいるからだ。


 生まれた時は違うが、今日まで毎日共に生活をしているのだから、当たり前かもしれない。


 そんな状態で十分ほど歩いた頃、いつもの場所へたどり着いた。


 そこは先程まで歩いて来た道とは違い、木々の立つ間隔が広くなっていた。


 とはいえ、あくまでも回りの木々と比べて…というだけで、さっきいた公園に比べれば、格段に狭い。


 しかしながら、ここが俺達の訓練場だ。


 そして今、ここには俺達の他に、三人の大人達がいた。


 そのうちの一人が俺達に気が付き、一言、


「やっと帰ってきたか。遅いぞ、二人共」


 俺達は戻るなり、叱られてしまった。


「そんなことないでしょ、リョカさん」


「何言ってるんだ、アンジ。タイラはもうやってるぞ?」


 そういって指差した先では、一人黙々と訓練をしている人がいた。


「そんなこと言ったって、タイラさんは…」


「言い訳はいい。さっさと支度をしろ。早く続きをやるぞ」


 と、俺を叱るリョカさんに対し、笑いながら、もう一人の人が、


「続きって、何言ってるのさ、リョカ。アンジの相手をしてるのはタイラでしょ?」


 と、口を挟んだ。


「いちいち、挙げ足をとるなよ、ハク」


「はいはい、ごめんなさい。じゃ、僕達も、続きをやろっか、トウジ君」


「はい!ハクさん」


 そう言ってハクさんとトウジは、俺達から少し離れた所へ移動していった。


 リョカさんにハクさん、それと、タイラさん。


 この人達が俺達の先生となり、色んな事をここで教えてくれていた。

 

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